予想外の能力
「「「「は?」」」」
という四重鉤括弧?とともに、僕と全く同じ台詞をとある教室にいる僕と宮内さん以外の全員が言う。
「というわけですのだー!」
「「「「いや、え?」」」」
合唱コンクールでいい線いくくらいの見事なハモった声だった。
僕らは今、机を囲んで椅子を並べてお互いに向かい合っている。
現在生存中の六名、もうもはや絶望的でもあるが、僕、宮内さん、愛沢さん、牛飼さん、坂名井さん、小鍋さんと、まだ紹介の住んでない面々が半分以上もいるので分かりづらいこと申し訳ないが僕以外全員女子である。
なんかこう、あまり言っていい台詞ではないが、男子もうちょっと頑張れよ。という気分だ。
僕がクラスの中でも絶対に死なないだろうと思っていた、相宮と言う人がいるのだが、残念ながらもうここにはいない。
もちろん、恋人である愛沢さんを守っての落命といういかにもなエピソードがあったとかではない。というか敵陣真っ先に向かわせたのがその相宮である。
うん。これ僕のせいだわ。
生死に関わっていたらこんな冗談は通じないので、気を引き締める。それでも、本番だったら死んでたぞと深く後悔している時間はない。なにせ六人である。薄情過ぎると思われるかもしれないが、すでに起こったことだ。僕はその辺を割り切れる。
まあ、流石に他の人はそうなればいいなんて思うことは微塵もないので、僕の誠心誠意を持って愛沢さんに謝った。別段許して貰いたいとは思っていないが愛沢さんからは、絶対に負けるなとの言葉を頂いた。もちろん負けるつもりなどさらさらない。
一応一通り僕のあった出来事は話したが、イレギュラーが多過ぎて、一行目の通りとなっている。いやはや、人生とは何が起こるかわからないものだ。
「はい!私馬鹿だからわかりません!もっとわかりやすくお願いします!路木先生!」
と、宮内生徒。
いや、君は一緒にいたでしょ。
まあそれでも共有する情報に違いがあったら困る。僕はチョークで黒板に字を書きながら説明し始める。
「あ、私やるよ」
と、またまた同じ会話をした、坂名井さんにありがとう、と言いチョークを渡す。
ああ、そうそう、それが彼女だ。さっきも僕らの教室で書いてくれた子、それが坂名井さんである。なにかと礼儀正しく、優しい性格をしている。
「では」
もう何度目になるかわからないがとにかくみんなに説明を始める。
「今把握して欲しいのは四つの物の位置とそれに関しての知識だ。四つの物は、当然、僕らと敵が狙う宝箱、それに相手の宝箱の位置が書いてある地図も一つずつ。
これらを説明する」
「その一。僕らの地図」
「敵の宝箱の初期位置を示す。これが僕らの手にあったら敵は自分たちの探すべき宝がどこにあるかわからない。僕たちはその宝箱の場所を把握して、場所をずらす事ができる。運が良ければ戦わなくて済む。逆に持っていなかったら、敵が持っていたら、敵に宝箱が伝わる。けれど、最初に僕たちの記憶には残っているから僕たちは相手の探す宝箱に先につける。そして、来た敵戦う」
結局のところ被害は甚大だが。
「これは敵に奪われた。全ては僕の責任だ。本当にごめん」
「別にいいわ。次お願い」
と言ったのは牛飼さん。淡白な生格で、結構みんなに対して冷たい。参加組である以上悪い人ではないとは思うけど…。
おっと、脱線した。
「その二。敵の地図」
「ほぼ同じ。ただし、僕たちはまだ誰一人として、その地図を手に入れてない。つまり相手にとってはまだ僕らはどこに宝箱があるかわからない状況だと思っているはずだ。後、僕たちが僕たちの地図を取り返そうと、敵の地図を奪おうと、メリットはあんまりない。結局今の敵の宝の位置がわからないからね」
「でも、私が見つけたよーん?」
「それはおいおい話す」
時間は無限じゃないので、無駄な話に持っていかない事が大切だ。ミスマイペースに惑わされてはいけない。
「その三。僕たちの宝/敵が狙う宝」
「わかりづらいから敵が狙う方は『僕たちの宝』。僕たちが狙う方は『敵の宝』とする」
「僕たちの宝は僕たちの持っている地図によって場所は把握されている。もう相手の手の中にあると思っていい」
「その四。敵の宝」
「とまあここで、引き分けを狙うなら僕らの宝を取り戻すか、敵の隠した宝の場所を見つけるかのどちらかにしようとこうして意見を聞くために来たのだけれど…」
「ここにいる宮内さんが敵の宝を見つけたという事だ」
もう一度、噛み砕いて説明した。
もっとわかりやすくなるよう、坂名井さんは、黒板にまとめて書いてくれた。
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《現在の状況》
〈こちら〉
・持っているもの…敵の宝
・持っていないもの…こちらの宝、
こちらの地図、敵の地図
※敵の宝の初期位置不明
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〈敵〉
・持っているもの(推定)…こちらの
宝、こちらの地図、自分たちの地図
・持っていないもの(確定)…自分たち
の宝
※こちらの宝の初期位置を知っている
こちらが自分たちの宝を持っている
事に気づいていない。(推定)
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《目標》
・その一…こちらの宝を取り返す
・その二…敵の宝を奪う(宮内さんが発
見したため却下)
※こちらの地図、敵の地図はとっても
現状ほとんど意味なし。
仮にとったとき、こちらが知れるのは敵の宝の初期位置
○○○○○○○○○○○○○○○○○○
おお、かなりわかりやすくなった。
宮内も、手をポンとうっていた。
「だから、今話し合いたいのは、ここをでて攻めるか、引き分けを狙って宝を守るかだ。どっちでも戦うのは間違いないけれどね」
「だったら早めに全員で散って逃げればいいんじゃないですか?」
今まで話を聞いていた小鍋さんがそう言う。
そう。そこまでは僕も全くそれが正論だと思っている。だからより詳しくすると、宝を守るためにここを動くか、籠城するかという話だ。
今この教室はとある細工が施されていてそっとやちょっとじゃ見つからないようになっている。それでも、見つけようと思えば絶対に見つけられないという保証はない。
外にはまださっき襲って来た奴らが居るかもしれないが、一つの部屋に大勢が集まるリスクを身をもって体験しているため、どちらに行っても大きな違いはないと思う。
だからこそ、宝を見つけたからこそ迷っているのだ。
その理由も二つあって、一つはこんなにあっさり見つかったから罠の可能性が高いという事。あの少年も敵の宝は自分達の本拠地にあると言っていたのにここにある理由はなんだ?嘘をつく必要はないはずなのだが…。
そして二つ目。
「じゃあ問題はこれよね。これの使い方によるっていうか…」
愛沢さんが手に持った敵の宝。
てっきり僕はただ変哲のない何かの物だと思っていたが、違った。
小さな筒状の物で、ボタンが付いており、使用方法の書いた紙も中に入っていた。
曰く、この宝物、どうやら物体だろうと生物であろうと好きな場所に飛ばす事ができるらしかった。