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好きで好きでたまらない  作者: しおやき


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彼女ができた

 


 朝の校内は空気が澄んでいるように感じる。

人が居ないから熱気がないのもあるかもしれない。でも多分季節も関係してる気がする。



(・・・音楽聞いてたんだ)


 

 こうたくんの方に駆け寄って昨日のことを先に謝ると眠たそうな声で僕に返事を返してくれた。 けどその返事はもう一歩踏み込まないと意味が正確に取れない内容だった。



「あの、・・・・」 

「ん?」

「昨日、先に帰ってごめんなさい」

「あぁ、いや、あれは俺も悪い。次はもうないから大丈夫だよ」

「え・・・もうないって」

「もうあの人来ないから、連絡もしてこないでって一応は言ってある」

「・・・・そ、そうなんですか」



 「もうない」の意味に少しほっとして、それからそんなに簡単に食い下がってくれたのだろうかと浮かんだ疑問。

 あんなにしつこくしてたのなら、軽く言われたぐらいで諦められるわけがないと思う。



「うん。彼女できたから連絡してこないでって言った」

「えっ・・・・・」



 (彼女・・・・?)



「・・・・か、・・・・彼女できたんですか?」

「え?いや、できてないよ。噓ね、うそ」

「・・・噓?」

「うん、そうでも言わないと引いてくれないだろ、元々連絡返してなかったから、勘違いさせるような言動は取ってないし」

「・・・・・」



 朝から心臓に悪い。


 こうたくんの口から彼女という言葉が出た瞬間心臓が大きく跳ね上がって、血流が一気に体を駆け巡ったように感じた。



「だからさ、また今度、一緒に帰ろーな。次は待たせないから」

「え・・・あ・・・う、うん」

「行こうぜ」


(・・・・普通だ)


 何も変わってない、先週までと同じ。



 少し前を歩く彼の背中を見つめながら、さっきの謎の男の子が言ったことは本当に本当なのかもしれないと思った。

 でもそれと同時に、誰かに先に言われる前に自分から打ち明けてしまったほうが楽なんじゃないかと、毎日ビクビクしなくていいんじゃないかと、そんなことを思ってしまった。


 この前のは事故で、下手に誤魔化してしまったから。


「・・・・・」



 いつかはバレるこの気持ち。


バレるのか、バラされるのか、それとも自分でバラすのか。

 

 もう時間の問題のような気がしてならない。



「なぁ、かずき、」

「・・・・え、は、はい」

「今日からしばらくさ、」



 突然階段の手前で止まったこうたくんは手すりに手をかけ振り返って僕を見た。


「昼飯一緒に食わない?」

「・・・・え?」

「けいたも一緒だけと、」

「・・・・あ・・・あ、え・・えっと」

「嫌だ?」



 素直に嬉しいと喜べばいいものを、マイナス思考の僕がそれを邪魔してくる。


「嫌じゃ・・・ないです・・・・けど、別に僕じゃなくても」



(心配ならしてくれなくてもいい。これ以上こうたくんにも恥をかかせたくない・・・なんでこんな僕なんかのこといつまでも・・) 



「どういう意味?」

「・・・昨日のこともそうですし、入学してからずっと・・・・・なんか、迷惑かけてるというか、僕のせいでこうたくんに恥ずかしい思いさせてる気しかしてなくて」



 僕はこうたくんと接する時はなるべく前向きな状態で関わりたかった。

 でも最近はどうだろう。


 空回りして全部がダメな方向に向かっている。

面と向かって言えなくて、だんだんと沈んでいく顔と小さくなっていく声に句点まで続かなかった。



「・・・・・」 

「ごめんなさい、なんか変なこと言って、」

「・・・・お前さ、勉強はできるけど、人が言ったこと忘れやすいタイプだろ」

「・・・へ?」

「前に俺がなんて言ったか覚えてる?」

「えっ・・・」



 思いもよらないこうたくんからの返しと、気の所為なのか妙に近づいた気がする彼の声に思わず顔を上げた。



「・・・・・」

「覚えてないんなら・・・まぁ、いいけど別に」

「・・・・あの、」

「僕じゃなくてもって言われてもね」

「・・・すいません」



 こんなに近くで見つめ合ったのは初めてのような気がする。プリントをぶちまけた時もここまで近くはなかった。



「・・・えっと」

「・・・・」

「こ、こうたくん・・・あの、」

「はぁ・・・・」

「えっ」



 少し見つめ合ってから、深いため息をついて視線を外した彼は僕の頭を撫でるように軽く触れた。



「ごめん、」

「・・・・・」



 こうたくんは、揺れるその瞳の奥で何を考えていたのだろう。



「気になるんだわ、お前のこと」




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