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島狩り
金田一先生は人を殺すような人ではありません、とは言い切れない美千代だった。先生が牢獄へ入れられた時、どうしてもその言葉が口から出てこなかったのである。
いや、正確にいうと、台詞は思い浮かんだが思い留まったのだ。先生が殺したという証拠がないということは、先生が殺していないという証拠もないわけで、先生には申し訳ないが、大体きっちり五分五分だな、と美千代は考えているのだった。
あの清という男に詰め寄られた時の金田一先生は、明らかに動揺していたように見えたし、挙動不審という言葉そのものだった。
紫乃さんや黒川先生など島の人は金田一先生を疑っていないが、それはどうかと思う。おそらく金田一先生は島に来たばかりだから動機がないと考えているのだろう。
しかし動機など先生の場合、歪んだ性の衝動でもなんでもあるではないか。人の動機なんて、そんなものは他人に分かりっこないのだ。安心はできないな。信頼はしているけど、まるっきり信用しているわけじゃない。そんなことを美千代は、屋敷を出発して、歩きながら考えていたのだった。