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11話

 食後の話し合いが始まりました。


 リビングの椅子に深く腰掛けたブライト、クリス、そしてアイナ。外では依然として、屋根を叩く夜の雨音がかすかに響いています。


 アイナが身を乗り出して口を開きました。


「私が聞いた噂では、クリス先生を教師として招き入れたい偉い人がいて、そのためにケント先生をクビにしたという話なんです。だからケント先生は、生徒たちにさよならの挨拶をすることもなく、突然学校を辞めてしまった。ケント先生はAランク剣士だけど、平民の出自だから貴族からの圧力に逆らえなかったと……」


 その言葉に、クリスは深く頷きながら言葉を返しました。


「なるほど。そういうことなら、アイナが最初に怒っていた理由も納得だ。信頼している先生が権力者の都合で急に辞めさせられたのなら、私でも腹が立つ」


「それは前にも説明しただろ! なんで初めて聞いたみたいな顔をしているんだよ」


 アイナがクリスに向かって強めに詰め寄りましたが、クリスは平然と言い返しました。


「いや、なんとなくは覚えていたよ。ただ、ちょっと細かいところを忘れただけだ」


「それは、私が知っている事実とは違うね」


 ブライトが穏やかな口調で語り始めました。


「クリスに学院の剣術教師を勧めたのは、私だ。それがクリスのためになると思ったからね。私にその話を持ってきたのは学院長のモドランさんだが、彼が言うには、剣術担当の教師が突然『辞めたい』と申し出てきたそうなのだよ」


「突然……ですか?」


「そう。それを聞いて学院長は驚いたらしい。普通なら数か月前に相談するのが道理だからね。だけど彼の意志は固く、謝罪はしても撤回の意思は揺るがなかった」


「やはり何かがおかしいです。生徒にも礼儀正しかったケント先生が、そんな自分勝手なことを言い出すなんて……」


「学院長が急いで新任の教師を探し始めたのだけど、三人に声をかけて、すべて断られてしまった。学院の剣術教師は最低でもBランク以上でなくてはならないが、それほど腕の立つ剣士はどこも引っ張りだこだからね。困っていた時に、最近クリスがSランクの試験に合格したことを噂で聞いたらしい。そこで知り合いの伝手を使って、私に話を持ってきたのだ」


「そうだったのですか……」


「ケント先生がどうして急に教師を辞めることにしたのかは、学院長も知らないと言っていたよ。聞いても『一身上の都合』としか言わなかったそうだ」


 リビングは一瞬、静寂に包まれました。再び屋根を叩く雨の音だけが、やけに大きく聞こえます。


「これは推測だけど、ケント先生にはここ最近で、何か急激に心変わりするような出来事が起きたのかもしれないね。学院長の話では、ケント先生は非常に真面目で、教師としても熱心で、生徒からも同僚からも信頼されていたらしいから……」


 ブライトが話を終えるよりも早く、アイナの表情が劇的に変わりました。


「もしかして……!」


 アイナは、何か決定的な事実に気が付いたようでした。


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