第2話 奈良転生☆チュンチュン地獄へようこそ!
ご覧いただきありがとうございます!
本作は「ESN大賞9」参加作品です。
現代の極道のお嬢が奈良時代の光明子に転生し、チート《つぶやいたことが現実になる》で歴史をぶっ壊す物語。
権力、恋、仏教、陰謀、すべてをオラオラで乗り越えます!
歴史改変×成り上がり×オラオラ皇后伝――どうぞ最後までお楽しみください!
――チュン、チュン、チュン。
うーーーん。よく寝た。
どこかで雀が鳴いてる。
柔らかい光が、まぶたの裏を金色に染める。
目を開けると――見慣れない天井。
蓮の花の模様が色とりどりに描かれている。
……え、どこ? なにこれ?
香木の匂いがふわりと漂ってくる。
絹の布団はとろけるほど柔らかい。
指先を滑らせると、床一面に織りのじゅうたん。
まるでペルシャ絵巻の中みたい。
……贅沢。贅沢すぎる。
「姫様……おはようございます」
白衣の女子が控えめに頭を下げた。
金の髪飾りが朝日を跳ね返してキラッと光る。
「さあ、朝粥をいただきに参りましょう」
なにこの完璧な世界。夢? 撮影?
……いや、転生したんだった!
奈良時代、光明子として――!
(落ち着け、あたし。ここからが本番!)
かわいい女子に支えられ、起き上がる。
足がふらりとした瞬間、絨毯のふかふか感。
素足……と思ったら、すぐに薄い布で包まれた。
動作がプロすぎて、ちょっと怖い。
「お髪を結わせていただきます」
櫛がサラサラ鳴るたび、柑橘の香油が香る。
頭上で金と瑠璃の飾りがカチャリと鳴った。
(うわ、リアル奈良貴族ビューティーセット。完全高級仕様)
朝の廊下はまぶしいほど白く、
光がゆらめき、甘い香りが漂っていた。
「食堂どこ?」と聞こうとした瞬間――
前方から、ケバい女が現れた。
化粧が濃い。紅がド派手。
(うわー、サリナ姐さん系……キャバクラ最強の口撃型。絶対めんどいタイプ)
背後にすらりとした三人の女性と、黒い犬。
その犬がでかい。毛艶は黒曜石。
鼻息ひとつで廊下の埃が舞う。
避けようとした瞬間、女が扇をバシッと開いた。
「ちょっと待ちなさいよ!」
「え?」
「これからわたくしの愛しい夫《夫》と結婚するくせに、第一夫人のわたくしに挨拶もできないの? 身分の低い人はやっぱりダメね!
婚約はとりやめて、他の道を探した方がよろしいんじゃない?」
(マウント来たー!)
「お、おはようございます」
無難に挨拶してみたが、笑い声は止まらない。
「あなたの食事、わたくしがもらってきたの。ありがたく思いなさいな」
銀の皿に白い粥をドボドボ。
香ばしい米の匂い――ん?
しゃがんで皿を取ろうとしたら、
女子が袖を引いた。
「姫様……それは犬用の皿でございます」
「……は?」
女が高笑いした。
「ほっほっほ。犬と一緒に食べるのね! クマちゃん、あの女と一緒に召し上がれ~」
呼ばれた黒犬が突進。
ガツガツガツガツ! 牙が銀皿を叩く音。
熱い息が頬にかかる。
筋肉の動きが目でわかる。――闘犬だ。
クマがこちらを睨む。
歯をむき、喉を鳴らした。
「ワンッ! ワンワンワンワン!!」
空気が震えた。
女子があたしの腕を掴む。
「姫様、帰りましょう!」
……無理。足が動かない。
転生したばかりで、朝メシ前に犬とマウントバトルとか、聞いてない。
喉が熱くなり、口から勝手に言葉が漏れた。
「……犬なんか、死ねばいいのに。」
ピキッ。空気が凍る。
犬が目をひんむき、泡を吹き、
「ウウウウッッッ――!!」
ドサッ。
床に倒れ、痙攣。
「クマ!? クマーッ!」
妃が悲鳴を上げる。
「誰か! この女が毒殺したのよ!」
兵たちが駆け込み、弓を構える。
すらりとした女が早口で叫ぶ。
「この女が、犬に毒を!」
「ちょ、違――!」
そのとき。
「どうしたぁ?」
――あの声。
昨夜の男、皇子が現れた。
金糸の衣が光を返し、黒髪が風に揺れる。
一瞬、彼の瞳が揺れた気がした。けれど次の瞬間、あの女を抱き寄せた。
「大丈夫だ。クマは薬師に診せよう。早く運べ」
女は涙声で訴える。
「皇子様、この女を病気のお母様のお世話係にでもなさって!
あんな不吉な女、顔も見たくありませんわ!」
「……そうしよう。その女を母上の館へ連れていけ。」
――あっけな。
転生一日目。
女に嫌われ、スパダリ皇子にスルーされ、病人の世話係に左遷。
朝の光がまぶしい。
雀がまだチュンチュン鳴いてる。
「……なにこの世界。チュンチュン地獄か」
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!
現代の極道のお嬢が奈良時代の光明子として生まれ変わり、
歴史と恋と権力をオラオラで突き進む物語――いかがでしたか?
光明子の「怒り」は、時代を越えても通じる女の強さ。
どんな時代でも、あたしたちは自分の信じる正義で生きていける。
そんな想いを込めて書きました。
感想をいただけるとすごく励みになります。
「ESN大賞9」参加作品として挑戦中!
最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
次回もどうぞお楽しみに!




