そこまで
(やっぱりこうたくんと知り合いなのかな・・・っていうか先輩って言った?)
彼のことについては何も知らないし、何も聞いてない。
もしかしたら僕は関係ないから言わなくてもいいかとこうたくんに思われているかもしれない。
彼の交友関係はクラスの範囲内しか把握してないからよく分からなくて「それなら仕方ない」と思ったその時、突然後ろから大きな声で僕の名前を呼ぶ人が現れた。
「かずきく~ん!」
「・・・・」
「あ~、やっぱり来た。橋本君こっち向いたままね。振り返らなくていいから」
「・・・へ?」
僕はドアを背にしてるからけいた君に言われたまま動かなかった。というよりあの男の子に会いたくなくて声が聞こえた瞬間体が固まってしまったという方が正しい。
「やっぱりここにいた~」
「どうも」
「あ~、けいたも一緒なんだ。あれ、こうたは?」
近付いてきたらしい彼にけいた君は座りながらペコっと頭だけ軽く下げて会釈。それに対して僕を呼んだ声の主は普通にけいた君のことを呼び捨てしている。
「もう戻って来ますよ」
「あーそうなの、昼飯?」
「そうです」
「そっか~、あいつ母親いないからな、弁当とかじゃないんだよな。けいたの分も?」
「まぁ、そうっすね」
「俺の分けてやるよ」
「いや、結構です」
「え、・・・・・拒絶反応早くない?」
会話をする2人の間になんてもちろん入れるわけもなく僕はただ微動だにせず軽く瞑想していた。
「・・・・・・」
「ね~、かずきくんなんでそんなに動かないの?歩いてる時は下向いて、座ってる時は目瞑ってんの?」
「・・・・そ、そういうのじゃないです」
「あ~しゃべった~、良かった。生きてる」
「生きてますよ、失礼な事言わないでください」
(・・・僕だけがこの人のことを知らない)
全く無関係で今この瞬間が初めましてであれば普通に反応していた。ただ実際はそうじゃない。余計なことを喋って、下手にバラされたくない。
弱みを握って楽しむタイプなのだろうか。
(・・・この人本当になに考えてるんだろう)
そんなことを考えていると、けいた君が「おっ」と言って上体を少し起こした。
「こうた戻ってきた」
「あ~、こうた遅い。先に買ってくれば良かったのに、っていうか俺の弁当わけてやろうか?」
「・・・・・はぁ~」
「え、何そのため息。酷くない?弁当いらない?」
「いらない」
「え~」
「うるさい」
普通にコミュニケーションを取っているこうたくんを見てやっぱり知り合いなんだと思った。
(・・・・仲良いのかな)
「けいた、これ」
「お、サンキュ・・・・なにこれ、なんか美味そう」
「そうそう、いつも売り切れてるやつね、謎なんだけど今日そこまで混んでなくて、結構色々残ってた」
「え、俺にはないの?」
「・・・・・っと、これかずきにあげる」
「・・・え、僕にですか?」
「うん」
そう言って手渡してくれたのはチョコレートのお菓子だった。隣で何か文句を言ってる人のことはみんな無視をしていたけど、おもむろにこうたくんは買った飲み物にストローをさしてチュウチュウ吸いながらその彼のことをじっと見つめていた。
「・・・・なんだよ、無視するのに、見つめてくんのとか・・・俺のこと好きだろ、お前」
「いや、ぜんぜん」
(・・・・どういう会話)
勝手に僕の机にお弁当を広げ始めた彼は、「何だよそれ。っていうかかずきくんも早くお弁当だして食べようよ」と口を尖らせて独り言のように言っている。
結局みんなでぎゅうぎゅうの状態で机に食べ物を並べて食べ始めた。別にこの人のことを誰も追い返すわけでもなく、かといって受け入れてる様子もなくただ居るからそのままにしてあるみたいな感じになっている。
(・・・・っていうか、本当に誰)
未だに分からないのは僕だけで、聞くタイミングを見失ってしまったことに焦りを感じていた。
知らないと明確に言ったのはけいた君だけだから、後で聞いてみようかと思って僕も箸を進めた。
それからみんな食べ終わってグダグダしてからチャイムが鳴る前に解散したけど、例の彼は「また来る~」とニコニコしながら去って行った。
「ありがとうな~こうた」
「おう、明日はよろしく」
「任せろ」
軽く言葉をかわしてけいた君も席に戻る。
示し合わせるように僕も机を戻して、ほっと一息ついた時、けいた君の背中をずっと見ていたこうたくんがボソッと話し始めた。
「あれさ、俺のいとこなんだよね」
「・・・・」
(いとこ?)
「あぁ、ごめん、けいたのことじゃなくて。かずきに絡んでたヤツ」
「・・・そ、そうなんですね」
「うん。1個上だから学年違うけど」




