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朝起きたら、宇宙征服者の姫になってた!  作者: 七月 夏喜
第6話 征服者より愛を込めて
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その3


 隕石は確実に、地球への衝突軌道を辿っている。リューク艦隊は迎撃のために次々と地球から離れ、火星へ集結し始めた。観察艦からの知らせは、地球に残ったカオスに伝えられる。昼間の学校で休憩時間にそれを聞いた男は絶句しかなかった。態度の変化に早紀はいち早く察する。


「一ノ瀬君、璃緒の身に何かあったの?」


「早紀さん……」


 璃緒が『オメガ・テン』で負傷し、地球を離れている間は、実に十日間にも及んでいた。その間カオスは百瀬家に居候になりながら、璃緒たちの連絡を待っていたのだった。無論、百瀬家の心配を減らす目的でもある。

 璃緒が『オメガ・テン』で倒れた後のクルスとの対峙にて、自己の気持ちを押さえきれなかったことを悔いもし、奇妙に感じていた。


「安心して下さい。姫を心配することは、何もありません」


 笑みをカオスは浮かべる。だが元来、そんなことをする種族ではない。不格好な引き吊った笑いにしかならなかったのが現状だった。勘の良い早紀には、あからさまに判別出来る。


「一ノ瀬君、もう何があっても驚かないから」


 カオスは、彼女がいたからこそ、あの時正気に戻ったと考えている。百瀬璃緒の片腕とも言える存在なのだ。


「もし僕が力を解放し、増大させていれば、きっと早紀さんはおろか、地球人類の全てを傷つけていたかも知れない……」


 彼女はスリッパで頭を叩くことで男を正気に戻し、その窮地を脱したのだった。


「『オメガ・テン』が彼女に効かなかったのも幸いだった」


「ねえ、一ノ瀬君。どうなの?」


 目前の早紀に作り笑いを崩したカオスは、少し躊躇する。



 突然、教室に関口が血相を変えて走り込んだ。


「おい、一ノ瀬!」


「関口君、ようやくですか」


 カオスに駆け寄るや否や、男は胸ぐらを掴み締め上げる。


「ちょっと、関口! 乱暴はやめて!」


 早紀は怒鳴って彼の腕を押さえた。


「どうなっているんだ。百瀬は大丈夫なのか?」


「関口君、姫なら心配無用です。先ほど連絡を受けました。お元気でこちらに、向かっているようです」


 関口はカオスの返事に幾分か興奮を沈めた。ゆっくり掴んだ手を緩めて放す。


「向かってる? あいつはリュークとかの戦艦の中じゃないのか」


「経緯はわかりませんが、そこから離れて、別の惑星に行ったみたいですね」


「はあ?」


 宇宙を知るカオスは冷静だが、関口や早紀には夢と想像の世界だった。カオスとの間には大きな隔たりがある。


「その惑星は、姫にとって大変重要な場所だったみたいです」


「宇宙旅行していたのか」


 地球離れした会話に気が遠のく関口は、ついふざけてしまう。


「そこで姫は覚醒したようです」


「覚醒。それって我をも忘れる変化するやつか。そして地球を征服が始まるとか言う……」


「クルスの言っていることなど、リオン姫には当てはまりません」


 冷血な眼でカオスは断言した。


「そうだな、あいつは規格外だ」


 それを聞いて関口は胸を撫で下ろす。


「関口君、そんな事を言いに来のではないのでしょう」


 小躍りする男をカオスは窘めた。


「君がどのくらい話を聞いているのか知りませんが、今までとは比べものにならない事態に陥っています」


「ああ。さっき体育館の隅で、クルスがパソコン叩いて怒っていた」


 訝しげにカオスは顔を歪める。


「どんでもないことを、してくれたって」


「とんでもないことって?」


 男は頭を振って手のひらを天井に向ける。


「僕は地球の危機に関することで、姫が帰ってくると言う情報を持っています」


「俺のは、クルスの仲間がこの地球に向けて、何か仕組んだらしいってこと」




「共通する事は『地球』。つまりこの地球に何かが迫っているって、ことでしょ」


 二人を割り入って早紀が口を挟んだ。


「璃緒の地球がね。だから急いで帰ってきてる」


 早紀は和やかに頷く。


「そのようです。……リュークからの通信でしたけど」


 そこだけ忌々しくカオスは答えた。



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