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好きで好きでたまらない  作者: しおやき


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38/90

ゲイだって




(誰この人・・っていうかなんで知られて・・・)


「お前昨日廊下で、盛大に告白してたじゃん」

「・・・・・え・・・え?」

「とぼけてんの?俺には聞こえてたんだけど。だいたいさ、廊下で突っ立ってるとかなんの罰ゲームだったの。なに?こうたってそういう趣味持ち?」



 未だに僕から離れてくれないその人は、こうたくんの知り合いなのだろうか。


「す、すいません、離れて下さい」


(っ・・・・気持ち悪い)


 こうたくんに触られたり近付かれたりするのは嬉しいけど、そうじゃない人がこういうことをしてくるのは嫌悪感しかない。



「え、なんで?」

「・・・お願いです・・・・・離れて」

「こっち向いてくれるって約束してくれるなら、離れてもいいよ」



(なに言ってるんだ・・・?)



「・・・わ、分かりました・・・から離れてください」


 

 こうたくん達が今どうなってるのか分からない。もしかしたらもう戻ってきてるかもしれない。こんな光景を見られたら絶対嫌だと思った僕は大人しく意味がわからない指示に従うことにした。


(教室に人が残ってなくて良かった・・・けど)



 了解をすると、窓にはり付いていた手をゆっくりとはがして後ろに下がってくれたのか、背中からは人の体温は感じられなくなった。


 僕は躊躇いがちに後ろに振り返ったけど顔は下を向けたまま。


(え、ち、ちか・・・足すぐそこなんだけど)



「・・・・・」

「うわ~」

「・・・な、なんですか」

「下向いてるとか卑怯」

「・・・・」

「こうたに言おうかな・・・・お前がゲイだって」

「・・・・」


 ちゃんと離れてくれたと思ったけど、あんまり距離がない。それにちらっと足元を見ても当たり前だけど良くわからない。


 

 こんな人、僕は知らない。



「ねえ、俺のこと知らない?昨日会ったんだけど」

「・・・会った?」

「そうそう。覚えてない?さっきも言ったじゃん、お前がこうたに告ったの聞いたって。紙ばらまいてたやつ」

「・・・・・・」


(・・・あの時?)



 僕はそこで言われて初めて気が付いた。でもこんな人に会った覚えはない。というかあの時は僕とこうたくん以外に生徒は居なかった。



「・・・・知りま・・・せん」


 

 心臓の音がドクドクと大きく聞こえる。

危険な状態だと多分体が教えてくれているんだろうけど、最後まで誤魔化せばなんとかなると僕は思っていた。


(・・・っていうか僕がゲイなんてきりゅう君以外知らないし言ってないけど、なんでこの人こんなこと言ってくるんだ)


「知らないとか嘘だろ、ぶつかっただろ?俺と」

「・・・・・ぶつかっ」


(・・・・え)


 

「え?」


 足元ばかりに向けていた視線を順番に上半身へと移していった僕はそこで初めて彼の顔を見た。



「・・・・・」

「思い出した?」

「・・・・は・・・拝見したことはありません」

「おい」



(・・・あの人、こんな顔をしてたのか・・っていうか近すぎて・・・)



「まぁ、別にいいんだけど、俺が覚えてるし」

「・・・・すいません」

「あのさ、桐崎こうたはこのこと知らないの?」

「このことって・・・・なんてしょうか」


 

 昨日ぶつかった・・・・というかぶつかってきた彼は男らしいというよりかは美人な顔立ちといったほうが正しい。


(もうちょっと離れて欲しい・・・)


 

 顔をまた下に向けた僕は床と喋るほうが得意なのかもしれない。



「ん?だからお前の好きは、性的な目で見てるっていう意味の好きってこと」

「・・・・・」

「お前ゲイだろ」

「・・・・ち、違います」

「え、なに、最近まで無自覚とか?こうたのこと好きになって自覚したとかそんな感じ?」

「・・・・や・・・やめてくださいよ、そんなの」



 言われて思わず言葉尻が、小さくなる。


 一回否定しても、確信を突かれた言葉に心が動揺して、戸惑いが隠せない。

 前に下駄箱で遭遇したあの2人組よりもかなり直接的な表現が、守る体制になかった心に突き刺さる。



「なんで?」

「・・・僕は・・・・そんなんじゃないです」

「・・・・ふーん」

「と、とりあえず離れてください」

「お前さ、ちゃんと認めたほうがいいぞ、今後の自分のために」


 左腕を掴まれて、反射的に合わせてしまったその目は笑っていなかった。


「・・・・・」

「ゲイだってこと」

「・・や、やめてください」

「なんで?なんでそんなに頑なに否定すんの?そうなんだから仕方ないじゃん。お前のためを思って言ってんだけど」

「お願い、やめて・・・」


 

 意味がわからない。 

 他人にここまで言われるなんて、自分でも実際に言葉にしたことのない曖昧な感覚を昨日初めて会っただけの人に言われるなんて誰が想像するのか。


 誰のためとか、僕はそんなこと頼んでない。



「なんで・・・・あなたにそんなことまで」

「・・・なんで?いや、だって俺」



ガラッ


 

 (えっ)


名前も知らない目の前の男の子が何か言いかけた時、突然教室のドアが勢いよく開いた音がした。



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