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「アイリーン様、どこか」
体調が悪いのですか、と尋ねる前に彼女はふらりと床に倒れた。
「アイリーン!!」
「アイリーン様!」
倒れたアイリーン様をすぐさま抱きかかえた殿下は、
部屋の外に控えていたお付きの方に至急医者を呼ぶように叫ぶ。
私はそんな光景を立ち尽くして見ていた。
お顔の色は真っ青で、さっきまでの健康そうな血色はすでにない。
殿下に横抱きにされた体はぐったりとし、意識はなかった。
ここまで急激に変化することなどあるのだろうか。
ましてやこんなに若い娘の彼女が。
神殿にいる医者と、宮殿に常駐している陛下専用の医者を呼びよせ、
宮殿奥の医療所まで連れていくという話がまとまり、
殿下は私と短く顔を見合わせた後、部屋を出て行った。
アイリーン様は三日ほど目を覚まさなかった。
と何度か再度訪問したレイド殿下が言付けてくれた。
なにか持病でもあるのか、近頃体調が悪くなっていなかったか。
彼に何度か確認したが、こんなことは今までなかったという。
医者にみせたが、どこも悪いところは見つからない。
毎日心配で、外にも出られず、一目でも会えない聖女という立場がこんなにも憎いと思ったのは初めてだ。
アイリーン様の様子が分かるのは、レイド様の伝達のみだった。
目が覚めてからも彼女は、どこかぼんやりとして、ベッドから起き上がることが難しいらしい。
朦朧としながら、何かをつぶやいたり、さめざめと泣いたりして、情緒不安定だと言われた。
彼も憔悴し、アイリーン様を心配しているようで、私達は二人でアイリーン様の無事を祈るしかなかった。