7話
バタン! と勢いよく職員室の扉が開け放たれました。
「クリス先生! どうして来ないんだよ、校門でずっと待ってたんだぞ!」
他の教師たちが驚いて顔を上げるのも構わず、アイナはずかずかと入り込み、叫びました。
「おお、アイナ。実は今、大変に重要な調査をしているところなんだ」
クリスは至極真面目な顔で、山積みのメモを前に答えます。
「調査?」
「今から我々二人で私の父上の家に行くわけだけど、その時に手土産を持って行った方が良いんじゃないかという、素晴らしく良い提案を教頭先生にされたんだ」
「手土産か。たしかに貰ったら嬉しいけど、わざわざ親に会いに行くのに手土産なんか必要か?」
アイナが首を傾げると、クリスは深刻な面持ちで声を潜めました。
「実は、うちの父は最近結婚したんだ。それも、自分よりも十歳以上も若い女性とだ」
「どういうことだ?」
「母さんは俺が小さい頃に亡くなっていて、家事が大変だからとうちはずっと家政婦さんに来てもらっていたんだけど、ここ最近来てくれていた家政婦さんと結婚したって言うんだよ。俺がスパニッシュ国に剣士の修行に行っている間にな」
「そうだったのか。つまり手土産というのは、新しく母になる人に、ということか」
「そういうことだ。実は私も新しい母さんと顔を合わせたことがないんだ」
クリスの言葉に、アイナは少し気まずそうな顔をしました。
「おいおい、ちょっと待ってくれ。そしたら、ケント先生のことを聞きに行くのは、違う日にした方が良いんじゃないか?」
「どうしてだ?」
「新しい母親と初めて会うんだろう?」
「そうだ」
「そういう時には、家族水入らずというか、他の用事は入れない方が良いと思うぞ」
「何言ってんだよ。アイナはケント先生がどうして学院を辞めることになったのか、早く知りたいだろう? そう言っていたじゃないか」
「そりゃあ、そうだけど……」
アイナは曖昧に頷きました。
「ということで、先生方に手土産は何が良いのか、今聞いて回っているんだよ。私は最近戻ってきたばかりで、王都の流行りなどはあまり知らないからな」
「それじゃあ、私も協力するよ!」
「助かる。それじゃあ、アイナには書記をやってもらおうか」
「任せとけ!」
二人は意気揚々と、隣のデスクの教師に「おすすめの菓子は何か」と熱心に聞き始めました。
しかし、彼らはまったく気が付いていません。窓の外では分厚い雲が天を覆い、刻一刻と夜が近づいていることに。
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