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33『まじかよロリ神リサーチャー』

 


「いやあの、純粋に理解が出来ないのだけれど。なんだって? アンタがネオイロス・ライト──?」 


 ネオイロス・ライト。

 それは今日、僕が潜って激戦を繰り広げたダンジョンの名前であり、その時に出会った包帯野郎の名前でもあった。

 それから、目の前にいるライオンの着ぐるみを着た紫ロリも同じだった。


 こんな名前は普通じゃないし、偶然被ったという訳でもないだろう。つーか、あっちが初対面じゃないと言っているし。


 ああ、もう、混乱してきたぞ───っ!


 なんでこう、僕の周りには……混乱ばっかりさせようとする輩しかいないのか。


「そうじゃ、ワッシがネオイロス・ライトじゃ」


「いやでも、それは洞窟だし……包帯野郎だし……少なくともロリじゃなかった」


「誰がロリかの? 死にたいのかの」


 ロリと言われたら怒るタイプのロリだったか!


「ごめん」


「良いのじゃ」


 謝ったら許してくれるタイプのロリだったか! これで許してくれなかったら、僕は人生で一生悔いる事になってただろうし、良かった良かった。


「じゃなくて、だよ」


「まだ何か言いたい事があるのか、お主は」


 そりゃあもう、滅茶苦茶ある。


「アンタ──と、同名の包帯野郎の関係性」


「簡単に言えば、こうじゃな。ワッシと君が会った包帯人形は、同一人物だと。どちらも同じ魂の器みたいなものじゃな」


 ……というと?


「詳しい事はここで話せん、中に入るのじゃ」


 更に先の情報を求めようとすると、ここから先は有料です……と視聴者に媚びるように、僕たちは眼前にそびえ立つ洞穴の中へ案内された。

 この入り口は冒険者でなくとも来れる、東京の普通の路地裏にある──だから、鍵のついた鉄格子のドアを開けてもらい、勇者と共に中に入る。


 仕方がない。

 というか元々、此処が目的地だったし何も問題はない。


 しかし、


「む、ちょっと待て」


「え、あぁ勿論」


 そこで、ネオイロス・ライト……いや呼びにくいから、ネーちゃんと勝手に呼ぼう。

 ネーちゃんに呼び止められた。彼女は僕の背後を指差す。


 違う、僕が背負っている松永を指しているのか。


「秋元。ソイツが君たちを襲ってきた国指定冒険者アレスターじゃな?」


「え? まぁ、そうよ。今は知人のスキルのおかげで気絶させているだけ」


「ほお、なんて危険な状態で連れて来るのか。怖い怖い……」


 彼女の伸ばした指先が、円を描くように回る。すると宙に淡い光の絵が浮かびあがり、次第に鮮明になっていく。

 具現化されていく。随分と便利な魔法だなソレ! 僕も使ってみたいけど、魔素がないので叶うことはない。


「それは」


「見た目通り縄じゃよ」


 ──それは縄だった。

 ───銀色をベースとし、所々に微小の赤い鉱石が埋め込まれた縄だった。


 何に使うっていうのか、SMプレイは残念ながら趣味ではない。


「これは魔法やらを無効化する特殊な縄じゃよ、それでソヤツを縛っておけば……気絶状態から回復しても問題はなかろう」


「ねえ、その魔法……前来た時には見なかったけど、また新しいやつ?」


 僕が聞くよりも早く、秋元が聞いた。

 気になっていた事である。こんなカジュアルに会話するぐらいだし、ネーちゃんが……秋元の言っていた信頼出来る人物とやらなのだろうか?



「ニッヒヒ。お察しの通りじゃ、これは"《現法フロンティ魔法マギア"。この春完成したばかりの出来立てほやほや魔法じゃよ」



「なるほどね、どおりで」


 現法魔法フロンティ・マギア

 曰く、五種類の基本的等級に属さない、最先端を称する例外的な魔法だったか───。


 その反対に《古法オールディ・魔法マギア》という最古の魔法があるんだっけか。


 この二つは現代に普及する魔法とは体系が別のものであって、未だ解明できていない点も多々だとか……。

 未開拓でロマンもあり、将来性もあるため、国の研究者がこぞって研究しているって話を……秋元か誰かから聞いた覚えがあった。


「取り敢えず、ほれ、これで奴を縛るのじゃ」


「……分かった」


 僕は松永をその場に下ろして、両手を縛り付け自由を奪い……そのまま体にまぁまぁキツく巻きつけた。脚はちょっと可哀想になるので、僕には出来そうになかった。


 悪いけど、こういう趣味もないんだよ。


「これでオーケーだ」

 縄で結びつけた後、再び僕は松永を背負う。


「じゃ、先に進もうかの」


 ネーちゃんはコチラを一瞥してから、そのまま歩き出すのだった。



 ◇



 暗い洞窟の中を少し進んでいくと、急に視界が明るくなった。どうやら遠くからは見えない結界を敷いているらしく、この結界がある事で侵入者の警報を鳴らしたり、誰が出入りしたかを随時確認可能になっているらしい。


 時と場合によっては、魔法で侵入者を攻撃することも出来るのだとか。


「にしても、結界を抜けたら……」


 一面がコンクリートで囲まれた、とにかくだだっ広い立方体の部屋に到着した。此処が東京の地下にあるとか、想像することは中々難しい。

 そこら中に機械などが置いてあり、まるで普通の会社のオフィスだ。


 白衣を着た職員たちは忙しそうで、常に走って交錯していた。


「広すぎるし、明るすぎるだろ……!」


 天井には無数のLEDライトなるものが付けられており、かなり眩しい。


 この広い立方体エリアはまだ序の口のようで、そこから様々な部屋に繋がる通路が蜘蛛手の如く存在している。


「そりゃあね、だってココは日本唯一の国際ダンジョン研究所なんだから。国際機構を貴方は舐めているの?」


「舐めてないけど、あれだよ、あれ」


「あれ?」


「田舎モンが都会にある高層ビルを見て、ワクワクする感覚だっ!」

 というか、そのまんまである。


 僕の新鮮さが彼女には伝わらないのか、秋元はただ頭に手をやって『やれやれ』と呆れるだけ。


 へっ……子供心を忘れた、つまらん奴め!


「ほんっとアンタって……その馬鹿げた強さを除けば、ただの馬鹿な田舎モンよね」


「馬鹿にしてる?」


「してないわけないでしょ」


 まじかよ。それはショックだ。


「まあまあ落ち着くのだ二人とも、コーヒーでも飲むのじゃよ」


 ライオンの着ぐるみを着るネーちゃんがそう言って、案内してくれた席に……コーヒーを持ってきてくれた。談話室エリアの様な場所がこの立方体には確保されているようで、僕たちはどうやらそこに居た。


 縄で拘束した松永は、簡易ベッドの上で寝かせておく。


「さてと、勇者よ。アレについてじゃが、いつも通り『A7研究室』にいる」


「分かった、ありがとう。……話してくるわ」


 差し出さられたコーヒーを一瞬で飲み干す秋元。まじかよ、アンタの勇者の力よりこっちの技術の方が羨ましいぜ! 僕は猫舌だから、こういうホットなものを一気に飲み干すとか──フザけてるのかって戯言になるのさ。


 絶壁勇者は立ち上がり、まるで迷路の様なデスクエリアを抜けて、スタスタと通路の方へ歩いていった。

 信頼がなんとなー、って人に会いにいくのだろうさ。


「そう言えば、お主はワッシに聞きたい事があったのだったな」


「お主、なんてじゃなくて。城里って呼んでくれて構わないよ、全然」


「……ごほんっ、城里はワッシに聞きたい事があったのだったな」


 今更だが、なんでこの紫ロリさんは……ライオンの着ぐるみなんてしているのだろうか。


 後でこっそり聞いてみることにしよう。


 ネーちゃんがデスクチェアを持ってきて、僕と対面する様に座る。二人の間にテーブルなどもないので、少し緊張する。

 因みにコーヒーを置いたりするデスクは、僕たちの横に設置してあり、その先には仕切りなどが置かれているので……テーブル越しに対面する事は出来ない造りになっている。


 ともかく、彼女の言葉に応答する。


「ああ、僕が今日洞窟で話した包帯野郎との関係性。同一人物だって、アンタは言っていたよな」


「そうじゃ」


 ライオンは頷く。


「ワッシはあの包帯の人形と同じ──存在じゃ」

 また言い方が変わって、混乱してきた。


「それはさ、同一人物という意味合いとちょっと違うのか?」


「さっきは分かりやすく、そんな表現を使っただけで……正確には少し違う」


「むう」


 腕を組んで考える。

 だめだ、全く頭に入ってこない。


「城里は、ネオイロスが何か知っているか?」


「何さ」


「──"神"じゃよ」


『神』。そんな発言をされて、いきなり規模が大きくなったなあと他人事に考えた。


「かつて人類を滅ぼそうとした神の一人。夢を司る神──ネオイロス」


 ネーちゃんはそのまま続ける。


「ワッシやあの包帯……あの男は、つまるところネオイロスの子供であり共同体というヤツじゃった」


「共同体」


「記憶や感覚の共有が常に可能で、それぞれの位置も思考も分かる。──そんなネオイロスの共同体が、いま、この日本で3体現存している」


 3体て……人の呼び方じゃあないよな。

 つーか、三ってことは。ネーちゃんと、あの包帯男? と他に一人いるのか。

 案外少ないな。


 ……って待て待て、ネオイロスの子供だと?


 それはつまり、


「もう1人はかなり遠くにおるがな」


 言ってしまえばネーちゃんは『神の子』ってこのなのか?

 なんだそれ。

 もしかすると、僕はやっぱりとても規模のデカい事に巻き込まれてるんじゃないか……?


「えーっと、つまりじゃあ……アンタは人間ではないってことなのか?」


 恐る恐る、目の前の何者かに聞く。

 彼女は即答した。


「そうじゃ」


 まじかよ……。固唾を飲み、人間以外の何者かを凝視する。


「城里は冒険者じゃったな。人間じゃないと分かった今、ワッシを殺すか?」


「──」


 ああ。


「いいや、そんな事するわけないだろ……僕は人殺しなんて怖くて、とてもじゃないけど正気じゃ出来ないよ」


「そうか。なら良いのじゃが」


「でも、僕は冒険者兼……配信者なのさ。特大スクープだって緊急配信して良いか?」


 最後に僕がそう聞くと、何故だろう。

 ビンタされた。



 ◇



 落ち着いてから、色々と話を聞いた。


 ネオイロス・ライト──の子供……、である彼女の本名は現在『三宮さんぐう旅路たびじ』と言うらしい。

 わざわざネオイロスと名乗ったのは、僕を驚かせる為だったそうだ。

 現在彼女は、この国際ダンジョン研究所で……《現法フロンティ・魔法マギア》について研究を進めているらしい。

 まあ、それは知っている。


 あと、年齢については聞かないでおいた。

 ファンタジーとかに出てくるロリエルフと同種と考えたからである。

 聞くだけ無駄だ、聞くだけ無駄だ。


 そう自分に言い聞かす。


「なんか悪い気がするな、色々と聞かせてもらって」


「別に構わないのじゃよ、其方がどういう人間かは包帯を通じて知っとるからの」


「……そっか」


 ようやくコーヒーを飲み終えた。


「取り敢えず、ココは企業秘密♡ の様な情報も沢山扱っとるから……配信は禁止、ココでの情報も部外秘で頼むぞ」


「もちろんだよ」


 今度は僕が頷いた、その時である。

 ふと何かを思い出したかのように、ライオン着ぐるみの三宮が立ち上がる。


「どうした、えーっと、三宮さん」



「……そうじゃ城里。お主、"着ぐるみを着ないか"?」



 唐突すぎる提案だった。


「───は?」


 僕はつくづく思う、……最初の件といい、この人には驚かされてばっかりだと。


「はああぁぁぁぁあああ!?」


 よく分からないけれど、デジャヴってこういうものなのだろうな。


三宮のことをもっと知りたい方はぜひ、ポイン──トを──っ!!!

書き上がったら、1日なんて待ってられないのです。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

ランキング駆け上がってみたいです!! 良ければブックマークや、広告の下から【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると、続きを書いていく励みになるのでよろしくお願いします!!

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