真栄平夏未は勇者か?
あたいの名前は真栄平夏未
中学二年生だ
といっても学校にはあまり言っていない
「おらあ!!」
「ウゴッ!!!」
「女だからってなめんなよ?」
そう、あたいはヤンキーなんだ
それだけじゃない
”特攻爆裂隊隊長”をやっている
中2でしかも女が族の長を務めるのは珍しい
だけどそれがなんだってんだ
あたいは強い
それだけのことだろうが
今日も他の族との抗争で忙しい
だから学校に行っている暇などないのだ
まああたいの日常はそんな感じだ
夜
「お帰り夏未、どこ行ってたの?」
「うっせえババア!!! 何しようとあたいの勝手だろ!!!!」
あたいは母親を怒鳴りつけ
そのまま自分の部屋に入った
特にすることもないのであたいは眠りについた
「ん?」
何か神殿みたいなところにあたいはいた
「夢か……?」
「夢じゃないわ」
そう聞こえた瞬間
目の前に少女が現れた
「あなたはこれから勇者になるわ」
「あたいが勇者!?」
「ええ」
「ギャハハ、勇者とか笑える」
「馬鹿にしないで欲しいわね」
「だって勇者とかあ、ただのかっこつけたがりのクズじゃん」
「……」
「そんなクズにあたいはなりたくないね」
「あなたにそんなこと言える資格があるのかしら?」
「なんだと!?」
あたいはブチギレた
「暴走族のリーダーなんかより勇者のほうがよっぽどかっこいいと思うわ」
「てめえ、調子乗ってんじゃねえぞ」
あたいは指をぽきぽき鳴らす
「暴走族みたいな下衆のリーダーになったあなたにそんなこと言われたくないわね」
「てめえええええええ!!!!」
あたいは少女の顔面に一発お見舞いした
はずだが
少女の顔を霞めただけだった
「無駄よ」
「畜生!!!!」
あたいは少女に何度も殴りかかった
しかし、霞めるだけで全然あたいの拳が当たることはなかった
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ん?」
少女があたいの額に手を当てる
さっきは霞めてたのに
なんで少女のときには感触があるんだ
と次の瞬間
「!!!!?」
あたいの頭の中で映像が流れた
「やめろおおおおおおおおおおお!!!」
その映像はあたいにとって見たくないものだった
朝
学校に登校して下駄箱から上履きをとって履くと
「いたっ!!」
足の裏に何かが刺さる感触があった
上履きを脱いで足の裏を確認すると
押しピンが刺さっていた
その部分から血が流れていた
「ギャハハはは、あいつ押しピン踏んでやんの」
物陰から4、5人の女子生徒が出てきてあたいを嘲り笑った
この時からだった
あたいが強くなろうと決心したのは
あたいは日々体を鍛え
自分をいじめてくる女子生徒を殴る蹴るしていった
そのおかげかあたいに対するいじめはなくなった
しかし
「奥さん、この子、暴力をしてるんですよ」
あたいは校長にまで呼び出しをくらった
あたいは終わったなと思った
「この出来損ないが!!!!」
あたいは実の父にそんな言葉を投げかけられた
その時からだ
あたいがぐれるようになったのは
あたいは街中にたむろしているヤンキーに喧嘩を売っては
ボコボコにした
次第にヤンキーからのあたいの知名度が上がり
あたいに付き従うものまで現れた
あたいは顎で下っ端どもをこき使った
最高だった
強くなるってこんなに素晴らしいのかと思った
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「あなたは強くなんてないわ」
「なんだと!?」
「あなたが強いなら勇者にだってなれるはずよ」
「ほう、言ってくれるねえ」
「勇者になるには試練を乗り越える必要があるわ、どう?引き受ける?」
「面白い、乗ったじゃないか」
「分かった、それじゃあ」
少女の隣に木で出来た人形が出てきた
人形は右手に木刀を持っていた
「!!!!」
人形は突然あたいに向かって最接近して木刀を振り下ろしてきた
あたいは咄嗟に避ける
「あなたの第一試練はこの人形に」
少女が何かを言う前に
あたいは人形のマウントをとった
あたいの右手にも木刀が出てきたが
それは捨てた
「おらっ!! おらっ!!! おらっ!!!!」
「・……」
あたいは人形の顔を殴り続けた
次第に人形が消えた
「第一関門突破よ!予想外の展開だったけど」
「ふんっ! あたいにかかればこんな雑魚どうってことないさ」
「次の試練よ」
少女がそう言った途端風景ががらりと変わった
「何だ!?」
あたいは呆気にとられていた
しばらくすると
「あの娘を助けなさい」
頭の中で少女の声がした
私は辺りを見渡す
そして手綱に繋がれている娘を発見した
「あの娘か」
「ええ」
早速あたいは娘を連行しているじじいに話しかけた
「おい!」
「なんじゃ?」
「その娘を離しやがれ」
「それは出来ん」
「なんだと!?」
私はブチギレた
「待てっ理由があるのじゃ」
「ほう」
じじいはこう説明した
この村には生贄の風習があること
この村の近くには洞窟があって
その中にドラゴンが住み着いていること
月に一度そのドラゴンに生贄を捧ないと
村がドラゴンに襲われて大変なことになると
「そういったわけでこの娘を生贄に捧げるのじゃ」
「ちょっと待て」
「なんじゃ?」
「あたいがそのドラゴンとやらを退治してやろうじゃないの」
周りの村の人々がその発言を聞いた瞬間驚いた様子で私を見てきた
「そなたに出来るのか?」
「あたいを誰だと思ってるんだい!あたいは特攻爆裂隊隊長!真栄平夏未だよ」
「分かった……そこまで言うのなら」
娘は手綱から開放された
「あの……ありがとうございます」
「あんたも強くなりな、生贄じゃなくドラゴンを倒せるほどにな」
「え、ええ」
娘は困り果てた様子だった
「それじゃあドラゴンの洞窟に案内します、付いてきてくだされ」
「分かった」
あたいはドラゴンがいるという洞窟に案内してもらった
「ここがドラゴンが住んでいるという洞窟かい?」
見た感じ普通の洞窟だ
この中にドラゴンが住み着いているなど到底考えられない
洞窟の前には二人の門番がいた
「村長様、彼女が今回の生贄ですか?」
「いや、彼女がドラゴンを倒してくれるそうじゃ」
「なんと!?」
門番たちも驚いていた
「こんな小娘がですか!?」
「あたいをなめるんじゃないよ!!!」
あたいは鋭い視線を門番たちに向ける
門番たちはあたいの視線を感じ取ったのか退いた
「ではここから先はお主が進みなされ」
「ああ、わかってんよ」
あたいは洞窟の奥に進んでいった
途中
「!!」
あたいの右手から変な剣が出てきた
それと同時にあたいの服装も変わっていた
騎士みたいな装備だ
しかも黄金に輝いている
「これは宇宙最強と呼ばれる装備よ」
「へえ」
「これからあなたにはドラゴンを倒してもらうわ」
「こんな装備なんて無くてもドラゴンなんて腹パンですませられる」
「必要ないならこの装備を外すけど?」
「うっ!!」
ドラゴンがどういう生き物か知ってはいる
あたいはただ強がっていただけだった
「いや、この装備で戦ってやんよ」
「そう」
あたいは洞窟の奥に辿りついた
そこにはもちろんドラゴンがいて
あたいを見るやいなやよだれを垂らしながら近づいてきた
あたいは剣を構える
ドラゴンはそれを察して来たのか
あたいを威嚇し攻撃してきた
「おっと」
あたいはドラゴンの攻撃を避ける
ドラゴンは相変わらず攻撃を仕掛けてくる
「ええい、もういい!!」
あたいは剣を捨て
空高く舞い上がり
ドラゴンの顔目掛けて両手で拳を作り振り下ろした
ドラゴンの頭はどがああああああああああんという音と共に地面に叩きつけられた
その後ドラゴンが動くことはなかった
「すごいわね、素手でドラゴンを倒すなんて」
「あたいにかかればこんなもんよ」
「おめでとう、第二関門突破よ!」
「次の試練もじゃんじゃんやってやんよ」
「そう、じゃあ次へ移るわね」
少女がそう言った途端風景が変わった
前きた村の中だ
しかし、何かがおかしい
周りの視線が鋭くあたいに向いている
「この裏切り者め!!!」
その途端村の皆が石を投げつけ始めた
それにあたいはブチギレた
「何するんじゃごらあああああ!!!!」
あたいは村人を片っ端から殴りつけた
「夏未、やめなさい!!」
頭の中で声がする
「うるせえ!!黙れ!!!」
あたいは石を投げつけた一人の村人のマウントを取り
顔面を殴り続けた
「あれ?」
いつのまにか景色が変わっていた
マウントを取った村人の姿もない
最初いた神殿の中だった
「残念ね」
そう言った途端少女が姿を現した
「何がだよ!?」
「あなたは村人に暴力を振るってしまった」
「なんでだよ!!悪いのはあっちだろうが!!!」
「勇者はね……どんなことがあろうと耐え抜くものなのよ」
「んなもん知るか!!!」
私は半ばやけくそに言った
少女があたいに近づく
「なんだよ!」
「もう一度言う、残念だわ」
少女はあたいの額に手を置いた
「なん……だよ」
あたいの意識が遠のいた
「はっ!!」
朝
あたいは目覚めた
「夢!?」
あの夢は一体なんだったんだろうか
夢にしては妙にリアルだった
「まあいいか」
ぷるるるる
携帯が鳴る
下っ端からだ
「どうした?」
「隊長大変です!俺たちの部隊にあのやろうが奇襲をかけて来ました」
「分かった!すぐ行く!!」
あたいは急いで家を出た
「勇者?バカバカしい」
あたいは今日も族の争いに身を投じるのだった
真栄平夏未
「 勇 者 失 格 」




