4 星のペンダント
星のペンダント
私が王子様の住んでいるお城に初めて行ったのはいつのころだっただろう?
あれは、たぶん小学校六年生の夏休みだっただろうか?
「いらっしゃい。道には迷わなかった? お姫様」
大きな白い門の前で私を待っていてくれた王子様はやってきた私に向かってそう言った。
王子様は素敵な白いおしゃれな(古風な)スーツを着ている。私はいつも通りの普段着(青色のシャツとハーフパンツと運動靴)だった。(王子様の格好を見て私も真っ白なふわふわのドレスでも着てくればよかったと思った)
「大丈夫。ずっと遠くからでもこのお城の姿はよく見えていたから」
とにっこりと笑って私は言った。
私の言葉は嘘ではなかった。
王子様の住んでいる真っ白なお城の姿はいつも私がこの世界のどこにいても必ず私の目の見えるところに存在していた。
久しぶりに会った王子様はとても澄んだ目をしていた。なにもかもを見通しているような、そんな透き通った水のような、綺麗な鏡のような、とても不思議で、綺麗な目をしていた。
「どうぞ。こちらへ」
そう言って王子様は私をお城の中に招き入れてくれた。
「お邪魔します」
そう言って私は大きな門をくぐってお城の中に入って行った。
私たちが門をくぐると門は後ろ手にゆっくりとした動きで勝手に閉じた。
そのせいで私の目から外の世界の風景は見ることができなくなった。
上を見るとそこには白い雲ひとつない青色の綺麗な空が広がっている。
視線を戻すと、そこには王子様がいた。王子様は足を止めて、ぼんやりと世界を眺めている私のことをじっとその場所に立って待っていてくれた。
「本当に素敵なところだね」と私は言った。
「ありがとう」と王子様は嬉しそうな顔でそう言った。
石畳の道を歩いてお城の入り口まで辿り着くと王子様は私のために入り口の扉を開いてくれた。
私はその扉を通ってお城の中に入った。
するとそこにはまるでなにかの映画で見るような、あるいは物語を読んで想像したようなそんな豪華な浮世離れした美しい景色が広がっていた。