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アイリーン様は週に一度ぐらいの頻度で来てくれる。
その日まで私は神殿で、祈りを捧げながら、彼女を待つ。
今まで儀礼的にこなしてきた祈りも、彼女の幸福を思いながら祈った。
会えない時は手紙にして侍女に届けてもらった。
返事が待ち遠しくて、会えない日がつらいけれど、
彼女の美しい髪と、優しい笑顔を思い出しながら、過ごしていた。
近頃この国は平和そのもので、大きな天災も戦争もなく、
ぬるま湯にひたひたとつかるような幸せをかみしめている。
七度目の訪問の時に、彼女にかの婚約者レイド殿下が付き添いでやってきた。
「はじめまして聖女様。第二王子のレイドです。会えて嬉しいよ。
父上から聖女様のようすを見て来いと言われてね。ご機嫌はいかがです?」
かなりの美男子ぷりだった。
やはりあの予知に出てきた男性に間違えない。
予知で見るよりかなり金髪が美しい男性だった。
青い瞳も吸い込まれそうという表現がぴったりくる。
こんな男性と添い遂げられたなら、と思わずにはいられない、そんな姿を体現している。
確信を得た私は納得しながら、レイド王子に最敬礼をする。
「お目にかかれて嬉しゅうございます殿下。
本日は神殿までお越しいただき恐悦至極に存じます。
いつも婚約者のアイリーン様にはお目をかけていただいております」
「ごめんなさい聖女様。レイド様ったら、どうしてもついてくるって聞かなくて」
「いえ、殿下にはかねてよりお会いしたかったのです。
アイリーン様と並ぶ美男子と神殿まで噂が回っておりますから」
そんな美辞麗句も彼にとっては日常茶飯事のようで、
微笑みながら「それは驚いたなあ」と流しただけだった。
アイリーン様は少しそわそわしている。
何より顔色がすぐれない。レイド王子と並ぶ彼女は女神のように美しいのに、
笑顔が堅かった。
まるで何かに脅えているような…。