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Prequel

こんにちわ! 柏原ゆらです。

今回は、初めて男子目線から書きたいと思います。

二部完結です! 是非、最後までお付き合いください ゜*。:(人´v`*)

「……好きですっ、付き合ってください!」


 雪が降り始めた、とある冬の日。俺 木崎琉真(きざきりゅうま)は、何度目になるかわからない告白をされていた。相手は、茶色に染めた髪を二つに束ねていてスカートを短く切っているいかにも女子って感じの人。でも、名前がわからない。何組なのかもわからない。同じ学年かすらわからない。何も知らない相手に告白された。そんな事はしょっちゅうという程でもないがある。そんな時の俺の返事は、いつも決まっていた。


「……ごめん」


 そう言うと、女子生徒は「そうですか……」と俯いた。暫く沈黙が流れた後、「でも」と顔を上げ、


「伝えられてよかったです。ありがとうございました」


 そう言って、走り去っていった。その後ろ姿を見ていると、女子生徒は右手の甲で目の辺りを擦る仕草をした。あれは、涙を拭っているのだろうか。胸がチクリと痛む。また、悪い事をしてしまったと思った。でも、俺には断らざるを得ない理由があるのだ。

 俺はあいつが待っている昇降口へ足を進めた。昇降口近くまで行くと、あいつは長い髪を揺らしてこっちに振り向く。俺はそいつに「待たせてごめん」と謝罪した。「大丈夫だよ」という言葉を聞いて、俺達は並んで歩みだした。

 俺が告白してくる奴らを断る理由、それは俺にカノジョがいるからだ。

 隣にいるこいつこそが俺のカノジョ 春宮咲(はるみやさく)。ただ、本当にカノジョと言っていいのか俺は気になっていた。


「……木崎君、また告白されたんだね」


 春宮は控えめに口を開く。俺は「あぁ……」と控えめに答えた。


「見たよ、告白されているとこ。やっぱり人気者だね」

「そんな事ねぇよ」


 この会話も何度目だろうか。俺が告白される度に春宮はこの話をしようとする。べつに嫌ではないが、そんなにされると俺が悪い事したみたいで嫌だ。いつもはここで会話が終わるのだが、何故か今日はいつも以上に気まずかった。なので、俺はぎこちなく口を開いた。


「……春宮さんは、告白されねぇの?」

「……されないよ。私は木崎君みたいに人気者じゃないし」

「……そうか」


 会話が止まる。春宮の言葉を聞く限り、嫌味を言ってるような気がしてきた。もう、この話はダメだ。

 会話は止まったが足はどんどん進む。これは、いつもだ。何でこんなにギクシャクしているのに、俺達は付き合ったんだっけ。

 時は三年前。中学二年の頃から俺達は付き合い始めたんだ。とある日の放課後、春宮は俺の目の前に来て言ったんだ。


『……私……木崎君の事が好きです。付き合ってください……っ』


 春宮は顔を赤らめて言った。しかも、下校していない人が数人いる教室で。春宮の言葉を聞いたクラスメート達は一瞬静止し、その後盛り上げ始めた。俺は硬直する。顔を赤くし俯く春宮をよそに、クラスメート達は『OK』コールをしだした。そのコールは勿論俺に向けられたもので。俺はその流れ的に、


『……はい』


 と言ってしまったのだ。その時の俺は、春宮の事をまだよく知らなかった。春宮は大人しく目立たないほうだし、俺もいちいちクラスメート全員の顔と名前を把握するなどというめんどくさい事はしなかったからだ。間違いだったとも言える俺の言葉を聞いたクラスメート達は、ヒューヒューと冷やかし始めた。その日から、俺達は付き合う事になったのだ。

 そうとは言っても、付き合って三年の俺達はまだ、「木崎君」「春宮さん」という恋人同士とは思えない呼び方だし、会話は少ないし、手を繋いだ事はないし。べつに繋ぎたい訳ではないが、これでいいのかと思ってきた。でも、春宮がそれを望んでる気配はないので、その件は放棄した。こうしているうちに、時はどんどん進んでいく。だから、俺達の距離は付き合い始めた二年前と変わっていないのだ。

 っていうか、俺はそもそも女という生き物が苦手だ。母親は俺が小さい頃病気でこの世を去ったし、兄弟姉妹は弟だけだし。そんな俺に、唯一よく話す女友達がいた。

 俺が学校の図書室で本を探している時、


「りゅーまっ」


 その女友達は、俺の名を口にし背中を軽く叩いた。


「……香苗」

「何探してるのー?」


 女友達 小田切香苗(おだぎりかなえ)は、俺が手にしている本を覗き込む。その本を見て、香苗は口を開いた。


「これっ、桜瀬(さくらせ)よもぎさんの本じゃん!」


『桜瀬よもぎ』この小説家は、俺と香苗の共通の趣味の素となっている。俺が桜瀬よもぎの本を読んでいた時、香苗が「それ、面白いよね」と話しかけてきたのが始まりだ。桜瀬よもぎとは、有名なミステリー作家だ。有名とは言っても、俺達の年代では知っている奴は少ない。そんな少ない中の、唯一知っている奴が香苗だった。香苗が話しかけてきてから、俺達はその話題で仲良くなった。話し始めてから今までの四年間、俺達は別の話もするようになり、香苗は俺の中での一番の『女友達』となったのだ。勿論香苗とは春宮より仲がいいのだが、どうして俺は香苗ではなく、春宮と付き合っているのか。香苗が俺の事を好きじゃないというのが一番の理由だろうが、俺も香苗の事が好きではないのもあるだろう。べつに嫌いではないが。そう考えると、俺は春宮の事も好きではない気がする。そもそも、春宮は俺のタイプではない。髪は短いほうがいいし、身長も低めがいい。頭はそんなに良くなくていいし、胸は大きいほうが好きだ。そう考えると、春宮は何一つあてはまっていない。春宮より、香苗のほうがあてはまっているのだ。


「また読んでるの?」

「あぁ。まだ全部は読んでないからな」

「へぇ、そうなんだ~」


 香苗はこう見えて意外と読書家だ。桜瀬よもぎの本は全て読んだと聞いている。


「あっ、そういえばさぁ。桜瀬よもぎさんの新作、来週出るんだってね!」

「そうなのか?」

「うんっ。琉真も買うでしょ?」

「勿論。当日にな」


 香苗は「私もっ」と笑み、どこかへ走り去った。

 その日の放課後、俺はとある女子生徒に呼び出された。だいたい理由はわかっているが、断るのはなんか失礼なので俺はその女子生徒のもとへ行った。

 漆黒で艶のある長い髪を高い位置でひとつに束ね、黒の眼鏡をしている人。やはり、誰だかわからない。その女子生徒はもじもじしながら俯いていた。暫くそのままで、春宮を待たせている俺的にはもうそろそろ帰りたかったその時、女子生徒は口を開いた。


「……私と、付き合ってくれませんか?」


 予想どおり。いつも同じ言葉に、俺はいつも同じ言葉で返す。


「……ごめん。カノジョいるんで」

「……わかりました。では」


 その女子生徒は、踵を返す。俺はひとつため息をついて、足を一歩踏み入れたその時、


「また告白されたんだね、琉真」

「香苗……?」


 目の前から香苗が現れた。香苗も見ていたのか。俺は少し戸惑いながら「まぁ……」と応えた。


「やっぱり琉真はモテモテだね~」

「いや、そんな事は……」


 香苗の言い方は、春宮と違って嫌味な感じはしなかった。


「……でも、皆が琉真の事好きになる気持ちわかるな~」

「え?」

「優しいし、話しやすいし、格好いいし」


『優しい』と『格好いい』はおいといて、俺はそんなに女子と喋った覚えはないのだが……。


「……そんな琉真が、私も好きだな~」


 香苗が笑顔で俺に言う。その笑顔につい見入ってしまい、ふと我に返った時は、香苗は俺をジーッと見つめていた。


「告白だよ?」

「……え?」

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