鼓舞
地図や、おもちゃ、チート魔術を作っているうちに、一か月が経過した。
今日は待ちに待った収穫日。みんな興奮して早めに広場に集まっている。
「みんなー、今日は待ちに待った収穫日だー!頑張るぞー!」
村長が台に乗ってみんなを鼓舞していると、朝ご飯の準備が完了し、みんなが配給に並ぶ。
珍しくリーナもきて、ネンガ村はお祭り騒ぎになった。
「今日は、なにかあるのか?」
そういえば、魔術をかけたときはリーナはいなかったんだよね。
なにやら、狩りをしていたらしい。
「今日は、農作物の収穫日だよ。一気に全部収穫するから、大変なんだ。リーナも手伝ってくれる?」
「無理だ。それは、マジで無理。アタシ、多分食っちまうよ?」
「いや、リーナでもさすがに生の食材は無理でしょ?」
無理であってくれ…?あれ?リーナって雑草食っちまえって言ってたよね?
「無理じゃねぇよ?なんでも食える!食えればよし!」
暴論すぎるだろ…。適応能力高めの僕でも、さすがに無理だよ?
僕たちは、話しながら配給でシチューをもらい、ござに座る。
「あぁ、いすとか作るの忘れてたね」
「今日、収穫が終わると、一週間は、畑を休ませないといけないらしいので、その間に作ればいいと思いますよ?」
そういえば、ピーノと僕って、農業学は勉強し損ねちゃったな…
「たしかに、そうしよう!」
僕は、木を変形させて家具を作ることを決めた。
村長が、台に乗ってみんなに指示を出す。
「じゃあ、一区の家の奴らは、取り立ての畑へ、二区と三区は、小麦畑、四区と、子供たちは、稲作のところへ行ってくれ!では、収穫頑張るぞー!」
「「「「「おう!!!!!!!」」」」」
住民たちは、一斉に動き出す。
ネンガ村は住民約百人だが、村全体がとてつもなく広く、四区画に整理されている。
「ねぇ、ゾルフさん、僕たちは何区の家なの?」
ちなみに、僕はいまだに自分の家が分からない。たまにちゃんと家に帰れるが、執事長おじいちゃんに連れて帰られるのが毎日の習慣と化している。
「んな?お前子供なんだから、三区に住んでても四区だよ」
「あ、そっか。ありがとう!」
そうでした、僕は子供なんです。八歳一か月の子供でした。
「では、坊ちゃん。わしらはこれで」
「うん、頑張ってね!僕も頑張るよ!」
ピーノたちと別れた僕は、みんなの後を走ってついていった。
ねぇ、ア●クサ。収穫が簡単にできる魔術とか今作れないかな?
”風魔術の応用で行ける気がしますが?”
でも、それだと加減が面倒くさいんだよね。もっと楽なやつにしたいな。
”傲慢ですね。構築適当にやって、発動するとネンガ村の住人以外、ハゲにする魔術にしますよ?”
それ、面白そうだね。やってみようか?あの御父上がハゲになってる姿を見るとなると、笑えてくるね。
”いや、やめてくださいって。私には拒否権限がないので、マジでやっちゃいますよ?”
じゃあ、やめよう。普通に作ってほしいな。
”ちっ”
なんか言った?舌打ちしたよね?ていうか口あったんだね。
”聞き間違えですよ。では、具体的な例を交えて魔術の概要を説明してください”
そうだね…
僕たちが農地に着くころには、収穫するはずの作物はひとつ残らずなくなっていた。