生活三日目
生活三日目
目が痛い、腹が減った。
ゲームをやる人間にとっては不思議なことじゃない。
何時間も画面を見続ければ自然と痛くなるものだ。
正直、この痛みにも慣れた。
慣れてはいけないというツッコミがほしいところだ。
大会当日。
昨日から寝ていない。
大会のため、昨日から作戦、動き方、各自のポジションを確認しながら練習試合をこなしていた。
今日の朝、9時から大会はスタートする。
大会内容はいたってシンプル。まず、予選があり、サバイバル方式で大会に参加するパーティと総当たりで戦う。10勝したパーティにはトーナメントに参加する権限をもらえる。
上位、10チームがトーナメントで戦う。
この大会では時間が勝負のカギになってくるので、戦いも速攻で決めなければならない。
だが、俺のパーティは正直強い。
大会でも何度か優勝したことがある。
心配はいらないはずだ。
70レベに達しているプレイヤーは一度や二度しか見たことがない。
連携もとれたこのパーティはもはや無敵に近い。
まだ朝7時。少し時間はある。
飯でも食おう。
昨日コンビニで買ったおにぎりを腹の中にぶち込む。
ツナマヨはうまい。
誰が作ったのかはしらんがまじでうまい。
ツナマヨを考えた人間は天才・・・いや神かもしれない。
だがこうして毎日おにぎりばっか喰っていては、健康に悪い。運動をしたらどうだろうか。
話にならない。
こんな状態で、運動なんかしたら体が滅びるに違いない。
なにはともあれ俺は外に極力出ない。
外の世界は嫌いだ。
リアルは嫌い。
人間は嫌い。
一服しながら時間を待つ。
・・・・・・・・・・
司会者「お待たせいたしました。これより第7回デストロイ・オンラインチャンピオンシップを開催いたします!!!」
「うおおおおおおおおおおおお」
プレイヤー達の雄たけびが会場を圧倒させた。
司会者「では予選を始めますので、準備を始めてください!」
なぜか、俺は表情がニタついていた。これから始まる戦いにわくわくして笑いが止まらない。この感覚はもはや、ゲームの世界だけに通用する。
自室に戻り、アイテム、武器、装備品を装着。 パーティルームへ。
BRACK PEACE「待ちくたびれたね。」
KEI「大暴れしてやるぜ!」
JANET「頼むぞKEI!!!」
だぶるじぇい「私もがんばらなくちゃ^^」
須具流「負けるわけにはいかんわ。」
総当たり戦が開幕する。
第一試合・・・
「よろしくおねがいします」
「おいおい一やべえのいんぞwww」
「終わった・・・早く殺してw」
「よろ」
相手チームは俺のレベルを見て唖然とする。
無理もない。
平均的なチームの中に一人だけ、鬼がいるんだからな。
さておき、速攻で潰す。
・・・・・・・・・・・・・・
二時間で10勝をなしとげた。
これだけ早い勝利は俺らのパーティだけだと思う。
これなら待ち時間も長くなりそうだ。
・・・・・・・・・
ん?
あきらかに俺達よりも早く勝利しているチームがある。
おかしいな、俺らは速かったはずだ。
だが問題ない。
速さだけで強いとは限らない。
時間を稼いで戦うパーティもあるわけで、遅く終わるパーティもいる。
しかし、俺達よりも早いパーティって相当だぞ・・・。
トーナメントも始まり、順調に勝ち進んでいった俺達は決勝戦まで上り詰めた。
準決勝で平均レベル56と当たって少し危なかったためか、パーティメンバーは疲れていた。
最後の戦い。
これで勝てばまた俺達のパーティの知名度は上がる。
・・・・・・・・・・・
「よろしく」
「よろしくおねげえします」
「よろ」
「よろしくお願いします」
「よろしゅう」
・・・・・・・・・・・・・・・
は?
相手チームにあり得ないプレイヤーが一人いる。
87レベ・・・・
あきらかにおかしい。
ゲームのやりすぎで疲れているのか・・・・
昨日の8時からやって現在一時。
17時間ぶっ続けで画面を見ている。
目がおかしくなったか。
目をこすってみたが87という数字に変わりはなかった。
嘘だろ・・・・。
対戦が始まる。ステージは惑星ベルボロスの闘技場。なにもない無空間で戦う。攻撃が当たりやすいが、一方で自分が受ける時、よけるのも至難の技になってくる。俺ほどまでに行くと、余裕で出来るが・・・
相手チームの他の四人はなんと平均レベル30だ・・・
なんなんだ・・・いったい・・・
まずはスタート直後から一斉に30レベのザコを潰す。
そこでチャットを開いて尋ねる。
KEI「あんた・・・何者だ?」
相手のプレイヤーはコメントを返してきた。
ZERO「ワレハカミナリ・・・」
神???
ふざけやがって、殺してやる。
全員一斉に攻撃を繰り出す。
しかし、攻撃は無効化され相手プレイヤーは一ダメージもくらっていない。
「ちっっ、なんなんだ?」
相手プレイヤーの一撃放った光線で俺以外のプレイヤーは死ぬ。
俺はかろうじて、HPが残ったがここから逆転できる計算などは存在しない。
最後のMPをフルで使用した大魔法攻撃を発動。
しかし無効化。
その後相手プレイヤーかからの攻撃で俺は死んだ。
敗北。
・・・・・・・・・・・・
ふときずけば寝ていた。
思い出した。
俺は決勝戦で敗北した。
そのショックでパソコンを強制シャットダウンさせ、爆睡に入った。
起きたのは朝六時。
パソコンを一度開く。
ログイン。
終わった。
俺が大金をつぎ込んでパワーアップさせてきたアバターが一瞬で潰された。
当然、武器、アイテム、装備品はすべて消えていた。
「くそがああああああああああああ」
パソコンを殴りつける。
「クソっっ、クソっっ!!!」
落ち着かない。
何もかも。
しばらく経つとメールが届いていることに気付いた。
メールは駿からのものだった。
内容は、久しぶりに外に出ないか?とのことだった。
今、外に出られる自信がない。
何をしでかすかわからない。
自分でも怖い。
うわあああああああああああああああああああ
無造作に頭をかきむしりその場に倒れた。
そのまま意識を失った。