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好きで好きでたまらない  作者: しおやき


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30/90

好きです




「・・・・まぁ、とりあえず隣のクラス行ってくるわ。次の授業自習だから怒られはしないと思うけど、ちょっと遅れるかも。なんか言われたらフォローしといて」

「・・・・え、じ、自習?」

「うん。聞いてなかった?担任が言ってたよ」

「・・・え」


 またポンポンと僕の頭を軽く触ってこうたくんは教室を出ていった。


「・・・・・自習?・・ぜんぜん聞いてなかった」



 そうだったのかと肩の荷が少しおりて机に伏せるようにして項垂れた。

 そういえば他の生徒は全く席に着く様子がなくてなんでこんなギリギリまでガヤガヤしてるんだろうと感じてはいたけど、まさかの自習。




 そしてこうたくんが出たあと、少ししてからチャイムがなった。

 結局先生は誰も来なかったけど、6限の授業の係がプリントを大量に持ってきたから皆大人しくその問題を解いていた。



(まだ戻ってきてないけど・・・・なにしてるんだろう)



 共学だったら確実に女の子となんかしてるのかなとか、引き留められてるのかなとか、告白されてるのかなってモヤモヤが溜まることを考えてしまうから、こういう時男子校はありがたいと思う。

 ただ、そうは思いながらも配られたプリントに目を通して問題を解き始めた僕は全くペンが進んでいなかった。


(・・・・全然集中できない)


 

 さっき自分で言った時は、告白まがいな感じだったけどあのチャンスを逃すと言いたいことが二度と言えなくなると思って彼を引き留めた。


 

 そして、それを聞いた時のこうたくんの反応。



(顔が・・・見れなかった・・しかもクリスマスに約束って)


 凄い普通だったから、多分僕の気持ちは伝わってないと思うけど何かを言いかけていた。引き留めたから少し嫌な気分にさせたかもしれないと思って彼が話そうとした言葉を遮って謝ったのは果たして正解だったのだろうか。



「えっ・・・あ」


(スマホ・・)


 手につかない課題そっちのけで考え事をしているとこうたくんに話しかけられてそのままにしていたスマホが震えた。

 画面を開くとメモ帳に僕が中途半端に書いた文字が並んでいる。


(・・・・変な文章)


 

 あらためて自分の文を見ると気持ちが悪い。

読み返しって大事だなと思うと同時に、最初に書いた内容は自分のその時の気持ちが直に反映されてるから、否が応でもその文字から感情が伝わってくる。


(こんな感情が乗った文章・・・送らなくて良かった)


 肩を落としながら、通知の主を見るとまだ戻っできていないこうたくんからだった。



【先生いる?】


(・・・・・)


【いないです。皆プリント配られてそれをやってます】


【分かった。戻るわ】


 誰かに何かを頼まれていたのだろうか。気にはなるけど、それと同時にまさかこうたくんとクリスマスに何処かに行くなんて考えてもみなかったから、今来た彼からのメッセージを読んだ途端にだんだんと心が動揺してきた。



(クリスマスというか、誕生日のお礼だけど・・・でも)


 多分、というか9割はそんな未来起こらないだろうと思っても心の何処かでもしかしたらなんてフワフワした気持ちが目の前を漂う。



「今が一番幸せかも・・・」


 持っていたシャーペンでブツブツつぶやきながらプリントの余白にハートマークを書いて下に傘をさした。


(・・・名前は流石に書けないな。滑って落ちて下敷きみたいにスーッて床をはっていかれると困る)


 困るどころの話ではないが現に名前をまだ書いてないからこの状態で机から落ちてもダメージは少ない。きっと無口で気持ち悪いやつだと思われるだけだろう。




「何が?」


カタっ


(え・・・)


「先生いなくて良かった、うるさい先生だったらガミガミ言われてたわ」

「お、おかえりなさい」

「おぉ」


 ドアは静かに開け閉めしたのか、それとも最初から開いていた可能性もあるけどこの際どっちでもいい。音もなく隣の席に戻ってきたこうたくんはいつもどおり。


 机に置かれたプリントを表と裏ひっくり返して眺めて、あくびをしながら「眠い~」と呟くその姿は本当に眠そう。




『誰と会ってたんですか。楽しかったですか』


(・・・・って、凄い聞きたい)


 太陽の光が微妙に窓の外から射し込んで、こうたくんの背中を照らしている。多分当たっている背中は暖かそうだけど、少し避けるとプリントに光が当たるから反射して眩しくなりそうだ。


「・・・・・」

「・・・ん、どうかした?」

「・・・あ、いや・・・背中暑くないですか?」

「いや、特に」

「ですよね・・・」

「で、何が幸せなの?」

「へ?」


(さっきの・・・・聞かれてた)


「なんかボヤいてなかった?」

「いや、多分聞き間違えかと・・・」

「そうなんだ」

「・・・・」


 あんまり興味なさそうに返事をしたこうたくんは、筆記用具を出して目の前のプリントに取り掛かった。


「ねえ、」

「はい・・・」

「これって出来なかったら宿題になるやつ?」

「・・・いや、・・・はい、多分」

「ふっ・・・どっちだよ」

「ご、ごめんなさい。宿題になるやつです」

「だよな」



 眠そうな声で少し笑ったこうたくんに本当は言いたい。


 大袈裟でもなんでもない。

 こうたくんが僕のことを気にかけてくれるから僕は幸せだって言いたい。



「俺のこと試してる?」

「いえ・・・・ぜんぜん」

「ほんと?」

「・・・・はい」



心の中で、誕生日までこの平穏が崩れませんようにと僕は願わずにはいられなかった。




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