05『暴露系配信者"ヒナ"』
秋元奈々や城里学が使っている大手配信サイト、
そのサイトである一定層からの人気を持っている配信者がいた。
その名を『暴露系魔法少女ヒナ』と言う。
「……みんな、知ってる? もちろん私のリスナーから知ってるよねぇ? ヤバいことになってるよ、界隈」
そよ少女は、人の秘密などを──視聴者のタレコミをまとめて、配信しながら暴露していく芸風であった。
その配信はある一定の層に受けていたが為に、熱烈なファンが沢山いたのだ。
そして彼女もまた、冒険者であった。
「あの勇者だけが入れるダンジョンに、他の人がいたんだって! それで、随分と荒れてるよねぇ」
いわゆる、地雷系ファッションをする彼女。黒のハーフアップツインテールに、黒と白を基調としたゴスロリ。
世間的には、冒険者的には動きにくそうな格好である。
しかし、彼女はそんな格好の中でも──華麗に立ち回る。
まるで踊るように。
「しかもその人、男の子なんでしょ? しかもしかもしかも! あの勇者っっっと、随分っっっと仲良さそうだったんでしょう?」
"難易度『高』"と日本政府から指定されているダンジョン。
────溶岩王城。
そこにウジャウジャといる溶岩蛇という魔物を、彼女は配信しながら、話しながら、軽々しく大きな『鎌』を振り回して殺戮を謳歌する。
気味の悪い笑みを、彼女は浮かべた。
「あれだけ色恋沙汰がなかった勇者ちゃんなのにねー?」
その笑みの裏に、表に、どんな感情が籠められているのか。それは視聴者の誰にも分からない。
ただただ熱狂的に彼らは、彼女のことを推すのだ。
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『あの男の喋り方、若干ムカつくくね?』
『やはりヒナたんが世界一の可愛さ』
『それにしても、ヒナっちの今日の朝食はなに?』
『あいつ、勇者の恋人なんかな』
『勇者ちゃんも可愛いけど、ヒナっちのスキル《魅了》には敵わないぜ……!!』
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配信ではそのようなコメントがずらずらと羅列していた。
「わったしー、勇者のファンだから? あの男の人ちょっと嫌いかもねー。推しが奪われたって感じ?」
魔物の死体の山。その上に座りながら、彼女はスマートフォンの画面を見つめる。
コメント全てに目を通し、『彼女に対する批判的なコメント』があれば全て削除していった。
つまるところ、似通った思想しか、意見しか、その世界には存在出来なかった。
「にひひ……みんな、なんかタレコミとかあったら教えてね!」
それから数分の雑談の後に、悪女はそう言って配信を切った。そしてそのまま徒歩でダンジョンから外へ出ていく。
ダンジョンを出た先は鉄柵で囲まれており、唯一ある鉄の扉をゆっくりと開いて、ダンジョンを後にした。
「さってとー、これからどうしようかなぁ」
外は明るい、晴天だった。
彼女は大きく両手を空へと振り上げ、大きく息を吸う。
そんな彼女の瞳は、随分と光り輝いていた。
◇◇◇
300年前ほどの話だろう。
世界に『神』が降り立った。"神"とはいっても、今まで人間が考えてきたような──モノではない。
現れたその存在は、人を滅ぼさんとする、悪であった。
人を滅ぼそうとする──神。
人の繁栄を願い続う──人。
神は人々を滅ぼさんと、"神の使い"を大地へ送り、人々を殺戮していった。
それに対して、反抗する人間もいた。
その中で頭角を現したのが、勇者だった。
紆余曲折あり勇者率いる人間達は──、神に反抗し、神を滅ぼすギリギリまで辿り着いた。
いや、滅ぼしたはずだった。
しかし、神は──強かった。
神は自分たちの残滓を、地球上の様々な物体に付与し、変形し、『人類を滅ぼす兵器』である"ダンジョン"を数万単位で世界へ残していったのだ。
現在、冒険者という職業がある。
それは簡単に言って仕舞えば、ダンジョンを攻略し、駆除していく仕事である。
だがそれを更に簡単に言ってしまえば。
『神に反逆する』仕事なのだ。
だがしかし、それらの話はもはや昔話になりつつあり……知っている人間は、そう多くはいなかった。
それがこれから、どのように影響していくのか。
それは先程語った『彼女の動向』と同じように、分からないものだった。
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