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賢者様を待っている世界で  作者: 三條聡
第2章 テグネール村 2
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アーベルの日記 2

1日お休みいたします。

次回からはオリアンの町編です。

色の月 1番目の火の日


 朝、エルナはぐっすり寝ていた。昨日は、僕のために料理を用意してくれた。その上、僕のプレゼントに「プリン」とか言うお菓子を作ってくれたのだ。産まれて初めて食べたものだけど、この世のものとは思えないくらい美味しかった。

 今日食べたエルナの料理は、どれもこれも美味しくて、今までどんな物を食べていたのか、思い出せないくらいだ。でも、今日一番に、驚いたのはパンだった。ちょっと指で押しただけで、穴が空いてしまった。少し甘くて柔らかいパンを何個食べたのか覚えていないくらいだ。そして、イーダ叔母さんからもらった肉は、エルナの料理によって、柔らかくて美味しいソースのかかったステーキに変身した。


 エルナは本当に何でもできるし、何でも知っているんじゃないかと思う。牛が脱走した時も、どこにでもあるような草を柵の外に植えるといいって言っていたし、ゴミだったヒツジの毛で『マットレス』というもの作ってしまった。


 エルナはどこから来たのかな、どうして《禁忌の森》なんかにいたのかな?

 どこかにエルナがいなくなって、死ぬ程心配をしている人がいるんだと思うと、早くエルナの帰る家が見つかればいいと思うけど、エルナがいなくなるのは寂しいと思う。

 まだ3日もたっていないのに。


色の月 1番目の風の日


 夜になってエルナが兄さんと一緒にニルスの家に行った。そして、エルナが青い顔をして戻って来た。熱は無いし、気持ち悪くもないと言う。何かショックなことがあったみたいで、兄さんはエッバ婆さんの護符を見てからおかしくなったって言う。

 みんなでプリンを食べ終わる頃には、エルナも落ち着いてきたみたいで、顔色も戻っていた。何があったのか聞きたかったけど、なんだか怖くて聞けなかった。もしかして、何かを思い出したのかもしれない。


 今、エルナは僕がこの日記を書いている近くで眠っている。


 今日は、イーダ叔母さんとパン屋のマッツさんとブリッド、そしてブレンダが来た。僕はなるべくブレンダと顔を合わせないようにしていた。人の顔を見るなり、剣で試合をしようと言うんだ。きっと、僕に勝てないのが悔しいんだと思うけど、手を抜いて負けても凄く怒る。本当に面倒なんだよね。ブリッドとブレンダを見ていると、産まれた家を間違えたんじゃないかと思う。ブレンダにはダニエルという弟、ブリッドにはオーサという妹。そう考えるとぴったりくる。ついでにイーダ叔母さんはブレンダとダニエルの母親って言うほうが、さらにしっくりする。エルナにそう言うと、笑っていた。

 ブレンダとは顔を合わせずに済ん、本当によかった。


 急に兄さんが明後日オリアンにみんなで行くと言い出した。エルナの不足している日用品を買うのだと思う。だから、仕事が終わったらご用聞きにまわった。普段は、町に行く人の話しが伝わって来て、頼みたいことのある人が頼みに行くのが普通なんだけど、あまりに突然なので、皆に伝わる前に俺達は出発するどころか、帰って来てしまってるだろう。ここしばらくオリアンに行った村人がいないから、結構頼まれるだろうな……って思っていたらやっぱりだ。今日だけで23人にお使いを頼まれた。


 今日もエルナの料理に驚かされた。なんと肉を包丁で叩いて細かくして、パンをこなごなにしたものと、みじん切りのオニオンをまぜて丸くして焼いたものだった。エルナは『ハンバーグ』って言っていた。柔らかいお肉は、前の日に食べたステーキで経験したと思ったけど、今日のは全く違う柔らかさだった。


 心配なのは、オリアンの宿屋で出されるご飯が食べれるかなってこと。

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