告白のタイミングは
(だから、あんなに・・・なんか親密というか・・・変な距離感だったんだ)
「名字は俺と同じだからみんな下の名前で呼んでるけど、別に覚えなくてもいいよ」
「・・・・・恭平先輩ですか?」
「ん?あぁ、そうそう。けいたから?」
「はい、教えてくれました・・・」
(っていうか知ってる体で話されただけだけど)
「そっか」
午後の授業で使う教科書とノートを机に出して準備し始めたこうたくんは真剣な声色で僕に告げた。
「・・・あのさ、ちょっと面倒くさいし、もしかしたら殴りたくなるくらいムカつく瞬間あるかもしれないけど、しばらく昼飯食いにここに来るかもしれないから」
「・・・・恭平先輩がですか?」
「うん」
「・・・・え」
「空気だと思って接しとけばいいよ」
「・・・・」
(く、空気?)
「しばらくっていつまでですか?」
「・・・・ん~」
彼がやりたいようにさせるという意味で言っているのだろうか、正直凄い嫌だし、期間によっては受け入れられない。
(だいたいなんでこんなこと・・・もしなにかのはずみで言われたくないこと言われたらどうしよう)
「分かんない」
「・・・・分かんない・・・?」
「うん」
「・・・・・」
僕は基本的に心が狭い。
それは自覚してるけど、こうたくんの返事を聞いて嫌な気持ちになってムスッとしてしまった。彼のいとこで先輩だから大人しく従えと、理由もよくわからないままなのにもかかわらず、そう言われている気がして思わず拳を握りしめていた。
「嫌だ?」
「・・・ちょっと」
「はぁ・・・そうか、まぁそうだよな・・あいつうるさいもんな」
「・・・・僕は別の場所でお昼ご飯食べるので、それならここに来てもらっても大丈夫なんじゃないですか」
軽く吐き捨てるように言った僕に、こうたくんは「ごめん」と一言言ってから、続けて口を開いた。
「それは無理だわ」
「・・・え・・・な、なんで」
「俺がかずきと一緒にいたいから」
「・・・・」
話をしていると午後の授業の担当の先生が少し遅れて教室に入ってきた。
それをチラッと確認して前に向き直った彼はスマホを手に持ちそのまま画面を見つめ始めた。
「・・・・・」
(何か打ち込んでる・・・・)
スマホをタップしている手が途中で止まったと思ったら少し目を瞑って首を傾げていた。
何を誰に送ろうとしているのか分からないから彼の仕草の意味が気になる。
先生が黒板の前に立ってから、ザワザワしていたクラスは静かになって、僕も今更ながら教科書とノートを出した。
(凄い中途半端な会話になった・・・どうしよう、こんな態度取ってたらこうたくんに好きって言う前に・・・話すらしてもらえなくなる)
僕は両手を顔に当てため息をついた。
さっきの会話にイラッとしながらも最後に言われたことにドキドキしている矛盾した僕と、何でもないような普通の雰囲気のこうたくん。
(後で・・・何か言わなきゃ)
ブブー
(・・・あ)
ポケットに入れたスマホが震えて誰かからのメッセージがあることを知らせる。
「・・・・」
(こうたくん・・・)
考えながら打っていたように思えたそのメッセージは思ったよりも長くなかった。
【本当は順を追って話したい。でもこっちもよく分かってない事があるから、恭平のことはまじで空気だと思ってくれればいい】
「・・・・・」
よく分かってない事っていうのは多分昨日のことだ。
そしてそれは、僕が言えばいいだけの話。
でも、それを言うには僕の心のタイミングが整ってないから全部話すことができない。
そのまま下に視線をずらすと2通目のメッセージがそこにはあった。
【あとさ、お前、最近あの2人になんかされてない?】
「・・・・」
(あの2人って・・・・)
こうたくんの2通目のメッセージを見て心臓が文字通り飛び跳ねた。まるで大きく脈をうってドクンと体中に振動がくるように。
【あの2人って下駄箱の時のですか】
昨日のこととは違う意味で聞いているんだよね?と確認したくて、わざと2通目だけに反応してすぐに返事をした僕は、あの恭平って人に会ってこうたくんには本当に言ってないことをもう一度確認したくなった。
ブブー
タップするとそこには短く2文字。
【うん】
(・・・・)
困った。
こんな聞き方をされて、ないですというと嘘になる。そしてその嘘は確実にバレる。今度は僕が目を瞑ってしまった。
(ん・・・・あっ)
返事をしようと目を開けると開いたままの画面に立て続けにこうたくんからのメッセージが入ってきている。
【全部話せとは言わない。でももうちょっと俺のこと頼って】




