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十二時四十五分
外輪山の山頂に到着した。
三人の視界に太平洋が広がる。
「ああ、やっぱり波が荒れているな――」
肩で息をしながら黒川先生が言った。
「これではどうにもならない。やっぱり港を後回しにして正解だった。この波で舟を出すのは自殺行為だ」
ほとんど独り言に近かった。
美千代が鈍色の空を見つめる。どこまでも哀しい色が続いていた。それはまるで雲という雲にすっぽりと閉じ込められた気がして、なんだか息苦しくさせるのだった。荒れた波は針のむしろで、これで槍のような雨でも降れば、完全に行き場を失うのではないかとさえ思われた。




