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世界最強とは御冗談を!  作者: 棚橋サハラ
2/2

第2話 異世界の貧乏男

「ついに来た…!異世界!!」


最初の町リムル。


牧歌的な建築が多く、町の中心には小さな川が流れている。


川向うに見える大きな建物はおそらく冒険者ギルドだろう。


「さあさあ、安いよ安いよー!」


「ちょっとお兄さん、とれたての果物だよ!おいしそうだろ!」


たたき売りや呼び込みの声があたりから聞こえる。


どうやらここは市場らしい。


どれもこれも見たことのないものばかりだ!


「すげぇ……これが…異世界!!」


見たことない料理、とてつもなく大きな肉。


見るものすべてが新鮮で心を奪われる。


「そこの変な恰好した兄ちゃん!あんただよあんた!」


「え?あ、はい!」


そういえば日本で着ていた服のままなのか…


灰色の地味なパーカーはこの世界からは浮きまくっている。


「あんた旅の人かい?リムルの名産、リムル饅頭一つどうだい?」


元気のいいおばあさんが饅頭の箱を手に寄って来る。


饅頭か、日本にもあるが異世界の饅頭はどんな味なんだ…?


「あぁ、じゃあ一つくださ…」


ポケットに手を伸ばしてハッとした。


俺、今いくら持ってるんだろう?


ポケットの中をまさぐると小銭がいくつか出てきた。


「えっと…今俺これだけしか持ってなくて…」


おばあさんが目を丸くする。


「これだけって…あんた、こんなんで生活できるのかい…?」


どうやらかなり少ないらしい…


「あ…じゃあ、饅頭買うのはやめときます。すいません…」


「はぁ?やめとくも何も5リースぽっちじゃ饅頭なんて買えないよ!」


「え?」


いやな予感が…


「饅頭は一個50リース、うちはだいぶ安い方なんだけどねぇ…」


なんだって!?


「一個50円!!?じゃあ俺の所持金って、今……5円…!?」


ウソだろ!?今晩泊まる宿どころか、ご飯すら買えないんじゃないか!?


「150…エン……?なんかよくわからないけど、兄ちゃん金がないのかい?」


「ちょっと心配だし饅頭一個やるから元気だしな!」


おばあさんが饅頭を差し出す。


「あ…ありがとう………ございます………」


「はいよ、それじゃあね!」


ヤバイっっ!!!


饅頭じゃどうにもならない…!


どうにかして金を増やさなければ…!


今日が野宿になるだけならまだいい!


最悪飢え死ぬだろ!?


そうだ!このまんじゅうを食べれば…!


だめだ!うまいけど全然腹にたまらない…!


何か…何か……売れそうなものはないか…?


アレ…なんだこれ……?


俺はずっと右手に木の棒を握りしめていたことに気が付いた。


俺は何でこんなものを持っているんだ…?


思い出せ…思い出せ……!


そういえば、まだチート装備も魔法も貰っていないじゃないか!


何かの手違いがあったのか…?


「とりあえず爺さんに確認してみよう!」


俺はなるべく人気のないところに向かい


ハンコを空高く放り投げた。


すると空がピカッと光って、爺さんの顔が浮かび上がってきた。


「なんじゃ、もう使ってしまったのか」


「なんじゃ、じゃないですよ!俺、金も装備も魔法も何も持ってないんですけど!!このままじゃ冒険どころか野垂れ死ぬしかないんですけど!!?」


「そうはいってものぅ…ほれ、お前がハンコを押した紙じゃ、よく見てみなされ」


空からひらひらと落ちてくる紙を手にじっくりと読む。


「えーっと………転生特典:棒、5リース…棒!?5リース!!?」


「そういうことじゃ…それではな、もう会うこともなかろうて」


爺さんがすぅーっと消えていく。


「おい!ちょっと待て!ジジイ!!こんなはした金だけ持ってどうすればいいんだよ!!」


5リースを振り上げながらの必死の叫びもむなしく、爺さんは青い空へと吸い込まれていった。


残ったのは木の棒を右に、小銭を左に握りしめ茫然とたたずむ俺一人。


「これからどうすれば………」


とりあえず宿屋の値段を確認しに行こう…




市場を抜け、川にかかった橋を渡ったところに宿屋があった。


看板に宿賃が書いてるみたいだ。


「えーと、休憩300リース、1泊600リースか…だめだ全然足りない…」


どうすればいい…?


いったいどうすれば…そうだ!


ここはファンタジーの世界だ。


ならば金を稼ぐ手段なんて簡単じゃないか!!


「日本で着ていた服…!これはきっと高値で売れるに違いない!」


確か宿屋に来る途中の道に質屋があったはずだ!!


そこに持ってけば、一気に大金が手に入るはずだ!!!







「なんだぁ?その変な服は?そんなもんうちじゃ買い取らないよ」


完全に詰んだ。


こういう場合、日本の物なんかは高く売れたりするはずなんだが…


「まあ買い取るとしたら、せいぜい3リースってところだな、どうする?」


「………いえ、大丈夫…です……」


重い足取りで質屋を離れる。


完全に振出しに戻ってしまった。


金…かね………カネ…………


もう思い浮かばない、日本でもそんな簡単すぐ金を手に入れるなんて…


待てよ?ここは日本じゃない。


ファンタジーの世界だ…!


そうとなれば金を稼ぐ方法なんて一つじゃないか!


「モンスター!狩ろう!!」


俺は早速、転生特典の木の棒を握りなおし、町の外へと向かうのだった。






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