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第一夜

いや、まずどこから話せばいいのだろうか?


状況的には最悪と言っていい。いや、最低か。とにかく貧相な俺のボキャブラリィではそれ以上の表現が出来ないほどにまでどん底かつ俺オワタ的な状況なのである。彼女に浮気現場を見られたとか、うどんを食べていた時に思い出し笑いして麺が鼻から出たところを写メられたとかそんなチャチな状況では無い。


言うならば親にマスターベーションに励んでいた最中を目撃されたとか、その後親に『汁だし君(笑)』とか呼ばれるとかそんな、果てしなくどうしようもない状況なのである。とはいえ、そんな御託をひたすら並べ続ける事に意味は無く、時間も無い。とりあえず客観的な今の俺のおかれている状況を描写しようと思う。


構図としては簡単なものである。俺には健在な両親がおり(夫婦仲は良好と思われる)、そして健やかな姉がいる。すなわち四人家族である。すなわちカルテット、いや違う。いや、何分現在のところ現実逃避を行いやすい状態にある自分としてはこのような冗長な、遠回しな、あるいは先送り的な発想に帰着しやすいのであるが、非常にも現実は待ってくれない。


さて話は戻る。


今、現場には4人の人間がいる。ここまで言えば読者諸君には予想がつくようなものなのだが、その4人の人物とは俺と、俺の姉貴と、そして両親である。母親は専業主婦であるが最近は地域のコミュニティ活動なるボランティア精神あふれるものに精を出しているが、それは今の状況には全く関係が無い。あえて関係があるとすれば姉貴が教師という聖職に就いていることぐらいであるが、それが問題になったのは昨夜の晩であり、今の状況とは直接的な関係は無い。


時期時間となれば、春の日曜の朝と俺は答える。何分、正確な時間を時計によって確認しているわけではないのでそのような曖昧な表現となるわけではあるが、あるいはもしかしたら正午を過ぎているかもしれないし、あるいは夕方近くという可能性もなくはない。ただ太陽の日差しの入射角度的な意味からいえば午前中という確率がやや高い。


現場は俺の部屋である。近頃、某大学に受かった俺、受験戦争なる学歴社会を象徴する戦いに生き残り勝鬨をあげて念願の独り暮らしという環境を得た俺は、親の脛をありがたく齧りつつワンルームの学生マンションに居を得ており、すなわち俺の部屋=俺の家である。


さて、御託はもういいだろう。そろそろ何故に状況が最低最悪なのか、家族という最小のコミュニティ規模の問題として何が大問題なのかを非常に憂鬱であるが語らなければならない。その憂鬱さは彼女に別れ話を切り出すとか、あるいは彼女の両親にお宅のお嬢さんくださいなと言いに行くぐらいの憂鬱さなのだろうか? あいにく彼女いない歴=年齢である自分としては判断がつかない。


さて問題である。両親の立ち位置については問題は無い。勝手に合いカギを使用して俺に無断で部屋の中に入ってきた事を除けば問題は無い。彼らはワンルームの入り口からやや内部に入った部屋全体を見渡す位置にあり、当然のことながら部屋の状況を隅々まで視界に入れている。


俺はベッドに仰向けになって横たわっている。身に纏う衣服は無く、トランクス一枚であり、言うなれば半裸である。そう、半裸。それだけならば問題は無い。にもかかわらず俺は冷や汗を額にし、一歩も動けないでいる。いや、ベッドに寝ているのだから歩けるはずもないのだが。


最大の問題は姉貴であった。まず、位置的な問題。彼女は俺の上でうつぶせで横たわっていた。つまり俺と姉貴は対面状態で、すなわち寝ているのである。しかも両手は俺を拘束し、あたかも俺を抱き枕の様に抱えている。そして衣服的な問題。彼女は言わば裸ワイシャツ的状態にあり、そしてそれは着崩れていた。


補足的な説明をするなら、俺の姉貴の胸はデカイ。パッフパフである。女の子のおっぱいってこんなに柔らかいんだー的な感想。俺の顔はそれに挟まれている。至福かそうでないかといえば、前者である。良いにおいはするし柔らかいしで、それだけなら俺得である。そして俺の息子は元気にそそり立っている。いやこれは姉に欲情しているわけでは無く朝立ちなる生理現象によるものだと信じたい。


そして、この状況をさらに混迷の淵に追いやる要素がベッドの周囲に散乱している。それは言うなればDVDと呼称される映像などをデータ記録するメディアであり、すなわちエロDVDなどと呼ばれている物や、卑猥な春画を冒涜的に掲載するエロ本といったものだった。内容は姉弟の近親相姦モノ等。


さて、


ベッドの上で半裸で抱き合う姉弟。机の上にあるブツ。そしてそれらを目撃した両親。仲の良い兄弟ね~などと両親が判断してくれる事を俺は祈りつつ、しかし、表情が固まったままの両親を見るに、彼ら両親が俺たちが血縁の壁を越えていたしてしまったのではないかというおぞましい着想を得ているものと推察するに、この後、家族会議が行われる可能性は極めて濃厚であった。


一言断っておくが、俺と姉貴はそんなインモラルな一線を越えたわけではなく、このような状況に至ったのは全て偶然の産物であり、俺の恣意的な誘導や、姉貴による大胆な誘惑などがあったわけではないことをここに追記しなければならない。あらゆる諸要素が絡みあってこのような状況が招かれたのであり、決して近親相姦などという危険な行為に手を染めたわけではないのだ。


それを説明するには昨晩あった事、いや、これも関係の無い読者諸君に開けっぴろげにするわけにはいかないのであるが、これが俺の独白という形式をとる以上、語らねばならない事なのだろう。そう、問題は昨晩に起きた、いや、問題は昨晩から始まっていた。






『俺と姉貴の一夜一夜』 by 矢柄






話は昨日。つまり土曜日。おれは家庭教師なる大学生が行うまっとうなアルバイト、生徒は男子中学生のクソガキであり態度は極めて生意気でしかも超頭悪いことこの上ないことはまた別の話であるが、を終えて帰宅したところから始まる。


原動機付き自転車で家路につく頃には夜の帳が下り、半分の月が中天に浮かぶ中、ヘッドライトの明かりを頼りに夜道を走り、途中夕食を済ませた俺が我が家に到着したのはおおよそ10時過ぎ。我が家に戻るとあら不思議、私の部屋に明かりがついているじゃありませんか。


訝しみながらも鍵を開け、注意を払いながら中に入ると、会いまみえたのは我が姉貴殿。ちゃぶ台の前で正座をして、ちゃぶ台の上に何か色々なものを乗せて、そして俺を睨んできます。どうしてそんな棘のある視線を送ってくるのか。基本的におとなしめな姉貴殿にしては剣呑な様子。



「えと、姉貴、なんでいるの?」


「弟君がちゃんと独り暮らし出来ているか様子を見に来たのです。そんなことよりも弟君、座りなさい」


「なんでそんな…、はうぁ!?」



ちゃぶ台のうえにあったブツに視線を下ろした時、俺の脊髄に電撃が走った。それらは俺の秘蔵コレクション…というわけではなく、昨日大学の友人に押し付けられたエロ本とエロDVDであった。秘蔵のウ=ス異本はカムフラージュを重ねて発見には至らなかったようだが、無造作に隠したこれらのブツは姉貴による家探しによって発見されてしまったのだろう。


俺は崩れ落ちるようにして床に正座し、姉貴に対面する。



「弟君も男の子ですから、こ、こういう…エ、エッチなものを持っていたとしても…、持っていたとしても…、文句は…、言いません。ええ、ええ、言いません。けれど、これは何なのですか?」


「いや、これはダチに押し付けられたもので…」


「言い訳はいいです!」



ピシャリと俺の言い分は抑止される。いや、真実なのだが状況がそれを許さない。お姉ちゃんはおかんむりである。もう、ぷんぷん怒っている。耳の先まで真っ赤になっている。


さて、関係の無い話であるが、我が姉は少し天然の入った可愛い系の女子である。童顔でたれ目で、ウェーブのかかった色素の薄い髪、しかし胸は大きい。贔屓目ではないが、かなり美人といっていい。可愛い系の美人である。ただし、押しに弱く、押したら退く、さらに押せば退くという弱い感じである。ようはヘタレさんなのだ。


閑話休題。


怒りに震えるお姉ちゃんの、その怒りの源泉はちゃぶ台におり重ねられたDVD等のブツの内容であろう。前述の通り姉弟の近親相姦ものという爆弾の他、女教師モノなど、現役教師である姉貴にどストライクの内容物の塊なのであった。なおこれは俺の趣味ではなく、俺の友人の趣味によるチョイスである事を付け加えたい。



「おおお、お、お、弟君!」


「はい!?」


「弟君がエッチなのは仕方のない事です。いえ、駄目なんですけど、ここはスルーしましょう。ここはスルー、スルーです。でも、これは何なのですか? これは、その、あの、お姉ちゃんと、弟が、その、あの、ナニをするという…」


「いや、違うんだ姉貴!」


「シャラァプッです! 私は弟君を見損ないました。まさか、弟君が、その、お姉ちゃんと、その、あの、えと、ナニをしたいと考えていたなんて!!」


「誤解だ!」


「お姉ちゃんは悲しいです。恥ずかしいです。お姉ちゃんは弟君をこんな子に育てたつもりはありません! しかも、こっちのは…お、お、女の子の先生にこんな、こんな、エ、エッチなことを…。弟君は先生をそういう目で見てたんですか!?」


「だから違うんだって!」


「ス、ストッキングを破って…、その中に、その中に!」


「いや、だから…」


「しっ、しかも! ま、前だけじゃなくて…、お、お尻に…、お尻に…。弟君が変態さんになっちゃっていました! お姉ちゃんは悲しいです! う、うぇ、うぇぇ、ふぇぇぇぇん!」



感極まって泣き出した姉貴。手がつけられない。俺は一瞬死んだ魚の様な目をしていただろうが、気を取り直して姉貴を説得しなければならない。しかし道は困難だ。女教師の姉貴の目の前にあるブツがどストライクに主張している。ああ、言っておくが俺は姉に特別な感情なんて抱いてないぞと…ん?



「ところで姉貴、なんでDVDの内容知ってんの?」


「ふぇ?」



ストッキングを破ってとか、お尻うんぬんとかは例のブツを見聞しなければ判らない事だ。はて、何故この姉貴はそのことを知っているのだろうか?



「姉貴、見たのか?」


「……」


「見たんだな?」


「ヒュ~♪ ヒュ~♪」


「吹けもしねぇ口笛で誤魔化してんじゃねぇよ!」



俺はとっさに姉の座る傍らに無造作に置かれていたテレビとリモコンに手を伸ばす。姉貴もそれに気付いてそれを阻止しようとするが、運動神経が壊滅状態の彼女が反応しきれるはずも無く、俺は悠々とリモコンを奪い取り、テレビとビデオの電源を入れた。



「だめぇ! 弟君らめぇ!!」


「うるさい! どれどれ…」



そして液晶テレビ画面に映し出されるギシギシアンアン。姉弟の近親相姦モノで男優が「姉ちゃん!姉ちゃん!」とか叫んでる。そして俺が姉貴の方に向き直ると、姉貴は顔を真っ赤にしてうつむいていた。目を覗き込むと、恥ずかしそうに目をそむける。



「見てたな」


「……」


「どれぐらい見てたんだ?」


「……」


「まさか…、全部?」


「!?」



俺の言葉にビクンと反応する姉貴殿。まさかと思って他のDVDケースを見聞すれば、全てが半開き状態。すなわち、中身に手を出した事明白なのであった。この分で行けば、『ブック』についてもすでに全て読み込んでいる可能性が大であろう。



「人をエロエロ言っておいて、手前ぇも十分にエロ娘だろうが!」


「ち、ちがうもん! ちがうもん! お姉ちゃんには監督責任があるんだもん! あるんだもん!」


「んなもんネォよ! 手前ぇこそ近親相姦モノに自己投影してたんじゃねぇだろうな!?」


「なななななな何言ってるんですか弟君!」


「はっは~ん、してたんだな。じゃあ、女教師モノとかで生徒に悪戯されるところとか自己投影して見てたんだな!」


「お、怒りますよ弟君!」


「で、どれが一番良かった?」


「えと、やっぱりこの純愛ものが…じゃなくてですねぇ!」



姉貴が指そうとしたのは姉弟近親相姦ものの一つ。え、何それ怖い。俺は少しだけ姉貴から遠ざかるため後ろに退く。そんな俺の行動に姉貴殿は目を見開く。



「何ですかその反応は!? 逆ですよね!? 立場逆ですよね!? 危機感覚えるの私の方ですよね!?」


「このDVDとかはダチに押し付けられたモンだ。俺の趣味じゃねぇ」


「え?」


「だから、これ、俺のじゃねぇの」


「は?」


「……」


「……」


「……」


「マジですか?」


「マジ」


「……」


「……」



部屋に重い沈黙が垂れ下がる。ちゃぶ台を挟んで無言で見つめあう姉弟。ちゃぶ台の上で存在感を否応なく発するエログッズたち。しかし何だろうこの状況は? 姉と同じ部屋でエロDVDを挟んで対面するとか訳の分からない状況。こんな状況生まれて初めてだ。姉貴は困惑の表情を浮かべる。



「ごめんなさい、こんな時どんな顔をすればいいか分からないの」


「笑えばいいと思うよ」




さて、


話がここで終わったならば冒頭のような状況に遭遇することなど無かっただろう。つまり、この物語にはまだ続きがあるのだ。端的に表現するならば、そうは問屋が卸さない。事の真実を知った姉貴が、はい納得しましたと了解し、実家に帰ってくれればそれでよかったのだが(姉貴は実家から職場に通勤している)。



「お酒が飲みたいです」


「は?」


「私の心はとてもささくれ立っています。だから、お酒を買ってこいです」


「お前は何様だ。自分で買って家で飲めばいいだろうが」


「おーさーけーがー飲ーみーたーいーんーでーすー!! 弟君は私のために買ってくるべきなのです!」



あろうことか駄々をこね始めた姉貴。このモードに入った姉貴はちょっとやそっとじゃ言う事を聞かなくなる。世界で一番お姫様モード。過去何度も姉貴はこれを起こし、そして俺は最終的に折れていつも従う事になるのだ。あ、そこ、シスコン言うな。そして俺に無造作に諭吉様を投げつけてくる。



「いや、俺、未成年だから」


「グダグダ言ってないで買ってくるっ!」


「夜遅いしさ、帰れよ」


「いいもーん、私、今日はここでお泊りするもーん!」


「帰れよ」


「むむむむむむむ」


「うぐぐぐぐぐぐ」



言っている間に姉貴は俺のベッドの上を占拠する。最悪だ。居治ったうえ、駄々こねた上に居座る気だ。そうしてしばらくの間睨みあいをした後、俺はため息をついて諭吉を手に取った。敗北宣言である。



「あ、おつまみもお願いね~」


「ヘイヘイ」



そうして俺は原付で近くのコンビニに行き、適当にビールとつまみになるものを購入し、お釣りを自分の懐に入れて、我が家にUターンする。お釣りについてはデリバリー代として戴いておこう。そうして帰ると姉貴にレシートの開示を求められて、お小遣いゲット作戦は失敗に終わる。


ここで一つ、俺は大きな間違いを犯している事に気がつかなかった。その間違いこそが冒頭の恐ろしい結末へと直結するのであるが、この時の俺はその事を全く考慮に入れていなかった。


プシュッという缶ビールを開ける音が鳴り、姉貴はビールを飲み始めた。俺は適当にテレビを見ながらやり過ごそうと考えていたが、突如後ろから姉貴の強襲を受ける。冷えたビールの缶を頬につけられたのだ。半ば痛覚に近い冷感を感じて俺は非難の目を姉貴に向ける。



「弟君も飲んでみます?」


「教師が未成年に酒を勧めんな」


「いいじゃなーいですかー。独りで飲んでも楽しくないのですー」


「いや、でも、俺弱いし」


「そーなんですかー、お姉ちゃんと同じですねー」


「お前ぇ、弱いくせに酒要求したのか?」


「飲むのは好きなんですよ。たくさん飲めないだけです」


「姉貴、もう酔ってる?」


「酔ってませーん」



最悪だ。この女、絡み上戸だ。



「あー。もう、少しだけだぞ」



俺はその後、この時の判断を死ぬほど後悔する事になる。姉、酒に弱い。弟、酒に弱い。その先にある物を、俺はシラフであった時に予想してしかるべきだったのだ。だが、全ては後の祭りである。もう一度プシュッという缶ビールを開ける音が鳴り、冷えた缶ビールが俺に手渡されたのだ。


そして10分後。



「弟君、弟君、これって何ですか?」


「ああ、それ、アナルビーズ」



何故か俺たちは一緒にエロ漫画を読んでいた。しかも姉弟の近親相姦モノ。大人のおもちゃを使った、比較的ハード志向な逸品である。どう考えても正気じゃない。全てはアルコールのせいなのだと信じたい。



「お尻に入れるんですよねぇ」


「まあ、なあ」


「気持ちいいんですか?」


「よく知らね。でも、実在するってことは、そういうことじゃいのか?」


「ん~~」


「姉貴はこういうの持ってねぇの? 大人のおもちゃ」


「あはははー、高校生の時友達に誘われて買ったんですけどー、怖くて使えませんでしたー」


「最近の女子高生とかそういうの買うのかー?」


「えへへー、女の子だってエッチなことには興味津々なんですよー」



つまみのサラミを喰いながらカサリ、カサリとエロ本のページを捲っていく俺たち。姉貴はうわーとか、ひゃーとか言いながらも興味津々にエロ本を注視する。そんな姉貴の様子がおかしくて(何がおかしかったのか今となっては不明だが)、求められると俺は各シーンについて姉貴に分かりやすいように説明していく。



「男の人のっておっきいんですねー」


「いや、マンガだからちょっと誇張してんだよ」


「弟君はちっさいんですかー?」


「ちっさいゆーな」



アルコールの力は偉大である。どのくらい偉大かというと、エロ本を見聞し終わった俺たちが次に酒の肴に求めたのがエロDVDだったからである。缶ビールは4本目に突入していた。何が悲しくて姉貴と一緒にエロビデオを見なければいけないのか分からないが、俺たちは当時、アルコールに突き動かされるままに暴走していたのだ。



「『イケナイ新任女教師ミク』…ですか」


「一通り見たんだろ?」


「半分以上恥ずかしくて見れませんでしたよ!」


「じゃあもう一回見ようぜ。俺、見てないし」


「ちょ、ダメ、弟君、あ、ダメ、それはダメ」


「へっへっへ、ここがええんやろ? ここがええんやろ?」



とかいうやり取りをしつつ俺はDVDをプレーヤーの中に挿入する。内容は新任の女教師が体当たりの『教育』で生徒の『悩み』を解決していくというものだ。アルコールの入った俺はそのお粗末な展開の映像をゲラゲラ笑いながら観賞する。



「ハハハハハ、これはないわー。まじでないわー」


「弟君弟君、これなあに?」


「ん、ああ、ボールギャグな」


「んん、なんだか暑くなってきちゃった」


「窓あけるかー?」


「ん、服脱ぐから大丈夫」



そうして、姉貴は服を脱ぎだし、俺は缶ビールを呷る。実のところ、俺自身の記憶はこの辺りから曖昧になっている。おそらくはDVDを一通り全部見たりしていたのだろうが。残念ながら記憶は跳んでいる。故に、何故、翌朝、俺が姉貴に抱きつかれながら寝ている体勢なのかは良く分からない。


トランクスは履いているから、いけないことはいたしていないと思う。だが、だから何だというのか。両親が見ている光景は、半裸で抱き合う姉弟と、散乱するエロ本とエロDVDなのだから。そうして、話は冒頭に戻るのである。





両親は口をパクパクさせて、この部屋の惨状を見る。酷いものだ。近親相姦・女教師もののエロ本、DVDが散乱する中で抱き合う俺たちに、いったいどんな言い訳ができるのだろうか。俺は頭を痛めながら今後の展開に頭を悩ませる。



「ん…、ふぁ、あれ、ここ?」



そうしてようやくお目覚めになる姉貴殿。彼女は俺の上に座る様にして上半身を起こし、目を擦りながら周囲を見渡す。眠気まなこで周囲を確認すると、ようやく現状に認識が追いついたようで、彼女の顔は見る見るうちに赤くなっていく。



「え、え、あれ、私、昨日、うぇ? ふぇぇぇぇ!?」



そして昨日の痴態を思い出しての言動だと後に判明するが、しかし最悪のタイミングで彼女は本日最後の爆弾を落としてくださいました。



「わ、私、もうお嫁にいけない!!」



さあ、家族会議の始まりだ。




全三話だそうですよ。

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