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賢者様を待っている世界で  作者: 三條聡
第1章 テグネール村 1
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アーベルの日記 1

父さんと兄さんからもらったこの冊子を大切に使おうと思う。僕はこれから行商人のヴィルマルさんから教えてもらった『日記』を記していこうと思う。決して安くない紙が無駄になるのか、そうでないのか解らないけど、でも、無駄にならないような気がする。


豆の月 5番目の闇の日


今日はびっくりするようなことが起こった。この日記を書き始めて最も驚いたことだ。ヒツジたちを小屋に誘導し、扉を閉じた時に兄さんが《禁忌の森》が騒がしいと言い出した。僕には、何が聞こえるわけでもないんだけど。

まだ少し明るかったから、僕は兄さんと修理しかけの壁をよじ上って《禁忌の森》に入った。

いつもの薄暗く陰気な森。兄さんは、どこに向かっているのか解っているように歩くが、僕はただ着いて歩いていた。

すると突然に、『うおぉぉぉ』と言う人の声が聞こえた。そして、すぐにクイネたちが吠え声。

人がいるのが解ったけど、兄さんに投げつけられたのが、小さな女の子だったのにはびっくりした。女の子はびっくりしすぎて固まっていた。

黒い髪の黒の瞳。最初エイナかと思った。あの日、やっぱりエイナは死んではいなかったと思ったのに。エイナと似ているのは姿形だけだった。


僕らは《禁忌の森》でエルナという子を助けた。


色の月 1番目の命の日


昨夜は眠すぎて、日記に書きたいことを全部書くことが出来なかった。

今日も驚きの一日だった。

エルナは料理がすごく上手い。朝のスクランブルエッグなるものは、フワフワとして甘かった。昼は朝の残りのスープにチーズを入れただけで、全く違うスープかと思った。昼のご飯の時も、朝の残り物だったけど、パンとチーズを入れて釜で焼いただけなのに、全然違う料理だった。


そして、夜は僕の誕生月を祝ってくれた。エルナはそのことを知らないと思っていたけど、一緒にマヨネーズを作って、そのマヨネーズを使ったサラダ、シチュー、唐揚げを食べた。いままで味わったことがないスープだった。ヤケイの肉とポテトとオニオンと、入っているものは今までと同じなのに、そのスープは白くて、いろいろな味を感じた。


そーそー、父さんたちが死んでから叔母さんの家にいたヨエルが帰ってきた。アーダ叔母さんの具合が悪いという話しは聞いていた。ヨエルを早く引き取ろうと兄さんと話していたから、結果的に良かったけど、人見知りのヨエルがエルナと上手くやっていけるのかな? でも、料理は凄く気に入っていたみだいだ。


エイナは居なくなってしまって、凄く寂しかったし、悲しかったけど、なんだか父さんとエイナが、僕らの所にエルナを連れて来てくれた気がした。

エルナの料理は、みんなが驚く。誰も知らない、凄く美味しい料理だから、僕はふと思った。

エルナは伝説のアルヴィース様みたいだって。

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