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好きで好きでたまらない  作者: しおやき


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穏やかじゃないのは僕の心




「気になるって・・・」


(・・・・どういう意味)


 僕の頭に乗ったこうたくんの手が離れて、少し静寂が辺りを包む。



 聞きたいけど聞けない。


 聞いてしまったらその先があるのかないのか分かってしまう気がして、僕にはまだその心の準備ができてないから続きの言葉を言わずにのみ込もうとした。



「そのままの意味」

「・・・・えっ」

「そのまま」

「・・・そのまま?」

「うん。そうそう。まぁ、とりあえず今日の昼は教室な。かずきは弁当だろ?」

「う、うん」



 質問しきってない状態で返ってきた答えに呆然と返事をしたあと、いきなり振られた違う話題に思わず『こうたくんは?』って聞こうとした。でも、お母さんが居ないと言っていたのをふと思い出して慌てて口をつぐむ。



「俺とけいたはいつも食堂だからな~、」

「そうなんですね・・・いつも何食べるんですか?」

「ん~適当。その日の気分によるかな」

「・・・・今日何か買ってきましょうか?」

「ん?なんで?いいよ別に」

「・・・そ、そうですか。じゃあ教室で待っときます」

「うん、そうして」


 

 笑顔に戻ったこうたくんは、「行くか」と言ってまた歩きだした。

 そんな彼の後をついて僕も一緒に歩きだす。


(・・・・気になるって)



 そのままの意味とはどういうことなのか。

 よく理解できない。


「・・・・・」


 

 階段を上りながら、少し見上げたこうたくんの背中。

 やっぱり大きいなと思う。

 荷物なんて軽々と持つし、カッコつけてないからそれが余計にかっこいい。




(・・・・好きって言ったら迷惑になりますか)



 語りかけた背中からは答えなんか返ってこないから簡単に質問ができてしまう。


 なんでここまで優しいのだろう。




 未だに解けないなぞなぞが僕の心に微かに光を照らして好きな気持ちを後押しするけど、僕が男であるという事実にすぐに心が暗い闇で支配される。



 それでも好きという気持ちが止まらなくて、どうしようもなくこうたくんの全部が好きになってしまった。




 2人っきりで階段を上る今のこの空間は人が周りに居ない。

 じりじりと溢れ出してくる気持ちが、かたく結んだ唇を緩めて勝手に心臓の鼓動を早くさせている。そんな状態の僕は、いったい今何をしようとしているのだろうか。


 「っ・・・・」



 バレないようにしなきゃいけないで始まって、少しずつ距離が近くなって、そしたら今度は人に言われて逃げ出して、そしてこうたくんからも逃げようとして。


 それでも、何でもないようなフリして僕に何回も手を差し伸べてくれるこうたくんは、あの時から、最初に会った時から何も変わってない。




「こ、こうたくん」

「ん?」

「・・・・・あの、」


 

 震えそうな声に、服をぎゅっと握って僕は一呼吸置いた。



「・・・・どうした?あ、ペース早い?ごめんな」

「・・・え、いや」

「っていうか後ろついてこないで横に来いよ」

「・・・・・えっ」


 彼の名前を呼んで、足を止めたことにこうたくんは何を勘違いしたのか、心配するような声色で後ろにいつまでもついている僕に早く来るように促した。



「ゆっくり歩くから、隣おいで」

「・・・い、行きます・・・すいません」

「かずきはさ、ちっこいから後ろ歩かれると声が届きにくいんだよ」

「・・・・・ご、ごめんなさい」

「いや、別に責めてるわけじゃないから。謝んなって」

「・・・・はい」



 こうたくんの隣に並んで階段を上りきった僕は、自分がさっき言おうとしたことに彼が勘違いをしてくれて良かったと今更ながら胸を撫で下ろしてホッとする。



「今日は自習とかないのかね」

「・・・ない気がしますけど、先生・・・誰か休んでくれるといいですね」

「だよな~。ちょっと寝たいんだよね」



 廊下をまっすぐ歩いて行けばもうすぐで教室。



「部活中眠くなって頭にボールぶつけたらどうしよ」



 あくびをしながら喋るその姿をチラッと横目で見て思うことは一つだけで、こうたくんに返事もせずに1人で頭の中で会話していた。



 (・・・好き)


「あ~・・・」



 (好き・・・・好きです)



「かずき、もし1限寝落ちしたらノート写させて」

「え、あ・・うん・・分かりました」

「・・・なぁ、」

「は、はいっ」

「なんか最近敬語のほうが多いけど、なんで最初の頃に戻ってんの?」



 笑って僕にそう言ったこうたくんにまた心の中で謝った。




  (・・・・好きになってごめんなさい)







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