十二時三十分
ここで崖を超えて港へ向かう道と、そのまま南側の洞穴に向かう道に別れる。まずは港の土門さんに事情を説明するため、美千代たちは港への道を選択するのだった。
島の交通の中でも、とりわけこの崖越えの道が難儀である。崖にわずかばかりの足場が階段状になっているが、そこをスイッチバックの要領でジグザグに折り返して山頂へと向かうからである。ちなみに、これは首山の山頂へ向かう道も同じ要領であることは前にもいった。
なるべく急な登り道にならないようにしてあるせいか、それほど標高の高くない外輪山でも直線で山を登ることができないため、山頂に辿り着くまでに十五分は掛かってしまう。これは山頂から港へ下りる道も同程度であった。
美千代は前を行く黒川先生に歩調を合わせていた。一人だけならさっさと登り切り、一気に駆け下りたいところだが、思えば、それが若さなのかもしれないな、などと美千代は考えるのだった。
そんな私でも、いつか走りたい気持ちが失せてしまう時がやって来るのだろうか。衝動で頭よりも先に足が勝手に踏み出してしまうが、そんな衝動すらなくなってしまう時が来るのだろうか。そんなことを考えながら、山のてっぺんを目指した。