第7話 婚礼の夜に花が咲く
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本作は「ESN大賞9」参加作品です。
現代の極道のお嬢が奈良時代の光明子に転生し、チート《つぶやいたことが現実になる》で歴史をぶっ壊す物語。
権力、恋、仏教、陰謀、すべてをオラオラで乗り越えます!
歴史改変×成り上がり×オラオラ皇后伝――どうぞ最後までお楽しみください!
――平城京の夜が、黄金色に揺れていた。
香炉の煙がゆらめき、笙と琵琶の音が響く。
唐風の衣が翻り、宮中はまるで極楽のよう。
今日はあたし――光明子の婚礼の日。
父である藤原不比等の後押しで、あたしと首皇子の結婚が決まった。
あたしも十七歳になったらしい。
やるしかない。
「姫様、まぶしすぎます……」
サチが目を潤ませている。
「そりゃそうよ!」
口元を引き上げる。
だが胸の奥は、ずっとざわついていた。
――この夜を境に、あたしの人生が変わる。
琵琶の音が高く響く。笠目の采女が舞う。
裾が金の光を散らしている。
香の煙が渦を巻き、不比等邸が白い夢に包まれる。
「これが奈良時代の婚礼か……」
思わずつぶやいたその時――
「ぎゃああああ!」
どこからか悲鳴があがった。
御簾の陰から飛び出したのは――黒い塊。
「わんっ!」
……あの犬だ。でかい。
白絹のテーブルクロスを駆け抜け、供物をなぎ倒し、笙を吹いていた楽人を転がした。
「な、なんだこれは!?」
「県犬養夫人の犬でございます! 放れてしまいました!」
サチが悲鳴をあげ、女官たちが逃げ惑う。
笠目は冷静に琵琶をかき鳴らす。
「……音を止めてはなりません!」
「あたしに任せろ!」
あたしは裾をまくって、犬へダッシュ。
「こらコラァ! 止まれぇ!」
唐衣の裾がバッと舞い、金の刺繍がきらめく。
犬は驚いて立ち止まった――そして、くるりと回って尻尾を振る。
「お? ……お前、悪いやつじゃねえな」
しゃがんで撫でると、犬はぺろりと手を舐めた。
ざわついていた殿中に、笑い声が広がる。
「姫様、見事です!」
「県犬養の犬も姫様に平伏しております!」
元正天皇が笑いながら拍手した。
「面白い子ね。婚礼の場で犬を従えるとは!」
空気が一気に和む。
あたしは笠目に目配せする。
「笠目さん、いくよ――踏歌で締めだ!」
琵琶が鳴り響く。
笙、箏、太鼓。
人々が足を踏み鳴らす。
笠目とあたしの弦が重なり、
「さくら~さくら~♪」
あたしはつぶやいた。
「花びらよ、舞い散れ~」
音と香が混ざり、桜の花びらが舞った。
天井から光が降り、黒い犬まで尻尾を振りながらくるくる回る。
宮子さまの黒猫クロエもサチに抱かれてやってきた。
「みゃあ」
「すごい……花が咲いてる!」
「これは瑞兆だ! 光明子様の御徳にちがいない!」
宮中の人々が沸き立ち、
元正天皇が笑った。
「都に春が来たようね。――光明子、幸せになりなさい」
舞が終わると、静かな夜風が流れた。
香の煙がまだ漂っている。
その中で、首皇子が歩み寄ってきた。
「……アスカ……いや、光明子」
低く、やさしい声。
「君と……ふたりきりになりたい」
彼はそっと手を差し出す。
あたしの手を取って、導く。
「来て。我らの部屋へ」
そこは……なんと見事なペルシャの絨毯!?
目を見張った。部屋の中は異国の香りで満ちていた。
金糸の帳、銀の灯台、銀の回転香炉。青いグラス。
すべてが、彼の繊細な世界そのものだった。
「この香は?」
「ペルシャの使節が持ってきた青の香。この時のためにとっておいた」
彼が顔が近づく。
頬が熱くなる。
指が髪をなで、囁く。
「子供の頃から……ずっと惹かれていた。」
心臓が跳ねた。
おらおら娘のサツキが、完全に言葉を失う。
ただ、目の前の皇子の瞳が、真っ直ぐ近づいてくる。
(……なんだよこれ。ずりぃじゃん)
彼の香りが、……近づく。
やわらかく、音もなく。
「……負けたわ。ダーリン。」
その夜、都に咲いた桜は――恋の香がした。
♪黒猫クロエの奈良情♪♪
なぜ首皇子は、光明子をアスカと呼ぶのかにゃ。
藤原安宿媛と呼ばれていた。
藤原氏の荘園が安宿にあったから、その地にちなんだ名前だにゃ。
だから、不比等邸で一緒に育ったふたりは、遊び仲間であり学問仲間であり、いたずら仲間であったはず。
幼い頃は、「おびちゃん」「あすちゃん」と呼び合っていたかも。
十代では「おびとさま」「アスカ」だったかもしれないにゃ。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!
現代の極道のお嬢が奈良時代の光明子として生まれ変わり、
歴史と恋と権力をオラオラで突き進む物語――いかがでしたか?
光明子の「怒り」は、時代を越えても通じる女の強さ。
どんな時代でも、あたしたちは自分の信じる正義で生きていける。
そんな想いを込めて書きました。
感想をいただけるとすごく励みになります。
「ESN大賞9」参加作品として挑戦中!
最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
次回もどうぞお楽しみに!




