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好きで好きでたまらない  作者: しおやき


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繋がらない電話





 「ハァ、ハァ・・・っ・・ハァ」



 学校の校門に向かって玄関を出ると息を切らしながら走った。

 靴なんて適当に履いて、足がもつれそうになっても必死でかける。



(バレた・・・あの人達に・・どうしよう。あの2人だなんて思わなかった、なんであんなとこに)



「ゴホっ・・・ハァ、ハァ・・・」



 冷たい風に呼吸がしづらくて少しスピードを緩めるともう足が動かない。普段走りなれないから緩めた途端に足が棒みたいにぎこちなくて思わず止まって膝に手をついた。



(・・・あれ)



 そんな中制服を着た女の子が校門の外にいるのが視界に入った。ただその子がこうたくん達と一緒にいた子かどうかまでは分からない。



「・・・・こうたくん、もう戻って・・・るかも」


 タイミングが良いのか悪いのかこうたくん達とは校門に出るまでに会うことはなかった。帰る約束をしていたけど、そんなことも投げ出して1人で帰宅しようとしている事実にどうしようもなく泣きたくなる自分がいる。



 顔を合わせたら、どんな顔をしていいかわからない。

 声をかけられたら、どんな声で返事をしたらいいかわからない。



(連絡してない・・・でも、どうせもう)



 あのまま教室から出たから、多分あの2人組と鉢合わせしてる。きっとあの教室内で何があったのか、こうたくん達をわざわざ呼び止めて面白おかしく話しているのだろう。



「っ・・・・」


 一回良いことがあると、すぐに突き落とされる。

 まるで調子に乗るなよと言わんばかりに。




「・・・家に・・早く」



 がくがくする足を無理矢理動かして家までの長い道のりを歩いていく。そうすると自分の心の問題なのは分かりきっていることだけど、すれ違う人がなぜか自分を見て笑っていたり内緒話をしながら指を指してきているようで落ち着かない。


 みんな無関係なのに、すれ違う人の些細な仕草で全員が僕を気持ち悪いとか批判的な目で見ているような気がして苦しさで息が詰まりそうだった。



 

(もう少しで家に・・・)


 

 早く家の中に入って、自分の部屋に入りたい。

外の世界から唯一隔離された自分だけの空間でとりあえず落ち着きたい。





 ◇◇◇




ブブーっ


(・・・・え)



 学校を出てからそれなりに時間が経って、もう少しで家に着きそうだった。


 鍵を開けて中に入ったら、すぐに部屋に行かないと玄関でぐたぐたしてたら変なタイミングでたまに帰ってくるお母さんと被るからそれだけは避けたい。

 そう思っていると、スマホが鳴ったから画面を見るとそこにあったのはメッセージじゃなくて電話の方の通知の知らせ。



 そしてその画面にはこうたくんと表示されていた。



「・・・・」


(ヤバい・・・どうしよう)



 ずっと鳴り続けるバイブ音に持つ手が一緒に震える。


 取れるわけがない。

 絶対にもうバレてる。


 なんでわざわざかけてくるんだと心臓の音がドクドク止まない。



 目をぎゅっと瞑って電話を取らずにそのまま電源のボタンを長押した。


「はぁっ・・・」


 

 玄関の前に到着して鍵を取り出した僕は、スマホを握ってるわけじゃないのに鍵を掴んだ手が震えてうまく鍵穴にささらない。



(・・・・もう嫌だ)


「開いた・・・、入って、鍵閉めて・・・靴脱いで」



 ようやく開いて、中に慌てて入った。呪文のように唱えた言葉はほとんど毎日してることだから考えなくてもできるけど、この時の僕は動揺していて、意識的にやることを認識しないと思考が全部『バレた、どうしよう』という事実に持っていかれてしまいそうになっていた。




 駆け足で部屋に入ってドアを閉めると一気に静寂に包まれる。



「・・・ハァハァ・・」




 制服の前を無意味に握りしめながら、そのまま手を離したカバンは床にドサッと音を立てて落ちていった。




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