表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/57

56『次の計画』

 東京護衛、三日目。

 早朝のことである。


 研究所に併設されているホテルで、僕は朝食を取っていた。

 昨日の夜の最後。

 僕が黒町と決めた計画を確認する。

 忘れないように、スマホアプリのメモ帳に記録しておいたのだ。


『朝十時、東京の第一災害避難拠点にて集合』。


「にしても、結構美味だよなあ、これ」


 朝食はなんとバイキングだった。

 緊急事態の時に何しているんだって話だが───この研究所は独自で野菜やらを育てているので、材料の件については問題ないとのことだった。


 それともっと苦労している人たちがいるのに! という意見が挙がるかもしれないが……、


 黒町曰く、

「俺たちはそんな苦労している人たちを助けるのが仕事なんだ。飯食って力つけなきゃ何も出来ねーよ」

 だそうだ。


 ともかく、


 レストランで自分が自由に皿に盛った、スクランブルエッグなどを口に運びつつ計画などを再度、確認していく。


「十時集合で顔合わせ、本格的な行動開始は十時半から。うん、大丈夫」


「何してるの」


 唐突に、隣の席に眠たそうな勇者が座ってくる。わざわざ僕の隣に来るなんて珍しいよな。

 寝ぼけているのだろうか。

 女子力の無さを露見するように、彼女の長い髪は逆立つようにかなり強めの寝癖が出来ていた。


「今日の予定の確認さ」


「予定?」


「計画と表現する方が適切かもしれないけど」


「……ああ、もしかして昨日の夜、黒町さんと話してたのはソレ?」


「ああ、計画についてさ」


「ふうん」


 特に興味とかはないのか、それ以上は聞いてこない。


「もぐもぐ。にしても、このオムライス……美味しすぎるわね」


 ……違った。

 どうやら朝食を食べるのに夢中になっていただけだったようだ。僕と違って秋元のお皿には、大盛りの料理がのっている。


 なんかご飯とかを餌にしてトラップを仕掛けたら、簡単に引っ掛かりそう。


「秋元」


「もぐもぐ、……なに?」


梅雨坂つゆざかが来るらしい」


「えっ」


 彼女の食事を進める箸が、動きを止めた。


 梅雨坂。

 梅雨坂つゆざかほたる

 クラスメイト。

 冒険者にして配信者。

 そして僕と秋元と一緒に夢迷宮を攻略した、『死神』の異名を持つのほほん系少女だ。


ほたるが来るって?」


「うん。僕のところに今朝さっきメッセージが届いた」


 そういえば東京に逃げていたので、かなり久しい気がする。実際はそんなに日数は経っていないのだけどね。


 ただ間にあった出来事が大きすぎて、そう錯覚してしまっているだけ。


「───止めなかったの?」


「止める? なんで?」


「危ないでしょ」


「アイツだってれっきとした冒険者だぜ? それに国指定冒険者アレスターではないにしろ、異名があるぐらいには強い」


「……違うわ。此処はれっきとした被災地ってこと。そういう点で危ないのよ。わざわざ危険な所に進む必要はないわ、ただの女子高生が」


 どうやら秋元は、梅雨坂のことを心配しているらしい。


「冒険者、配信者、死神の異名を持ち──"ただ"の女子高生ではないだろ?」


「にしろ、危険には変わりないわ」


「協力してもらえれば戦力になる。確実にね」


「……でも、」


 いや、と言ってから秋元は逡巡しゅんじゅんする。


「どうせ私が断っても、彼女は来るわよね」


「そうだろうな」


 実はヒナ───暁ヒナからも『行くよ』というメッセージを受信したのだが、これはまあ勇者には伝えなくとも良いだろう。


 別に関係ないようなもんだしな。


「ぁあ、あと秋元」


 そうだ。

 伝える伝えないで思い出した。

 クロマチに言われてたんだった───秋元にも計画について『知りたくなくても』説明しておけよって。


「今度は何よ」


「昨日、黒町と話した内容について説明──ぁあ、いいや。めんどくさいから、簡潔に言わせてもらうよ」


「なによ、意味深で」


「今日の東京護衛は──僕たちの協力役として、冒険者が100人来るぞ」


「…………………………は?」


 上手く理解出来なかったようだが、事実である。昨夜、クロマチと作戦の方針を決め終わった二人で配信を行ったのだ。

 そこで明日、『僕たちの東京護衛に協力してくれる人を募集、主に魔物を探す仕事』と依頼ボランティアを出した。


 すると僕のSNSに、全国から冒険者によるメッセージが届き──行けそうな人に選別したところ、100人になったわけ。


 僕の予想を十分に上回る、超大人数だ。

 冷静に考えて凄え。


「そんな訳でよろしく。僕は初対面の人と話すのは苦手だったりするからさ、対応とかは全部、秋元にお願いするから」


「え? え、ちょっと待って、それもなんか意味不明でありえないんだけど、何人だって?」


 まだ状況を上手く咀嚼できない勇者に、一言。


「100人」


「ひゃ、100人!?!?!?」


 彼女はそのまま卒倒し、帰らぬ人になった。

 それは嘘である。

 しかしなんでこんなに動揺しているのか、その理由は後に判明する。


 どうやら彼女は、初対面にけっこう恥ずかしがり屋だったりするらしい、そうだ。



この作品の番外編である短編ほぼショートショートを書きました。最近、本編がずっとヒリヒリしている展開続きなのでギャグ調です。


『最強少年、メスガキに『ざぁ~こ♡』と言われたので怒ってみたら、すぐ泣いた』



https://ncode.syosetu.com/n4732ix/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ