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好きで好きでたまらない  作者: しおやき


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32/90

不吉な足音



(つ、詰んだ)


「・・・・・」

「おい、また寝るな。早く行くぞ」

「・・・・は、はい」



(・・・い、いやぁあああああ!!!)



「かずき、これ届けたら教室戻るよな?」

「はい・・・」


(今・・・僕は何を)



「戻ったら多分ホームルーム終わってるから、一緒にまた正面玄関まで行こうぜ」

「はい」

「・・・・・・」


(こうたくんに好きって言った?・・・)


「い・・・おい、かずき」

「・・・はい」

「大丈夫か?やっぱりどっか痛む?」 

「・・・・だ、大丈夫・・・です。僕は何も言ってません・・」

「何言ってんの?絶対大丈夫じゃないだろ、お前俺の話聞いてる?」

「聞いてません・・・・え?いや、聞いてます!!」


 こうたくんの言葉が微かに頭を横切るけど今の僕にはぜんぜん内部にまで届いてなかった。何を言ったのか思い出していると、急にサァーッと血の気が引いていくようで体の体温が下がり汗ばんでいた服の中は逆に冷たい。


 こんなに一気に体温が上がって下がってとなると僕の体は異常をきたしていると思わざるを得ない。


(もしかして・・・僕・・)


こうたくんは「どっちだよ」と笑いながら廊下に滑ったプリント達を拾っていってくれていた。



「・・・死んじゃう・・」

「何言ってんだよ、冗談でもそれはやめろ。ここで死なれても困るわ、っていうかお前ちょっとこのまま待っといて、職員室に持って行ってくるから」

「・・・・え、あ、ごめんなさい、手伝い」

「いいよ、とりあえずそこから動くな」

「・・・はい」


 そう言ってこうたくんは職員室へとかき集めたプリントを持っていってくれたけど、その間も僕は空中浮遊しているようで周りに意識を向けることが出来なかった。


 やらかしたのは自分なのに、結局こうたくんに片付けをやらせている。


「・・・・どうしよう・・」


(え・・・え?本当に僕好きって言った?もしかして言ってない?こうたくんのリアクション・・・・っていうか様子かなり普通だったよね?ぜんぜん反応してなかったよね?やっぱり僕の勘違い・・・?え、でも好きって言って何もリアクションされなかったらそれはそれで逆に悲しくない?)


 たとえ好きと言っていたとしても、反応の薄さにその真意が伝わっていないはずだ。さっきの会話はノーカンで処理をしたい。



 僕はずっと心の中でブツブツ呟きながら口元に手を当てて床を見ていた。


(え~・・・どうしよう、本当にどうしよう)



 だから、目の前を横切ろうとした足音に気が付いてなくて、少し体がぶつかって初めて人がそこにいると認識した僕は突然聞こえた怒ったような声にびっくりしてしまった。



「っ・・・いってえな」

「あ、す、すいません・・・ごめんなさい」

「ぶつかってくんなよ」


 ただ立っていただけだから、自分からぶつかりに行った記憶はない。ただこの時の僕は、ほわほわして注意が他に向かなかったからもしかしたら体がふらふらしていたのかもしれない。



「何してんだよ、気持ちわりいな」

「す、すいません」


 もちろん顔なんてあげられるわけもなく、怒ってきた人が誰かなんて確認もできない。声に聞き覚えがあるかと言われてもそれも分からない。


「こんなとこでなに突っ立ってんだよ」と遠くなっていく足音に声が乗っかって聞こえた僕はそこで初めて床から視線を上げて去っていく背中を見た。


(・・・・誰だろう)


 見たことのない風貌。この前正面玄関でこうたくんと言い合いをしていた時の声の持ち主ではないことは確かだ。



「・・・・知らない人ばっかりだな」


 入学して1年経ってないし、そもそも交友関係なんてものは皆無に等しいからそこまで深く考えていなかった。


 こうたくんとのやり取りを聞かれていたとは思ってなくて、彼の背中しか確認できなかったから、まさかぶつかった最初からずっとその人が顔に薄ら笑いを浮かべていたなんてこの時の僕はもちろん知らない。



「・・・・あ、こうたくん」


 そして去っていく背中と入れ替わりにこうたくんが職員室から出てきた。ちょうどすれ違いになるかと思ったけどそうならなかったのは先生に呼び止められたのか振り返ってまた職員室の方にこうたくんが体を向けたから。



(・・・・そういえばもうホームルームって終わってるよね)



 時間を費やし過ぎたと思う。何時なのか分からない。こうたくんの部活の時間も過ぎているかもしれない。


「戻るぞ」

「え、あ、・・・はい」

「なに?」

「すいません、なんか色々と・・・もう帰る時間なのに」

「別にいいよ、たいしたことじゃないし」


 生徒たちが僕たちの横をぞろぞろと流れていく。

 さっき僕が転けた時とはまるで正反対の廊下の光景で、ついでにぶつかった人を少し目で追ってみたけどそこにもう姿はなかった。


「なに?どうかした?」

「あ、いや・・・なんでもないです・・・あの、」

「ん~?」


 振り返ってもと来た廊下を歩くと、他の生徒の流れに逆らって歩いてるから少し邪魔になってるかもしれない。でもこうたくんと一緒にいるからいちゃもんはつけられそうにない。


(全部おんぶに抱っこ・・・・)


「あの、さっきのなんですけど」

「さっきの?」

「・・・・えっと・・・す、す・・」

「あぁ、転けて滑りこんだやつ?」

「・・・・」

「誰にも言わないから安心して」

「あ、ありがとうございます・・・」

(・・・・だ、大丈夫だ・・・ちゃんと伝わってない)




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