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君影草  作者: 惠美子
第十二章 緑の大地
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 南部軍団にやっと帰ってきた。(プレヤデン)の屋敷の管理を再びディナスに預けての短い旅路。ここを演習の為に出発したのは初夏だったが、実際の戦闘を経て、今は秋だ。たった数ヶ月の不在。門も厩舎も兵舎も手が加えられておらず、何ら変わっていないはず。だが景色が違って見える。

 玄関口でホップ伍長からの出迎えを受けた。

「ご苦労」

「お待ちしておりました」

 これ以上の会話は必要なかった。戦場で苦楽を共にしてきた部下。俺が不在の間のどれほどの始末があったのだろう。敬礼の手を下ろし、俺はホップの肩を叩いた。

 まずはシュテヒリング中将に帰参の挨拶をしなくてはならない。ホップ伍長に尋ねてみると、面会時間の確認をしてあり、すぐに行っても大丈夫だとの答えが返ってきた。

「有難う。ではすぐに軍団長の部屋に行くとしよう」

「はい、中尉」

 勝手知ったる南部軍団の建物を進み、シュテヒリング中将の護衛の詰め所に声を掛けた。取り次ぎがスムーズに行き、俺はシュテヒリング中将の部屋に通された。

「フォン・アレティン、拝命を受けまして南部軍団に帰参いたしました」

「アレティン中尉、(プレヤデン)から帰参、ご苦労。元の部隊への配属だな。しばらくはそこで立て直しに尽力するよう」

「はい」

 シュテヒリング中将はやつれたようだ。上層部は上層部の、尉官は尉官の、兵卒は兵卒の苦労と言い分がある。中将は実戦指揮をしなかったが、陣を整えての退却や兵の統御など心労が激しかっただろう。負傷兵として荷車に乗せられていた俺とは違う。

「プロイセンの将軍や佐官がこれから赴任してくるだろうが、協力するように努めてくれ」

「はい」

「貴官はランゲンザルツァで善戦して、プロイセンのフリース少将に名前を覚えられているらしい。かつての敵であっても、あちら側に認められているなら重畳だ。勇戦した部下がいると思えば、私も誇らしい」

 ここでもフリース少将が出てくるのか。

「勇戦したのは戦死したシュミットです。自分は負傷しました」

「謙遜はしなくてよろしい。これから職務に励むように」

 長居は無用というものらしい。

「はい」

 敬礼して、部屋を出た。待機していたホップ伍長を促し、リース大佐の許に向かった。

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