表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/57

19『ダンジョンの異変について。語る』

 

 喫茶店『チャルル』は、僕たちが梅雨坂に協力をお願いした時に入った場所でもある。

 放課後、午後七時。


 仲直りのため。気分転換のため。


 僕と秋元は、そこでブラックコーヒーを嗜んでいた。


「美味しいわね」


「実のところ、僕は苦いコーヒーが苦手だ。苦いだけにさ」


「じゃあなんで喫茶店なんてチョイスしたのよ」


 僕のダジャレは軽くあしらわれ、無視された。


「だってほらお洒落じゃないか」


「それはまあ、確かにそうだけれど……」


「文句あるかい。別に良いじゃないか。お洒落は好きだろ? あんただって、一応女の子だしな」


「一応ってないよ。私はれっきとした乙女であり、女の子よ」


「はいはい」


 れっきときた乙女おとめっていうのは、どうやら急に斬りかかってくるヤバい奴を指すらしい。僕はそんな皮肉めいたことを心の中で考えつつ、届いたブラックコーヒーをすすった。


 ほろ苦い。


「あんたはさ」


 それから、彼女は話を切り出す。


「ああ」


「あんたは、将来の夢とかってあるの?」


「……将来の夢?」


 それは、なんだろうか。

 彼女に聞かれて、僕はふと考えてみた。将来の夢。自分がなりたい職業。自分が未来、どうしたいのか。


 考えて、考えて、たどり着く。


「ないな、将来の夢ってのは。僕はやりたい事とかが見つかったら、すぐにやるタイプだから」


「へえ」


「秋元、逆にお前にはあるのか? 想像つかないな。お前の将来の夢ってのは」


「……まあ、私には勇者としての役目があるからね。将来の夢ってのはないわ。あったところで、叶えられないのは確定してるから」


 そりゃあ、なんとも悲しい話だった。

 確定された未来。それが、彼女──勇者にはあるっていうんだ。

 勇者が存在する目的を、僕は知らない。

 だから僕にしてみればその未来は明瞭ではないのだが、確かに確定しているように思えた。


 そして。

 その様は、まるで昔の僕みたいだった。


「……ごめんなさい、気分転換に喫茶店へ来たのに、話を少し暗くしちゃったわね」


「別に構わないさ」


「話題を変えましょ」


 店員が僕たちの席を通る時、秋元はコーヒーをがぶりと飲み切って、もう一つ『ブラックコーヒー』くださいと言った。


 ──ホット、で。


「そうね、何を話しましょうか」


「……」


 別にここで何でも構わないさ、と再び答えても構わない。でもそれだと味がしない。

 僕的になんだか気に食わないし、彼女に掌握されているみたいなので、違う返答を用意する。


「なら。それなら、ダンジョンの話をしよう」


「ダンジョン」


「そうだ。ダンジョン。オネイロス・ライトについてだ」


 秋元はその名前を聞いて、謎ソレを? と疑問に思うような、瞳をしていた。


「僕たちは今週の土曜日に、そこに調査しに行くことになっただろ?」


「ええ、そうね」


「4階層で異変が起こってるとか、なんとか。で、僕はその異変とやらを自分なりにネットで調べてみた」


 僕はポケットから、自分のスマートフォンを取り出す。そこで僕はある一つのまとめサイトを映し出した。


『中難易度ダンジョンにて、配信者の男、配信中に餓死』という内容をまとめ上げたモノ。


 僕はそれを彼女に見せた。


「このダンジョンはオネイロス・ライトだ。しかも彼が死んだのは4階層。男はある程度、ダンジョン攻略に慣れた冒険者だった。だというのに餓死って、おかしいよな」


「ええ、そうね」


「つまるところ、これこそが僕たちが調査する異変の内容なのか?」


 僕は聞いた。


「半分正解で、半分不正解」


「へぇ、それは一体どういうことだい」


「この男が不自然な死を遂げたのが、本当に夢迷宮のせいなのかどうか。私たちはそれを調べに行くのよ」


「というと」


「この冒険者の男は、ある魔法マジックアイテムを盗んだのよ。国が危険視している冒険者チームからね。それは多分、表沙汰にはなっていないことよ」


「なるほど、なるほどな。理解した」


 そういうことか。


 男の不自然な死。

 それが夢迷宮のせいなのか。

 本当に餓死なのか。

 それを僕たちは調べに行くらしい。……ようやく、分かった。


 もしかすると、その冒険者チームのヤツらに殺されているかもしれない。

 って話だ。


 なんとも怖いことだが、十分に有り得るのだろう。


 冒険者チーム。

 それはまぁその名の通り、たしか冒険者が四人以上集まって作る事の出来る団体だったはずだ。


 そして冒険者が十人以上集まれば、冒険者個人ギルドが作れる……とかだったか。


「因みにその冒険者チームは、どういうもんなんだ」


 彼女はゆっくりと答える。



「そうね。強いて言うのなら、"暁ヒナ"がリーダーをしている悪名高いところ。……かしら」



 僕はその言葉を聞いて、微かにでもなく、確かに驚くのだった。



類は友を呼ぶ。



ここまでお読み頂きありがとうございます!

ランキング駆け上がってみたいです!! 良ければ広告の下から【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると、続きを書いていく励みになるのでよろしくお願いします!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ