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好きで好きでたまらない  作者: しおやき


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20/90

言葉の綾





「・・・持ってません」

「じゃあ行こうよ。僕お店知ってるし、かずきくんに似合う服とか合いそうな服がそこにあるから」

「・・でも値段とか」

「そんなに高くないから。かずきくんが欲しいものもあれば買ってもらって構わないけど、僕からも何着かプレゼントさせて」

「・・・・・・」


(きりゅうくんって・・・・僕と同じ高校生だよね?)


 そんなにお金を持っているのだろうか。もしかしてお金持ち?でも僕のお父さんからはそんな事聞かない。


「なるべく自分で払います・・・でも、服のセンスとかないので選んでいただけるとありがたいです」

「分かった。ここから少し歩くけど人混み凄いから離れないように気をつけてね」

「は、はい・・・」



 彼に追いついて、隣に並び一緒に歩き始めた僕は人混みを避けるのに必死で全くきりゅうくんとの会話に身が入っていなかった。 


 どれくらい歩いたのだろう。周りの人は背が高いし、図体が大きいから前もよく見えない。きっと場所を聞いても分からないから聞かなくて正解だったんだろうけどこれはかなり参った。



「着いた、ここだよ・・・大丈夫?」

「・・・・はい・・・すいません、体力なくて」



 少し息が上がる。

いつの間にか足を止めてたどり着いたお店は僕の全く知らないとこだった。ここまでたどり着くのに、ゆっくり歩いてくれていたきりゅうくんもやっぱり人混みの中だと逆らえなくて流されそうになっていた。


(身体小さいと、やっぱり不便だな・・・こうたくんだったら)


 僕らと違ってこうたくんは背が高いし、サッカーをしてるから体格も良い。季節は冬になる手前で、制服も上着を既に来てるから夏みたいにワイシャツからのぞく腕の筋肉が目に入ってこないのが残念だ。


(・・・・また来年の夏・・・って僕は何を考えているんだ)


「僕も体力ないけど、さっきたくさん甘いの食べたから大丈夫だよ。かずきくんも遠慮せず食べておけば良かったね。店内はこの時間あんまり人いないし、イスもあるからゆっくりしようね」

「はい・・・・それは、僕も思いました」


(イスあるんだ・・・・良かった)



 人もあんまりいないと聞いて安心した。服を選ぶ時に人が多いと気になって中々選べないから結局何も買わずにお店を出ることがある。


 横文字が並ぶ店名をチラ見して、きりゅうくんのあとに続けて中へと入っていった。



「いらっしゃいませ~」


 さっきのカフェとは違い、人が入ると天井付近にあるセンサーが反応して音がなる仕組みらしい。確実に背丈の小さい僕たちが見えてないのにもかかわらず店員さんの声がした。


(・・・僕達からも見えてないけど)


 冬用の服で埋め尽くされた店内は、アウターが入り口付近に並んでいるため余計に視界が遮られる。


「店の中はもう冬だね」

「そうですね・・・凄いたくさん・・・・」

「だよね。ここさ、店員さんと仲が良いからたまに割り引いてくれるんだ」

「・・・そうなんですか?」

「うん」


(どうやって仲良くなったんだろう)


 きりゅうくんは人と話すのが得意ではないと言っていた。それなのにこんなお店の店員さんと会話が続くほどうまくコミニュケーションがどうやって取れるのか不思議でたまらない。


「・・・頻繁に来てるからですか?」

「ん~?あぁ・・・そっちではないかな。まあ普通の繋がりではないよ。多分良く来てるっていう理由なら仲良くはなってない」



 そう言ったきりゅうくんは、理由を言わずに服を見始めた。


(気になる・・・・)



「あっ」


 彼の背中を追っていると、こうたくんに返事をしてないからスマホが気になってポケットから取り出してみた。


「・・・・どうしよう」


 きりゅうくんをほって1人でスマホを見てしまうのは罪悪感に苛まれる気持ちになる。返事らしい返事のメッセージをまだ思い付かなくてスマホを見るのは後からにしようと思いまたポケットにしまい込んだ。



「・・・ねえ、」

「は、はいっ」

「これとか似合うんじゃない?」 

「・・・・これは・・・」 

「凄い似合うと思う」

「でも・・・・・凄いダボダボじゃあ」

「そうかな・・・ん~、・・・かずきくんはね、もうちょっと大きいサイズの服が良いと思うんだよね」

「・・・大きいサイズですか?・・そんなの着たことないです」


 絶対に変だと思う。サイズが合ってないとズボンは引きずりそうだし、袖は長いと手が出ないからお行儀が悪い気がする。


「じゃあチャレンジしよう。絶対似合うよ!っていうか可愛いと思う」

「・・・・か・・・可愛い・・・・?」

「うん」


(可愛いとか・・・男なのにそんな)


 きりゅうくんは何を考えてるんだろう。多分身体が小さいからそれを可愛いと言っているのかもしれないけど、僕よりもきりゅうくんのほうが身体が小さい。



「かずきくんさ、可愛いとか言われたことない?」

「・・・・可愛いですか?」

「うん、そう。顔もだし、性格とか・・・なんか振る舞いとか」

「いや、そんなことは・・・・」


 そもそも人と関わらないからどんな印象を持たれてるかなんて知らないし、陽キャラのグループからしたら僕みたいなヤツはウザいだけだと思う。


(・・・・・こうたくん以外は話さないけど、他の人には良い印象待たれてる気はしないな・・・何にも知らないけど)


「本当に?」

「・・・・はい。学校の人とは喋らないのでそんな事言われたことはないです」

「ふ~ん・・・」


 きりゅうくんはいくつかある服を取り出して彼の目の前に立った僕の体にその服を合わせるように当ててきた。



「じゃあさ、こうたくんは?」

「・・・え?」



 きりゅうくんから唐突に出された彼の名前に顔を上げた僕は一瞬言葉を失う。


「こうたくんだよ。席隣なんでしょ?」

「それは・・・・そんなこと、こうたくんが言うわけな・・・」


 服がおいてある場所に全身鏡もあるから否が応でも、その鏡に写った自分の姿と目が合ってふと思い出した。



『でもかずき、可愛い顔してるじゃん』



「・・・・」

「どうかした?」

「・・・・・」


 確かこうたくんに言われたような気はするけど、それがいつだったかは曖昧だ。僕が自分で都合良く塗り替えた記憶ではない。どんな話の流れでそう言われたか忘れたけど、確かに言われたあの言葉は適当に言っただけだろうなと思った記憶はある。


(昨日学校休んで、家に来てくれた時も・・・・可愛いって)



 不自然なとこで言葉を止めて、何も喋らずに瞬きの回数が増えた僕にきりゅうくんは何か悟ったのか、手に持っていた服を別のものに変えてサイズを確かめるように肩に服をあてがった。



「連絡先交換してやり取りしてるなら、今度は遊びに誘われるかもね」

「・・・・・それは・・・ないと思います」

「ネガティブ精神全開。っていうか、こうたくんへの返事考えた?」

「・・・え、あ、はい・・・・・いや、すいません嘘です。まだ思い付きません」


(何が可愛いのか・・・・良くわからないけど)


「じゃあさ、試着した服写メで撮って送ればいいじゃん。だいたいサイズは分かったからちょっと手当たり次第服かき集めてくるわ」

「え、送るって」

「写メ送ってついでにこうたくんに返事もすれば良いよ。話の流れで今度どっか遊びに行く?って聞かれそうだね~ちょっと待っといて」

「ちょっ」


(と待っといてって・・・・)


「・・・絶対無理だよ」





 全力で抵抗したから、1人で先行してはしゃぐきりゅうくんになんとかストップをかけて写メを撮られるのだけは防ぐことができた。


「いや~いい買い物できた。かずきくんもこれでいつデートに誘われても準備万端だね。あ、それはそうと、話のネタになるからこうたくんに服買ったこと言えばいいじゃん」


 お店から出て、満足した様子で声を弾ませた彼はどうしても服の話題をこうたくんにふってほしいらしい。


(言われなくても送るけど・・・)



 店員さんと話が弾んでいたきりゅうくんの横で、僕は買ってもらった服が入った袋を抱えていたけど、きりゅうくんがデートというワードを出すからついでに頭も抱えてしまった。





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