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隣村へ

 代官の娘は最初激しく抵抗していたがやがて俺に身を任せた。いかに誇り高くても所詮は生娘だったということか。

 事を済ませると俺達は一緒になって寝た。娘は怯えて泣きはらした目で天井を眺めていた。気晴らしに幾つか質問してみたくなった。

「そういえばお前なんていう名前なんだ。ついでに父親は?」

 一向に反応がなかったので立ち上がって殴ろうとする。すると慌てて娘は口を開いた。

「話すからやめて。殴らないで」

 哀願の口調が俺の征服欲を満足させた。

「私の名前はエラ・アンベラー。父親はルカス・アンベラー」

「なるほどなエラ。お前を俺の愛人にしてやる」

 エラは身体ごと顔を俺からそむける。

「勝手に犯しておいて愛人にしてやるって随分都合がいいのね」

「愛人になって損はないぞ。俺は天下を取る男だ」

「馬鹿じゃないの。オークをまとめ上げただけで天下が取れるわけがない」

「燕や雀にどうして鴻や鵠の考えていることが分かるだろうか」

 エラはぽかんとしていた。異世界の住民にはこの言葉が分かるわけはないか。


 翌朝一番に代官のルカスを呼び出して用を告げる。 

「一緒に隣の村まで行くぞ」

 代官はおどおどしながらも口答えをし始める。

「しかし訪れる用事がない」

「適当な口実を道中で考えればいいだろ。逃げたら家族を殺す」

 突き放すように俺が言うと代官は落胆のあまり肩を落としていた。俺は彼の監視役としてブザビをつけた。良く言えば勇猛果敢、悪く言えば粗雑なオークだ。

 代官は馬で、俺達二人は徒歩で歩いて行く。馬の手綱ブザビに握らせ、逃亡を防ぐ。

 村の入り口には刀を差した人間がいた。この村の役人だろう。彼はこちらの事情も知らないで声を掛けてきた。

「これは隣村の代官アンベラー様ではありませんか。何の御用ですか」

「情報交換がしたくてね。最近収穫が少ないだろう。困っていてね」

 小役人が頷く。意外と機転が利くがじゃないか、代官。俺は心の中で笑っていた。

「ではそちらの方とオークは?」

「ああ、人間の方は私の部下だよ。こちらの村のオークの生活を視察したいというのだが構わないかな。オークは私の従者だ」

 こころなしか代官の声は震えて聞こえた。緊張や仲間を裏切っている背徳感のあまりかもしれない。小屋くんは不思議そうな顔をしたが、結局こう言った。

「私の一存では決めかねます。代官様に取り次がないと」

 隣村の代官と直接面会できたのは俺とルカスだけだった。オークが代官の部屋に入って会うのは無礼だというのだ。

 早速、訪問のルカスが説明を始める。不審な様子に気づいたのか隣村の代官は顎に手を当てて少し考えこみ始める。

 まずいな計画が狂うと思い始めた矢先に隣村の代官はやっと口を開いた。

「なんのためにそんなことをするのかよく分からんがまあかまわんよ」

 俺はほっと安堵した。ルカスの顔にも安心が見れる。ここまで来たら運命共同体だと彼も理解しているのだろう。

「それにしても従者にオークを使うとは。いくら俺達が木っ端役人でも惨めすぎないかね」

 隣村の代官が自嘲気味に笑った。俺は激しい怒りを抱いた。この男をどうしてやろうか。

 さっき言ったようにブザビが部屋の中では同行できなかった。なので俺は部屋の中で代官達の適当な会話を聞き流した。ルカスを監視するためだ。

 退屈な時間の後にやっとお楽しみがやってきた。

 俺が計画を明かすとオークたちは一様に戸惑っていた。俺はやや飽きを感じながらも早速恒例の復活パフォーマンスをぶちかます。そして驚いたオークたちに長老からの手紙を渡した。

 長老は隣村のオークにだいぶ信頼感を得ていたらしい。話は驚くほど簡単にまとまった。

 今夜、彼らが内応しつつわれわれが隣村を襲う。計画の骨子はこれだけだが最初の時に比べればこちらの兵力は二倍近い。俺は勝利を確信した。

ライフポイント残り9994

 

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