第二話 『着水』
ーーーーお、落ちぁぁぁぁ!!??
空気抵抗を全身に、満遍なく浴びらという経験はそうそう無いであろう。まさに、全身の臓器が腸内を目まぐるしく回る。そんな感じであった。
「おぇ…ちょっ、くっ、どーすりゃいいんだよ!?」
このままでは頭から着陸し、地面に壮大な花を咲かせる未来しか見えない。
かと言って、この現状を打破出来るような考えも力も何もない。
つまり、このまま落下しながら状況を見ているほか無いのだ。
地面まで残り四百メートルを切っただろうか、そろそろこの土地の様子が少しずつわかってきた。
「ーーー!!あれは!?」
回転しながらの嘔吐感に耐えながら必死でその眼が捉えたものはかなり大きな池であろうか、泉であろうか。
「よし、とにかくあそこまでどうにかしてたどり着くしかねえ。ゲームとかだと空中を平泳ぎって話なんだが、そう簡単なわきゃねぇよなぁ」
空中での移動の仕方などスカイダイバーでもなければ知るまい。ましてや、ゲームの中だけの知識を振る舞ってもそれが現実で活かせるかと言ったら限りなく無に等しいであろう。
「勝算は…ねぇ!でも、やるっきゃねぇんだ。おっ、ほっ」
体をピンと伸ばし、一つの棒になったようにする。そうすると空中での移動が少しだが、出来る。どこかで仕入れたその知識が役に立った。少しずつ落下しながら水の中心地へと向かっている。
必死で『生』にしがみ付こうとする。それが今のレンの原動力であった。
ーーーそろそろ安全圏に入ったであろうか。自分は今、水辺の中心を捉えた位置にいる。残り百メートル近いだろうか、そろそろだ。と覚悟を決める。
いや。待て。このままではまずい。
何か、何かある気がする。この胸のざわつきようは何だ。
時間が無い。考える暇もない。目前で着水ーーー。
「まずい!!この高さからだとこの水はコンクりーーーーー」
大きな音を立てて、落下。レンは水の底で空気を全て吐き出した。