13『ダンジョン探索』
「ここね」
「徒歩……3分ぐらいだったな」
「ええ、駅の目の前だとは。びっくりしたわ」
ある駅を降りた先には、田んぼやら……草むらやらが広がっていた。無人駅。
いわゆるザ・田舎な立地にそのダンジョンはあった。
中難易度ダンジョン《オネイロス・ライト》。
不自然な突起。岩の山には洞窟のように、空洞があった。その空洞は中から外に出られないように、鉄柵で囲まれていた。
鉄柵の扉をゆっくりと押し開けて、中に入っていく。
「オーケー、いこう」
「ええ」
岩の空洞は下につながっていた。
そこまで広くはないが、狭すぎるわけでもなかった。少なくとも僕たち二人が歩く程度のスペースはあったから。
「霧がかかってる」
少し奥へと進むと気がつく。このダンジョンは若干だが霧がかかっていたのだ。
進む毎に濃くなっていく。だんだん、外からの光も届かなくなってきていた。
それに痺れを切らし、
「点灯」
秋元がそう詠唱した。すると、光の球が出現し……辺り一面を明るく照らしてくれた。そしてどうやらその球は、僕たちに追尾してきてくれるらしい。
便利なもんだな。
「ダンジョンでは必須級の魔法なのに、そんなに驚く?」
「驚いたつもりはないんだけどな」
「顔に出てたわよ」
「そうか。でも仕方がないじゃないか。僕はふつう、ダンジョン探索をする時は魔法じゃなくて、懐中電灯を使ってたんだから」
「あんたって、時々おかしいところあるわよね!? いや、いつもかな」
失礼なウーマンだ。
「僕はいつでも正常さ」
しかし、その言葉は無視されてしまった。どうやらその言葉はあまりにも妄言的であったらしい。
◇◇◇
「結構深くまで潜ったんじゃないか?」
「そうかもね」
僕は携帯を確認する。
ーーーー
『中難易度のダンジョンに、わざわざ勇者とホワイトが来るってすごくね』
『このダンジョンって普通じゃないん?』
『分からん』
『暁ヒナが昔ここ来てた気がする』
『地元じゃ結構有名なダンジョンだよ』
ーーーー
歩いていくと、やがて大きく広いスペースへと辿り着いた。すると霧が晴れていく。
そこはつまり、このダンジョンの1階層なんだろう。
「で、異変の調査とは言ってもさ。具体的にどうすりゃいいのさ」
「……そうね。まずは異変が確認された、4階層まで潜るわよ」
「オーケー、了解した」
大きなフロアはまるで渓谷みたいだった。壮大である。高低差がかなりあり、進んでいくには壁を越え、壁を下りを繰り返す必要があるだろう。
かなり、険しい。
「さて、どういう風にいくか?」
「どう、って言われても。登るしかないわよね」
「そりゃそうだ」
僕はそう言って、彼女と共に。まず最初に立ちはだかってきた崖を登り始めた。
岩を掴み、岩に脚を引っ掛け、登っていく。
疲れはするが、案外簡単に登ることが出来た。
「よし次は……」
「降りる」
「はぁ」
そうして僕たちは、そこから少し進んで、下へと降りた。登っては降りて。崖を登った先にある空洞、そこを進んでまた下へ降りていくのだ。
降りた、とはいっても……五メートルぐらい下へだが。
それでも若干の衝撃が足には響いた。
痛いな、ちょっと。
「よし」
降りて地面を踏み込むと、土埃が舞った。
「まだまだ続いてるわね」
「そうだな、こりゃあ」
随分と入り組んだ構造だった。
いや、ダンジョンとは大体がこんなモノなのかもしれないが。
それでもあの勇者専用ダンジョンの方が、構造的な話をすれば単純だったと思う。
「……」
僕たちは進んでいく。
土埃に被さりながらも、奥へと着実に進んでいった。とはいっても十分ぐらいしか経過していない時だった。
ふと、僕たちは歩む脚を止める。
前に先行して歩いていた勇者が、立ち止まったのだ。
「どうしたんだよ、急にさ」
「……行き止まり、よ」
「はあ?」
そう。僕たちが道なりに進んで行った先に──通路はなかった。完全なる行き止まりだったのだ。
おかしい。僕たちはきっと同時にそう思ったことだろう。
少なくとも、僕はそう思った。
疑問を持った。
「僕たちは道なりに進んできた筈だよな?」
「えぇ、そのはずよ」
「じゃあなんで行き止まりなんかにぶつかるんだ。──まさかダンジョンに、ゴールがないとかいうんじゃないだろうな」
ダンジョンというのは、大前提として支配する主がいる。ダンジョンマスターというものだ。
それは魔物なのだが、ソイツを倒すことで……そのダンジョンは無力化され、消滅する。
そして、ダンジョンマスターがいるのはそのダンジョンの最深層だ。
つまり、そこがゴールってわけである。
「いいや、必ずゴールはあるわ。でも多分、道なりに進むのじゃダメなんでしょうね。……きっと見落としている道があるはずよ」
「そうか」
「探しましょう」
そう言いながら、彼女は踵を返して僕の方へ向いた。
「──」
その時だった。
「──聖剣よ!」
彼女はどうしてか、勇者専用武器《聖剣》を取り出した。何をしてるんだ急に。
と思って僕は彼女の視線の先、自分の背後を見た。
「っ!?」
そこには、大量のコウモリがいた。
魔物である。僕が見たことのない魔物だった。巨大な羽を持つ、黒羽毛に覆われた赤眼の吸血種。コウモリ。
それが、そこには数百といたのだ。
巨大なやつがそんなにいるもんだから、僕も思わず言葉を失ってしまった。
流石にこれはやばい。
自分の直感が、そう警告する。
「逃げるわよ──っ!!!」
「あ、ああ!」
そう彼女が叫んだ直後。
僕たちは元来た道へと、全速力で走り出したのだった。しかし同時に無数のコウモリが僕たちに飛びかかってきた。
流石にこれは危険な状況だった。
だからいち早く切り抜けることが、最優先──!
「っ!」
僕はダガーナイフを抜いて、走りながら飛び交かってくるコウモリを切り裂いていく。
勇者は聖剣で、同じように対応した。
「うおおおおおお!!!!!」
僕たちは逃げる。逃げる。必死に逃げた。
「逃げろおおお!!!」
「きゃぁぁぁ!!?!?!?!?」
「って、なんか道が違くないか!? 来た時と!!!」
「そ、そういうダンジョンなのぉおおおお!!!!」
「というか、魔物強くないって言ったじゃないかぁぁあああ!!!!」
「知らないわよ!! 魔物一体一体は強くないわよ!! でも、こんなに多いなんて、知らないわよおおおお!!!!!」
僕たちは一心不乱に取り敢えず逃げ続けた。そしてゲンナリしながらも、頑張って外に出るのだった。
「……はあ、はあ。疲れたわ。一生分の運動をしたかもしれない」
「同感だな、僕も」
膝に手をつき、肩で息をする。
僕たちはそのように、非常に大変な目に遭ってしまった。学校終わりの放課後に。
だというのに、僕の配信のコメントはかなりの大賑わいだった。
ーーーー
『ワロタ』
『どっちもビビりすぎじゃね?』
『おもろい!』
『もうちょっと、人手が欲しい感じ!』
『普通に命の危険を感じた。大丈夫そう』
『仲良いな、お前ら』
ーーーー
視聴者数:125000
ここまでお読み頂きありがとうございます!
ランキング駆け上がってみたいです!! 良ければ広告の下から【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると、続きを書いていく励みになるのでよろしくお願いします!!