表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

安藤守は勇者か?

 僕の名前は安藤守あんどうまもる

 中学3年生

 バドミントン部だったけど受験もあって引退

 今は受験勉強真っ最中だ


 と言ってもバドミントン辞退をやめたわけではない

 友達とバドミントンしたりバドミントンのサークルにも入っている

 ちなみに成績は学年内でトップ10に入る


 普通の日常を送っていた


 そんなある日


 プルルルルル


 電話が鳴った


「はい、安藤ですが?」

「君が安藤さんの息子さん?」

「ええ」

「警察のものだけど大変だ!!君のお母さんが事故にあった」

「ええ!?」

「飲酒運転をしていた車にぶつかってね」

「そんな……」

「お父さんはいるかい?」

「お父さんはいますけど」

「お父さんにも伝えて今すぐ病院に来て欲しい」

「ええ、分かりました」


 お母さんが事故にあった

 僕は強く思った

 頼む!! 生きていてくれと





 僕と父さんは病院へ向かった


「母さん無事かな」

「だといいが……」


 僕たちは待合室で待つ

 しばらくすると

 手術中のランプが消えた


 手術室の中から医師が出てきた


「安藤さんまこt」

「お母さんは!!お母さんは生きてるんですよね!!!」

「……」


 医師は終始無言だった


「お母さんは生きていているんですよね!!!」


 医師の顔を見て僕は悟った

 いや、悟りたくはなかった


「お母さんは!!」

「守!!! やめなさい!!!!」


 お父さんが僕を制した


「誠に残念ですが、安藤さん、あなたのお母様は亡くなりました」

「そうですか……」

「嘘だ……そんなの……嘘だあああああああああ!!!!」


 僕はその場にへたりこんで泣き出した

 お母さんが死ぬはずない

 あの強かったお母さんが……

 殺しても死ななそうなお母さんが……


 僕たちは家に帰った

 僕はまっすぐ自分の部屋に入った

 僕が部屋から出るときはトイレをするときぐらいだった

 食事が喉を通らなかった

 珍しい、あれほど食欲旺盛な僕が食べないだなんて……


 僕はそのまま眠りについた











 朝


 コンコン


 パパが僕の部屋をノックした


「守、父さん、葬式に行ってくるからお前は学校に行きなさい」

「……」

「守? 聞いてるのか?守!!!」

「うるさい!!!!」

「……」


 次第に家族の中はギクシャクするようになった

 母が死んでからというもの僕は引きこもるようになった

 食事は相変わらず喉を通らず

 僕はずっとベッドに入ったまま目を閉じていた

 僕はそんな生活を繰り返していた











「ここは……?」


 神殿みたいなところに僕はいた


「あなたが安藤守ね」


 そう聞こえた途端目の前に少女が現れた


「君は?」

「アリサ・レイニード、これからあなたを勇者に導くための指導をするわ」


 勇者?

 しかし、そんなことはどうでも良かった


「うるさい!!!!」

「守?」

「母さんが死んだのにそんなどうでもいいこと出来るわけがない!!」

「守……」

「母さんが死んで……」

「守」


 アリサが泣きじゃくる僕を抱きしめた


「あなたの気持ち……痛いほど分かるわ」

「……」

「私も大切な家族を失ったことがあってね」

「……」

「でも大丈夫、あなたのお母さんはいるわ」

「え?」

「天国で幸せに暮らしてるわ」

「……」

「あなたのお母さん、あなたにこんな言葉を良く言ってたそうね」


アリサは間を置くとこう言い放った


「守、強く生きなさいって」


 僕は子供の頃厳しく育てられた

 習い事を多くさせられた

 空手、塾、ピアノ、剣道など


 嫌がる僕を母は無理やりそうさせた

 そんな母が僕によく送った言葉がこれだった


「守、私からもあなたに同じ言葉を送るわ」

「……」

「それにお母さんともいづれ会えるわ、お母さんの魂は消えていないもの」

「本当に?」

「本当よ」


 アリサが僕から離れた

 僕は泣くのをやめ立ち上がった


「僕、なるよ! 勇者に!!」

「その言葉を待っていたわ」


 そう言った途端少女の隣に木で出来た人形が現れた

 その人形は右手に木刀を手にしていた


「!!!!」


 人形は僕に最接近し木刀を振り下ろした

 僕は思わず目を瞑る


「どうしたの? 早くその木刀で人形と戦いなさい」


 その言葉と同時に僕は目を開けた

 目の前には人形が振り下ろした木刀が寸止めで止められていた

 僕は右手を見る

 木刀が握られていた

 僕はその木刀を人形の木刀にぶつける

 人形は次のアクションに入っていた

 僕もそれに対応する

 僕は空手やバドミントンをしていたこともあり

 運動神経が良かった


「ん?」


 いつのまにか人形はもう片方にも木刀を持っていた

 二刀流だ

 それと同時に難易度が上がったような感覚だった

 僕は足払いされ喉元に木刀を突きつけられる

 しばらくすると人形は僕から木刀を遠ざけ指定の位置に戻った


「どうする? 諦める??」


 アリサのその言葉を聞いて僕はカチンと来た

 

「諦めるものか!!僕は強いんだ!!!」


 僕は遺伝なのか母からの厳しい教育のおかげなのか

 負けず嫌いだった


「そう、じゃあ続けて」


 人形との戦いが続く

 僕は何度も人形に遅れをとっては喉元に木刀を突きつけられた

 でも諦めなかった

 それがこうを成していたのか

 僕は人形の動きについていけるようになった


 そして僕は

 人形の胸元に木刀を付き

 人形を吹っ飛ばしマウントをとり人形の喉元に木刀を突きつけた

 初の勝利だ


「おめでとう、これで第一関門クリアね」


 アリサがそう言ったとたんアリサと人形が消え

 風景が変わった

 村だ

 しかし、様子がおかしい

 一人の娘が手綱を付けられて連れて行かれた


「今度はあの子が生贄か」


 村の人々が口々に言う


「今度はあの娘を助けなさい」


 頭の中から声がした


「分かった」

 

 僕はなんの躊躇も無くそう答えた

 僕は正義感も強い


「あの」


 僕は娘を連れている村長らしき人に話しかけた


「なんだね? 君は??」

「その娘を離してやってください」

「残念だが、そうは行かんよ」

「なぜですか?」


 村長は説明してくれた

 この村には生贄の風習があること

 洞窟の中にはドラゴンが住んでいて

 月に一度生贄を捧ないと

 ドラゴンが村を襲いに来ると言った内容だった


「なら僕が代わりに生贄になります!!!」


 その言葉に娘や村長、村の人々が驚いた


「いいのかね?」

「構いません」


 こうして僕は娘の代わりに手綱を繋がれ

 ドラゴンの住む洞窟へと向かうことになった


「あ、あの、本当にありがとうございます!!」


 娘は僕に感謝の言葉をかけてくれた

 良いことをした上にその言葉をかけられると嬉しくなる


 そして洞窟に着く

 洞窟の前には門番みたいな人が立っていた

 恐らく生贄が逃げないようにするためなのだろう


「このまま洞窟の奥へ進んで行きなさい」


 村長がそう促した


「分かりました」


 僕は一人で洞窟の奥へ進んだ


「あれ?」


 ある程度進んだあとで僕は手綱が外れている

 いや、消えていることに気づいた

 そして右手には物珍しい剣が握られていた

 それと服装も変わっていた

 騎士みたいな装備だ

 しかも黄金に輝いている


「これは宇宙最強と言われる装備よ、それでドラゴンと戦いなさい」


 頭の中でアリサの声がした


「分かったよ」


 僕はそのまま洞窟の奥へと進んでいった

 そして辿りついた

 奥には予想通りドラゴンがいた


「怖い?」

「ちょっとね」


 ドラゴンはよだれを垂らしながら僕に近づく

 僕は剣を構えドラゴンに突進した

 ドラゴンは一瞬退いたが

 首を後ろに引きそのまま僕に噛み付いてきた


「速い!!」


 僕は装備のおかげか思ったより速く動けていた

 ドラゴンの攻撃を交わし

 そのままドラゴンの胸部分に剣を突き刺した


「ぐぎゃああああああああああああああ!!!」


 ドラゴンが悲鳴をあげ倒れる


「やった!! ドラゴンを倒したぞ!!!」

「第二関門クリアね」

「さっきからその言葉を聞いてるけど試練かなんかなの?」

「ええ、勇者になるためのね」

「ふうん」


 正直第二関門は第一関門より楽だった

 装備のおかげか速く動けたし

 人形から培った動体視力でドラゴンの動きを見切ることも出来たのだ

 しばらくすると装備と剣がなくなっていて

 いつもどおりの服装に戻っていた

 手綱はされていない


 僕は洞窟から出ようとした

 それを見た門番が


「おい!貴様、逃げるのか!?」

「手綱はどうした?」


 僕がドラゴンを倒したと説明すると


「分かった本当にドラゴンを倒したのか確かめよう」


 二人の門番がそう答え

 僕たちは再び洞窟の奥へと戻るのだった


「本当だ」

「嘘だろ!?」


 門番たちは驚きの声を上げた


「あなた様は勇者だ」


 そして態度をがらりと変えた


「ふふん♪」


 勇者と言われて悪い気はしない

 兵士たちは村へ変える間も僕を勇者として褒め称えてくれた


 村についた

 ここで驚くべき事態が起きた

 村の人々は僕を見るなり


「逃げたのか!? この裏切り者め!!?」

「村がドラゴンに襲われたらどうしてくれる!?」


 そう罵声を僕に浴びせ石を投げつけてくるのだった


「僕はドラゴンを倒したんですよ」

「そんな、嘘信じると思うのか!?」

「本当ですよ! ね!! 門番さん!!!」


 僕は隣にいる門番に話しかけた

 あれ?


「いない……」


 門番がいないのだ

 さっきまでずっと僕と一緒にいたのに


「この村から出て行け!!!!」


 僕は渋々村から出て行った


「何なんだ!!折角僕がドラゴンを退治してやったのに!!!」


 僕はブチギレていた


「守、近々村に魔物が攻め込んでくるわ」


 頭の中から声がした


「それで?」

「それで村の皆に魔物が来ることを伝えて欲しいの」

「でも村の皆が僕を裏切りものとして見ている、僕の話なんか」

「それでも言うの」

「それも試練なの?」

「勘づかれてしまったわね」

「それなら分かったよ」


 僕は村の皆を説得した

 しかし、誰も口を聞いてくれなかった

 石が体にぶつかって痛い

 それでも僕は諦めなかった

 何日もかけて村の皆に魔物が来ることを伝えた


 ある日

 村に本当に魔物が来た


「守、村の皆を魔物から守りなさい」


 いつのまにか装備が変わっていた

 宇宙最強装備だ

 僕は魔物を斬り倒していった

 魔物は僕を見るやいなや襲いかかってくる

 村の皆は僕と魔物の戦いを見守っていた


「ふう」


 やっと魔物を殲滅することが出来た


「あなた様は勇者だ!!」

「前は石をぶつけたりしてごめん」


 村の皆が口々に僕に謝り、褒め称えた


「おめでとう、最終関門突破ね!!」


 そう聞こえた途端風景ががらりと変わった

 最初みた神殿の中だ

 目の前に少女が出てきた

 アリサだ


「それでは勇者の儀式を執り行う」


 アリサはそういうとアリサの右手からレイピアが出てきた


「汝、我の前へ!!」

「え?」

「映像の通りに行動して」


 その途端

 僕の前に映像が流れた

 中世ヨーロッパ時代の映像だろうか

 姫の前に騎士が両膝を付き

 姫がレイピアを騎士の左肩に当てている


「分かった」


 僕は映像の通りアリサの前に来て両膝をついた


「汝、努力を惜しまず日々鍛錬を続けると誓うか?」

「誓います」

「汝、人の命を守るために自分の命をなげうつことを誓うか?」

「誓います」

「汝、どれだけ理不尽な目にあろうとも怯まず誠心誠意生きると誓うか?」

「誓います」

「最後に」


 アリサは間を置いてこう言い放った


「汝、いかなるときも勇者としての誇りを持ち続けることを誓うか?」

「……誓います」

「汝、真の勇者なり」


 その言葉を聞いた神殿が輝きを放った


「おめでとう、あなたは勇者よ」

「はい」

「これからもたくさんの苦難があなたを待ち受けているだろう」

「……」

「でも負けないで、あなたは勇者なんだから」

「分かりました」


 その途端僕は光に包まれた

 眩しい


「あなたは強い子よ、どうか負けないで」


 その言葉を最後の僕の意識は遠のいた













 朝

 僕は目覚める


「あれは夢だったのか?」

 

 正直落胆した

 僕は勇者になれたと思ったのに


「でも、いいか」


 あの夢を見れて本当に良かったと思う


「強く生きなさい」


 お母さんの言葉を思い出す


「そうだ、僕は強いんだ!!」


 僕は制服に着替え自分の部屋から出た


「守!?」

「僕、学校に行くよ!父さん」

「そうか、お前が立ち直ってくれて良かったよ」

「それじゃあ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 僕は家を出て学校に向かう

 これからも苦難が僕を待ち受けているだろう

 でも僕は負けない!

 そう……僕は強いんだから……
















 安藤守

「 勇 者 合 格 」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ