表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/35

第7話 婚礼の夜に花が咲く

ご覧いただきありがとうございます!

本作は「ESN大賞9」参加作品です。

現代の極道のお嬢が奈良時代の光明子に転生し、チート《つぶやいたことが現実になる》で歴史をぶっ壊す物語。

権力、恋、仏教、陰謀、すべてをオラオラで乗り越えます!

歴史改変×成り上がり×オラオラ皇后伝――どうぞ最後までお楽しみください!

――平城京の夜が、黄金色に揺れていた。


香炉の煙がゆらめき、しょう琵琶びわの音が響く。

唐風とうふうの衣がひるがえり、宮中はまるで極楽のよう。

今日はあたし――光明子サツキの婚礼の日。


父である藤原不比等ふひとの後押しで、あたしと首皇子おびとおうじの結婚が決まった。

あたしも十七歳になったらしい。

やるしかない。


「姫様、まぶしすぎます……」

サチが目を潤ませている。


「そりゃそうよ!」

口元を引き上げる。

だが胸の奥は、ずっとざわついていた。

――この夜を境に、あたしの人生が変わる。


琵琶の音が高く響く。笠目かさめ采女うねめが舞う。

裾が金の光を散らしている。

香の煙が渦を巻き、不比等邸が白い夢に包まれる。


「これが奈良時代の婚礼か……」

思わずつぶやいたその時――


「ぎゃああああ!」


どこからか悲鳴があがった。

御簾みすの陰から飛び出したのは――黒い塊。

「わんっ!」


……あの犬だ。でかい。

白絹のテーブルクロスを駆け抜け、供物そなえものをなぎ倒し、しょうを吹いていた楽人を転がした。


「な、なんだこれは!?」

県犬養あがたいぬかい夫人の犬でございます! 放れてしまいました!」


サチが悲鳴をあげ、女官たちが逃げ惑う。

笠目は冷静に琵琶をかき鳴らす。

「……音を止めてはなりません!」


「あたしに任せろ!」

あたしは裾をまくって、犬へダッシュ。

「こらコラァ! 止まれぇ!」

唐衣の裾がバッと舞い、金の刺繍がきらめく。

犬は驚いて立ち止まった――そして、くるりと回って尻尾を振る。


「お? ……お前、悪いやつじゃねえな」

しゃがんで撫でると、犬はぺろりと手を舐めた。

ざわついていた殿中に、笑い声が広がる。


「姫様、見事です!」

「県犬養の犬も姫様に平伏しております!」


元正天皇が笑いながら拍手した。

「面白い子ね。婚礼の場で犬を従えるとは!」


空気が一気に和む。

あたしは笠目に目配せする。

「笠目さん、いくよ――踏歌とうかで締めだ!」


琵琶が鳴り響く。

笙、箏、太鼓。

人々が足を踏み鳴らす。

笠目とあたしの弦が重なり、

「さくら~さくら~♪」


あたしはつぶやいた。

「花びらよ、舞い散れ~」


音と香が混ざり、桜の花びらが舞った。

天井から光が降り、黒い犬まで尻尾を振りながらくるくる回る。

宮子さまの黒猫クロエもサチに抱かれてやってきた。

「みゃあ」


「すごい……花が咲いてる!」

「これは瑞兆ずいちょうだ! 光明子様の御徳おんとくにちがいない!」


宮中の人々が沸き立ち、

元正天皇が笑った。

「都に春が来たようね。――光明子、幸せになりなさい」


舞が終わると、静かな夜風が流れた。

香の煙がまだ漂っている。

その中で、首皇子が歩み寄ってきた。


「……アスカ……いや、光明子」

低く、やさしい声。

「君と……ふたりきりになりたい」


彼はそっと手を差し出す。

あたしの手を取って、導く。


「来て。我らの部屋へ」


そこは……なんと見事なペルシャの絨毯!?

目を見張った。部屋の中は異国の香りで満ちていた。

金糸の帳、銀の灯台、銀の回転香炉。青いグラス。

すべてが、彼の繊細な世界そのものだった。


「この香は?」

「ペルシャの使節が持ってきた青の香。この時のためにとっておいた」



彼が顔が近づく。

頬が熱くなる。

指が髪をなで、囁く。


「子供の頃から……ずっと惹かれていた。」


心臓が跳ねた。

おらおら娘のサツキが、完全に言葉を失う。

ただ、目の前の皇子の瞳が、真っ直ぐ近づいてくる。


(……なんだよこれ。ずりぃじゃん)


彼の香りが、……近づく。

やわらかく、音もなく。


「……負けたわ。ダーリン。」


その夜、都に咲いた桜は――恋の香がした。



♪黒猫クロエの奈良情♪♪


なぜ首皇子おびとおうじは、光明子をアスカと呼ぶのかにゃ。

藤原安宿媛ふじわらのあすかべひめと呼ばれていた。

藤原氏の荘園が安宿にあったから、その地にちなんだ名前だにゃ。

だから、不比等邸で一緒に育ったふたりは、遊び仲間であり学問仲間であり、いたずら仲間であったはず。


幼い頃は、「おびちゃん」「あすちゃん」と呼び合っていたかも。

十代では「おびとさま」「アスカ」だったかもしれないにゃ。



最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!

現代の極道のお嬢が奈良時代の光明子として生まれ変わり、

歴史と恋と権力をオラオラで突き進む物語――いかがでしたか?


光明子の「怒り」は、時代を越えても通じる女の強さ。

どんな時代でも、あたしたちは自分の信じる正義で生きていける。


そんな想いを込めて書きました。

感想をいただけるとすごく励みになります。


「ESN大賞9」参加作品として挑戦中!

最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。


次回もどうぞお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ