第6話 笠目の采女と琵琶の調べ
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本作は「ESN大賞9」参加作品です。
現代の極道のお嬢が奈良時代の光明子に転生し、チート《つぶやいたことが現実になる》で歴史をぶっ壊す物語。
権力、恋、仏教、陰謀、すべてをオラオラで乗り越えます!
歴史改変×成り上がり×オラオラ皇后伝――どうぞ最後までお楽しみください!
「姫様、足もとにお気をつけて」
雑司女サチが小声で言う。
元正天皇の采女とやらに会いに来た。
廊下を進むと、よい香りがふんわりと漂ってきた。
その奥、御簾の向こうでは――やわらかな音が流れている。
琵琶の音。
ゆるやかで、春の風みたいに優しい音だった。
「この音……好きかもしれない」
思わずつぶやくと、御簾の中から声がした。
「お入りなさい」
御簾が上がり、そこにいたのは一人の女。
サチがささやく。
「笠目の采女でございます。
えっと、采女というのは地方から献上された奉公女。
この采女は伊勢の郡司から献上された者です。
ごらんのとおり、美しく宮中の男性にはもてもてなんです」
なるほど! 古代の美女は白くふくよか。
外を歩けば、骨と皮ばかりのやせ細った人ばかりを見かける。
白くふくよかな女性は、外での労働をしないで食事をとることができるという。つまり、食っていけるのが美人ってことか?
サチが続ける。
「歌舞音曲が得意なので、儀式の時など注目の的なんですよ。姫様も、手習いをなさっては?」
笠目の采女は、艶やかな黒髪に金の簪を挿し、琵琶を膝にのせ、やさしい目でこちらを見つめていた。
ーーうわ、美しい! 細い目、すっとした鼻。ぽってりした唇。細くて長い手指。
現代でも間違いなく《《もてもて》》だ。
うちの組に来てくれたら、組員みんなが一列に並んで深く頭を下げるだろう。最上級の敬意を払うレベルだ。
「ようこそ、光明子様。琵琶の弾き方をお忘れになったと聞きました」
「ええ……そうなの。頭をぶつけて何もかも忘れてしまって」
「それでは、さっそく」
笠目は微笑み、手をとって座らせた。
その手はあたたかくて、どきんとした。
彼女がつま弾く弦の音が、心地よく響く。
空気がやわらかく揺れた。
笠目は琵琶を差し出した。
「少し弾いてみましょう。心のままに。」
「え、ええ!? そんな急に!?」
「音には失敗などありません。」
戸惑いながらも、あたしは弦に指を置いた。
頭の中にふと、現代の記憶がよみがえる。
「さくら、さくら~♫」
軽く弦をはじく。
弾けるはずがない。
「この琵琶で『さくらさくら』という曲を弾きたい」
つぶやいてみた。
ぽろん――
ぽろん、ぽろん――
「さーくーらー、さーくーらー……」
気づけば、口ずさんでいた。
指が勝手に動く。
琵琶の音が、春の旋律を描く。
次の瞬間。
良い香りがした。
「お上……」
そこにいた者、誰もがひれ伏した。
「いいのよ。続けて」
サチが囁く。
「お上です(元正天皇・女性の天皇)」
「誰かと思ったら光明子ではないの。久しぶりねえ」
「すみません。頭をぶつけて、いろいろなこと思い出せなくて」
「あら、そうだったの。それにしても今の演奏、すてきだったわ。
さくら~さくら~やよいの空に みわたすかぎり~♪」
お上(元正天皇)が歌い始めた。
あたしは慌ててバチをとった。
思ったことが現実になるチート、
こうやって使えばいいんだ。
そうして、元正天皇とあたしは、うまくコラボした。
ふと見ると、たくさんの人が集まっている。
「采女や命婦たちです」
「この時代の音楽も奏でたい」――願った。
ひとりでに手が動く。琵琶が見事に鳴る。
人々が歌う。足を踏みならす。
そろって足を踏みならすので、すごく楽しい。盛り上がる。
「踏歌ですね。光明子様、お見事!!」
宮殿の人々がどんどん集まってくる。
男性も女性も。踏歌はさらに盛り上がる。
笠目も琵琶をかき鳴らす。
サチも足を踏みならし、歌を歌う。
笠目とあたしは琵琶を大きくかき鳴らし、あたしたちはジャンプで終えた。
大きな拍手。みんな息を切らしていた。
「あー、楽しかったわ」
元正天皇が大きく手を打った。
笠目が囁いた。
「光明子、またやりましょう!」
「おう! もちのろんよ!」
ライブを終えたミュージシャンの気持ちだった。
♪黒猫クロエの奈良情報♪
采女について説明するにゃ。
奈良・平安時代、地方の豪族(郡司など)の娘で、都の宮廷に奉仕者として献上された女性たちのことにゃ。
出身地ごとに「○○国采女」と呼ばれたにゃ。
主な役目は、天皇や皇族に仕えること。衣装や食事の世話、歌舞音曲の奉仕。特に歌・舞・香・琵琶などが得意な者は、儀式や宴で演奏したにゃ。
美しく教養がある者は天皇の寵愛を受け、側室的な立場になることもあったにゃ。一方で、都のしきたりや嫉妬の渦の中で苦しむ者も多く、時には悲しい運命をたどったらしい。
笠目の采女は、後に飯高 諸高と呼ばれる。伊勢国飯高郡出身の采女の出で、多くの天皇に仕え、八〇歳まで生きた。異例の従三位に叙せられたにゃ。
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現代の極道のお嬢が奈良時代の光明子として生まれ変わり、
歴史と恋と権力をオラオラで突き進む物語――いかがでしたか?
光明子の「怒り」は、時代を越えても通じる女の強さ。
どんな時代でも、あたしたちは自分の信じる正義で生きていける。
そんな想いを込めて書きました。
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「ESN大賞9」参加作品として挑戦中!
最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
次回もどうぞお楽しみに!




