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短編集

もしも、魔法が使えたら。

作者: 三原すず

もしも、魔法が使えたら。


そんなことを最近よく考えてしまう。

仕事でのストレスのせいかもしれないし、ニュースが殺人事件とかテロとか悪いものばかりになってきているからかもしれない。

だからか、もう何年かしたら二十代も終わりを迎えるのに幼い子供みたく考えてしまう。

もしかしたら叶わなかった夢に焦がれて、何かに縋りたいからかもしれない。

こんなとき魔法が使えたら、とか。今魔法が使えれば、とかありもしないことを考えてしまうのだ。

平凡な自分に特別な何かを、求めているのかもしれない。

「ねえねえ、その魔法ってなんでもいいの?」

「ん、そうだね、すごいって思うようなことならね」

「じゃあ、お酒!ビールにカクテル、焼酎にワイン!!」

・・・・・?

お酒の何が、すごいのだろう?

「どこがすごいの?」

「お酒ってさ、どんなときでもあったりするじゃん?お祝いの席もお別れの席もヤケ酒だって、するじゃん?飲むだけいい気分になれて、誰かと仲良くなれるかもしれない。それってすごくない?」

「へー、…よく思いついたね」

「でしょー?」

大学時代からの友人がご機嫌に笑む。

彼女はお酒が大好きだ。だからこそ、その思考がここにたどり着いたんだろう。

お酒か……。確かに魔法のみたいな存在だ。

ただ、使用上の注意は必要かもしれない。

飲みすぎたら依存症だったり病気だったり、厄介なものを背負うことになってしまうだろう。

「魔法万歳ー!…ってことでもういっぱいー」

「ちょ、それ以上飲んだら絶対明日二日酔いなるよ?」

「いーじゃん明日は休みだし。宅飲みしよーって高めのビールもあんたの好きなカクテルも買って突撃したのにあんた生理だからムリとか言うんだもーん。飲まなきゃやっていけませんー」

「だって今飲んだら不味く感じるんだよー」

「わかるけどさー私はまだまだ飲みたいのー。あ、つまみでも作ってよ」

「むー、しょーがないなあ」

よいしょっと立ち上がり、キッチンに向かう。

きっと泊まってくんだろうな、彼女。明日は二日酔いだろうから、スッキリする緑茶でも帰りに持たせるか。

春先とはいえまだ寒いだろうから、ホットにしてあげよう。

予備の魔法瓶を取り出した私はハッと気づいた。

魔法瓶。魔法の、瓶。

「ここにも、魔法だ…」

呆然と思わず呟いてしまう。

案外近いところにあったじゃない。正真正銘、「魔法」って名前がついているよ。

魔法、使えるよ。

そんな風に慰めるように言われた気がして、私は嬉しくて泣きそうになりながら人知れず笑みを浮かべた。


fin.


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[一言] ちょっと仕事で疲れてたので 癒されました。
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