第20話 甥っ子広嗣の乱
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現代の極道のお嬢サツキが奈良時代の姫・光明子に転生し、チート《つぶやいたことが現実になる》で歴史をぶっ壊す物語。
ただし、チートで歴史を変えることはできません。
権力、恋、仏教、陰謀、すべてをオラオラで乗り越えます!
歴史に忠実×成り上がり×極道流処世術――どうぞ最後までお楽しみください!
ダーリン・聖武天皇とその母・宮子が、三十六年ぶりに――生まれて以来初めて、対面した。
涙がこぼれるほどの再会。その裏で力を尽くしてくれたのは、二人の人物だった。
それは、僧・玄昉と吉備真備。
二人は共に唐へ渡りって日本に帰ってきたという経験を持つ。
いわば、苦楽を共にした近しい間柄だ。
玄昉は中国でも高い位を受けており、時の皇帝・玄宗から紫の袈裟をいただいている。
医療にも、とても詳しい。
吉備真備はとても博識。つまり、何でも知っている。
生きるウィキペディアのような方。
遣唐使の留学生として渡ったが、苦学をしたという苦労人。
義母・宮子さまの病を治し、すっきりした笑顔を取り戻したのは玄昉のおかげ。
聖武天皇はふたりを側に置き、何かと訊ね相談している。
またダーリンと宮子さまと対面を実現した功績で、官位も上がり出世したのは事実。
――だが。
それが、それがだ。
面白くないという人がいる。
九州・大宰府で任官している藤原広嗣だ。
実は、藤原四兄弟の三番目・宇合の息子である。
だから、あたしの甥っ子。
そういう理由もあり、ダーリンは目をかけてくれていた。
兄・宇合は広嗣に凶暴な一面があることに気づき、追放しようとしていた。
兄たちが死んだあと、藤原一族の勢力が弱まったため、広嗣が一族の悪口を言いふらすことがあった。
その結果としての左遷、大宰府での任官だった。
皆が「お願い、大人しくしていて」と思っているのに、あろうことか、玄昉・吉備真備の追放を訴えたのだ。
これにはダーリンも怒り、ついにクーデターだと判断した。
「ねえ、光明子。甥っ子の広嗣のことだが、やはり放っておけない」
ダーリンの声は沈み、手が震えていた。
「しかたないわ」
あたしは彼の肩に手を置いた。
こうなる予感は、ずっと前からあった。
そして、甥っ子は九州で討たれ、死んだ。
これまでは、藤原一族が権力を守るため、反対勢力を討つことがあった。
しかし、今回はダーリンによる、藤原氏征伐だった。
甥っ子が死んだあと、やはり後味が悪く、ダーリンはまた自分を責めていた。
その夜、あたしのところに来た。
雨の匂いが残る衣をまとい、よろよろと。
「ごめんよ、光明子……かわいい甥っ子を殺してしまった。許して……」
ダーリンは、まるで少年のようにあたしを強く抱きしめてきた。
あたしは、その胸に顔を埋めた。
ダーリンの苦しみが全部、伝わってくる。
泣き声に似た震えを、ただ静かに受け止めた。
――あなたは弱くなんかない。
この国のために、正しい方法を選んだだけ。
その痛みを、あたしが抱えるから。
あたしはダーリンの背にそっと手を回し、
その罪も悲しみも、全部胸の中で包み込んだ。
玄昉と吉備真備は静かに控えている。
彼らの顔にも疲れがにじんでいた。
広嗣の件で命を狙われ、悪口を浴びせられ、
それでも天皇のそばで支え続けてきたのだ。
「玄昉、真備……すまぬ。そなたらのせいではないのに……」
ダーリンの声は低く震えた。
玄昉は静かに頭を下げた。
「陛下。人は己の心を映すもの。藤原広嗣の乱心は、我らの責ではありません」
吉備真備も、書物をめくりながら言う。
「国を動かすというのは、命を背負うこと。陛下だけが苦しむ必要はありませんぞ」
でも、ダーリンは首を振った。
「広嗣は……光明子の甥だ。わたしは……親族を討ったのだ」
どう慰めても、堂々巡りだ。ダーリンは迷路の中にいる。
その時だった。
玄昉が静かに進み出る。
「陛下。この国を覆う混乱と恐怖を、どうか別の光に変えてください」
「光……?」
玄昉は深く頭を垂れた。
「はい。仏の力をお借りし、この国に安らぎの形を示すのです。
民も、貴族も、僧も……皆がその前で祈れる大きな象徴を」
真備も続ける。
「国が乱れている時、必要なのは中心です。誰もが迷わず向かえる道しるべを、陛下が示すべきです」
ダーリンは二人を見つめたまま、しばらく黙りこんだ。
その沈黙の奥に、迷いと孤独と、わずかな希望が揺れていた。
あたしはダーリンの肩にそっと触れた。
「あなたが作る光なら、人はついてくる。絶対に」
ダーリンの瞳に、ようやく小さな灯がともった。
「……光か。
ならば……わたしは、この国のために仏の光を作ろう」
玄昉が深く礼をし、真備は静かな笑みを浮かべた。
「光明子。
わたしは……大きな仏を……この国のために造りたい」
その声は震えていたけれど、確かな決意が宿っていた。
あたしは強く頷いた。
「一緒に作りましょう。
この国を救う、誰もが見上げる仏を」
こうして――
藤原広嗣の乱を越え、
ダーリンの罪と痛みを越え、
ついに聖武天皇は心を決めた。
東大寺大仏造立という、天平の大事業が、ここから始まった。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!
いかがでしたか?
時代を越えても通じる女の強さ。
どんな時代でも、あたしたちは自分の信じる正義で生きていける。
そんな想いを込めて書きました。
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次回もどうぞお楽しみに!
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歴史部門:なろう日間2位 週間2位 月間2位 四半期2位 (1位はとれない)
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