バレたその先にあるもの
(もしかしてこうたくん達戻ってきた?)
前にいる彼のせいで向こうが見えない。
誰がいるのかも分からなくて、僕はただ息を潜めて動かないようにしていた。
別に隠れてるわけでもないし、誰かから追われてるわけでもない。
「は?誰だよ」
「・・・・・」
後ろに振り返ってドアの先を見つめ、そこにいた人物が知らない人だったからなのか、その声の主は吐き捨てるように言った。
(・・・こうたくん達じゃない?)
知り合いとはいかないまでもこうたくんの名前を知ってるから顔ぐらいは見たことかあるんだろうと思った僕は、ドアを開けた人が全く別の人だと薄っすら感じた。
(・・・・ど、どうしよう)
「え、なに?なにしてんの?」
「あれ?相手誰かと思ったら橋本かずきくんじゃん!!」
(・・・・だ、だれ・・・なんで僕の名前)
彼らの方からは僕のことも見えてるのだろうか、名前を言われたのと同時になんだか少し聞き覚えのある声に嫌な予感がしてくる。
ドアのとこからは質の違う声が2つ教室内に鳴り響いていた。
「お前等だれ?」
「は?・・・え、俺等のこと知らないの?」
「知らねえな。お前等みたいな顔の汚えやつなんて」
(・・・・え)
「は?」
「おい、いちいち挑発にのるな。あいつどういうやつか知ってるだろ」
「え?あぁ・・・・チッ・・くそが」
(・・・どうしよう・・ここから出たい・・・もう嫌だ・・)
「とりあえずさ、ここから出てってくれない?せっかくこの子といいとこだったんだけど」
「・・・え、何言って・・・・別にそんなじゃ」
僕は腕を未だに掴んでいる彼の冗談まじりのセリフに慌てて否定した。言い合っている人達が誰か知らないけど勘違いなんてされたら本当に学校に来れなくなる。
(こうたくんにバレたら・・・)
「あ~そうか・・・そうだったんだ。ようやく腑に落ちた。かずきくんはそっち系だったのか」
「だからだったの?橋本くんこの前、正面玄関のとこで桐崎と抱き合ってたもんな」
「いや~あれはまじでキショかった~」
(・・・・・)
「あはは、あんなとこで抱き合うとか」
「迫られると誰にでも許しちゃう体質?かなりMっけ強そうだもんな〜」
「くっそキモい」とケラケラ笑いながら2人組のわざとらしいやり取りを僕はただ黙って聞いていたかったわけじゃない。
掴まれてる腕もできれば振り解きたかった。
(・・・酸素が)
肺までうまく吸い込むことができなくて喉元で終わっているようなそんな浅い呼吸しかできない。何回も短時間で吸って吐いてを繰り返してるからこれ以上この状態が続くと、多分過呼吸になる。
(・・・・どうして)
僕はただ、こうたくんと一緒に帰りたくて、この教室で待ってただけだった。
ただこうたくんのことが好きで、好きで、好きなだけだった。
「っ・・・・・」
「お前等さ、」
胃から何かが上がってきそうな気がした時、掴まれていた腕が離れて、目の前の彼が口を開いた。
「自分の顔見てから言えや。お前等の顔のほうが相当気持ち悪いぞ」
「・・・はぁ?黙れよ!!だいたいお前もきもちわりいんだよ、男のくせによ!!」
「はっ。何が?そういうお前はネチネチネチネチどっかの女の子みたいだな」
何か言い合ってるのも頭に入らない。
この場に居るのが心底耐えきれなくて、吐きそうな口に手を当てた僕はこの教室から一刻も早く出たくて仕方がなかった。
(・・・もう無理)
だから、こちらに背中を向けている彼を避けて、机の上のカバンを掴んだ僕は逃げるようにして教室から出ようとした。
「あ、おい!!」
「触らないでくださいっ」
また掴まれそうになった腕に寒気を感じて今度こそ振り払った僕は、前のドアから出ればよかったものを頭が回らなかったからわざわざ2人組がいる後ろのドアから出てしまった。
失敗だったと思ったのはドアを抜けようとして、すれ違いざまにボソッと言った彼らの声が僕の耳に届いてしまったこと。
「チッ・・・気持ちわりいな、ゲイとかほんとありえねー」




