19話
静寂が支配する部屋の中で、ブライトが静かに問いかけました。
「引っ越しは、いつかな?」
「明日の、早朝に……」
「そうか……」
ケントの答えを聞き、ブライトはしばらくの間、深く考え込みました。
「そのことを、誰かに話しましたか?」
「ええと……隣近所の人たちには挨拶を済ませましたが、それが何か?」
問い返すケントの顔色が、不安に曇っていきます。ブライトは厳しい表情を崩さないまま告げました。
「それならば……敵が仕掛けてくるのは、今日の夜中ということだ」
「まさか!?」
ケントは驚き、椅子を蹴るようにして立ち上がりました。
「ケントさん。こういう輩というのを私も何人も見てきましたが、彼らは驚くほど執念深い性格をしている。一度失敗したくらいで諦めたりはしません。間違いなく、次は確実に成功させようと策を練っているはずです」
ケントは悔しさに歯を食いしばり、拳を震わせました。すると、その体から赤い靄が立ち上ります。
これは『魔靄』と呼ばれる現象で、強大な魔力を持つ者が感情を激しく高ぶらせた際、制御しきれない力が体外へ漏れ出すものです。室内には、肌を刺すような緊張感が走りました。
「まあ、落ち着きなさい。幸いにして時間はまだありますし、何より、貴方は一人ではありませんぞ」
ブライトは怯むことなく、そっとケントの肩に手を置きました。
「え……」
ケントが顔を上げ、周囲を見回すと、そこには力強く頷く者たちの姿がありました。
「ケント先生! 私たちがいます。一緒に悪党を懲らしめましょう!」
アイナは、その大きな瞳に決意の炎を宿し、力強く言い切りました。クリスもまた、頼もしい笑みを浮かべて愛剣の柄に手をかけています。
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