第30話 聖武天皇 最期の夜 ――光が還る場所
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現代の極道のお嬢サツキが奈良時代の姫・光明子に転生し、チート《つぶやいたことが現実になる》で歴史をぶっ壊す物語。
ただし、チートで歴史を変えることはできません。
権力、恋、仏教、陰謀、すべてをオラオラで乗り越えます!
歴史に忠実×成り上がり×極道流処世術――どうぞ最後までお楽しみください!
その夜、風がやけに静かだった。
春だというのに冷たくて、まるで世界が息をひそめているようだった。
あたしは、掌の上の冷たい油皿をそっと床に置いた。
聖武――
ダーリンは、几帳の奥の寝台で横たわっていた。
あの大仏開眼の日から、彼の体は急に弱りはじめた気がする。
あれが最後の大仕事だったのだろう。
以降、抜け殻となっていた。
「光明……そこにいるか」
掠れた声に、胸が締め付けられる。
「いるわよ。どこにも行かないわ」
几帳をそっと開けると、
ダーリンと目が合った。肌は青白い。もう起き上がるのも難しい。
陽宝剣と陰宝剣を枕元に置いている。
「宝剣をこれに……」
あたしは陽宝剣をダーリンの体の左側に置いた。
ダーリンはそれに触れて、微笑んだ。
「あれは光明子が持て」
あたしは陰宝剣をダーリンに見せ、自分の腰に差した。
ダーリンは嬉しそうにうなずいた。
ダーリンは死期を悟っている。
この後、命が尽き、多くの人に亡骸を見られることを知っている。
最期までしっかりとした姿でいたいんだ。
ペアの宝剣をあたしと一緒に身につけて、逝きたいんだ……。
「……あの日の光、見たな」
「見たわ。
あなたの祈りが、大仏の瞳に宿った瞬間を」
ダーリンはゆっくりと微笑んだ。
穏やかで、少年みたい。
「私の願いは……国が安らかであること。
……それだけだった」
「知ってる。
あんたがどれだけ悩んで、どれだけ苦しんで……
それでも祈り続けたのか、全部知ってるわ。
でも、疫病も地震もダーリンのせいじゃないからね。
ダーリンは国で起こった悪いことは全部自分のせいだと思い詰めてしまう。それは違う。絶対に違う!」
「そんな風にかばってくれるのは……光明子だけだった。
全ての人が、責任は天皇にあると言い放った」
「あたしは、科学を知っているからね」
ダーリンはふっと笑った。
「遺言がある。
……天武天皇の二世王・道祖王を皇太子にする」
「わかったわ。すぐに知らせる。……誰か!」
控えていた文官が立ち上がった。
「承知。太上天皇さまのご遺言。
天武天皇の二世王・道祖王を皇太子にするとの仰せ」
宮廷を駆け巡る足音、遺言を知らせる声が響き渡る。
役人たちはこれから大騒ぎだわ。
道祖王へ知らせが走り、儀式の準備が始まる。
「さあ、ダーリン、ゆっくり休んで。
明日は花を摘んできてもらいましょう。
奈良の都も、今や花盛りよ」
「いや、……明日は……もういない。
花は……私の思い人……光明子に」
鼻の奥が痛くなって、涙が零れそうになる。
でも、ダーリンの前では泣き顔なんて見せたくない。
「ダーリン!」
あたしは手をとり、ほおずりした。
「孝謙を……頼む。
あの子は優しすぎる。
私によく似て……傷つきやすい」
「安心して。
母のあたしがついているし、
あの子には帝の器があるわ。
あなたが育てたのよ、あのまっすぐな心を」
ダーリンは静かに目を閉じ、 細い息を吐いた。
それはまるで
最後に心の荷物を手放すような、 安らぎの息だった。
「光明。
……今まで、ありがとう」
「こちらこそ。
あなたと生きられて……幸せだったわ」
「……仏の道で……また……会おう」
その言葉のあと、
ダーリンの指がゆっくりと力を失っていった。
灯心の火が、ふっと揺れる。
「……ダーリン! ダーリン!!」
いくら呼んでも、もう返事はなかった。
「太上天皇さま、崩御」
ダーリンとあたしを残して、宮廷は騒ぎに包まれた。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!
いかがでしたか?
時代を越えても通じる女の強さ。
どんな時代でも、あたしたちは自分の信じる正義で生きていける。
そんな想いを込めて書きました。
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次回もどうぞお楽しみに!
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歴史部門:なろう日間2位 週間2位 月間2位 四半期2位 (1位はとれない)
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