第19話 病の流行は長屋王の祟り
ご覧いただきありがとうございます!
現代の極道のお嬢サツキが奈良時代の姫・光明子に転生し、チート《つぶやいたことが現実になる》で歴史をぶっ壊す物語。
ただし、チートで歴史を変えることはできません。
権力、恋、仏教、陰謀、すべてをオラオラで乗り越えます!
歴史に忠実×成り上がり×極道流処世術――どうぞ最後までお楽しみください!
――それは、奈良の都を震わせた夏だった。
燃えるような朱の空の下で、
藤原四兄弟が、次々と倒れていった。
武智麻呂。
房前。
宇合。
麻呂。
この国の政治を支えてきた四つの柱――
まるで風に吹かれた灯のように、儚く消えていった。
それだけじゃない。
宮廷の貴族の半分が、次々と鬼籍に入っていった。
毎日のように届く訃報。
誰それ卿、死去――その文字を見るたび、胸の奥で何かが冷たく沈んでいく。
ダーリン・聖武天皇も、あたしも茫然と立ち尽くした。
政を動かす者たちが、ほとんどいなくなってしまったのだ。
兄たちを偲んでいる暇なんてなかった。
頭を失った巨人――この国の政治は、もう動かない。
経験の浅い若者たちが、恐る恐る机に向かう。
だが、誰も先を見通せない。
――都じゅうが、死の影に怯えていた。
人々は家にこもり、門に《《祈》》の字を貼りつけた。
昼も夜も、寺の鐘が鳴り響いた。
疫病。
呪い。
そして……祟り。
そう――誰もが口にした。
「長屋王の祟り」だと。
あの春、無実の罪で家族ともども自害させられた長屋王。
その怨念が、疫となって都を呑みこんだ。
信じない者なんて、ひとりもいなかった。
……あたしだって、そう思った。
現代から転生してきた科学の目を持つあたしでさえ、
まじ、祟りだ。祟りこえぇぇ……となっている。
あたしとダーリンは、長屋王の霊を鎮めようとした。
罪を消し、残された家族を助け、官位を戻し、領地を与えた。
寺に布施をし、僧を集めて鎮魂の祈りを捧げた。
できることは、全部やった。
でも――止まらない。
死の流れは、ますます勢いを増して都を覆っていく。
今日も届く死亡の知らせ。
「あの人も……?」
「えっ、まさか……!」
身分も、財も、若さも関係なかった。
疫は、すべてを平等に呑み込んでいった。
そんな地獄のような日々の中で――
ひとつだけ、奇跡のような光があった。
それは、母宮子様とダーリン(聖武天皇)の再会。
三十五年。
その長い年月、ふたりは一度も会うことができなかった。
藤原の父・不比等、そして兄・武智麻呂が
「皇の威を守るため」と称して、宮子様を隔離していたからだ。
母子の再会は、ずっと禁じられてきた。
けれど――
今、その障壁は、もうない。
みんな、いなくなってしまったのだから。
あたしは、宮子様の手を握った。
その手は冷たく、震えていた。
「宮子様、行きましょう。聖武天皇、いえ、首皇子がお待ちです」
扉を開けた瞬間、空気が止まった。
「……母上!」
「……ああ……」
宮子様は言葉を失い、その場に立ち尽くした。
涙が頬をつたって、光の粒になってこぼれ落ちる。
三十五年ぶりの母子の再会。
産まれてすぐに心を病み、
一度も抱きしめることができなかった母が――今、そこにいた。
ダーリンがそっと、その肩を抱く。
「母上……やっと……やっと……」
言葉は涙に溶けて、もう聞き取れなかった。
その光景を見た瞬間、あたしの胸もいっぱいになった。
控えていた侍女たちも、皆、袖で涙をぬぐった。
――母子の絆より家名を重んじる藤原家。
でも、愛は生き残っていた。
その夜、三人で食卓を囲んだ。
灯火がふわりと揺れて、黄金色の光が皿を照らす。
ダーリンは久しぶりに穏やかに笑い、
宮子様は、その笑みをまるで宝物みたいに見つめていた。
「こんな日が来るとは思ってもいなかった。
もう何も望むことはない。……幸せすぎて、もったいないくらい」
ダーリンは、あたしと宮子様を交互に見て微笑んだ。
「母上、光明子……
愛する者が、まだ《《ここ》》にいる」
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!
いかがでしたか?
時代を越えても通じる女の強さ。
どんな時代でも、あたしたちは自分の信じる正義で生きていける。
そんな想いを込めて書きました。
感想をいただけるとすごく励みになります。
次回もどうぞお楽しみに!
さとちゃんぺっ!の完結済み長編歴史小説、良かったら読んでください。↓
歴史部門:なろう日間2位 週間2位 月間2位 四半期2位 (1位はとれない)
源平合戦で命を落とす安徳天皇に転生した俺、死にたくないので、未来の知識と過剰な努力で、破滅の運命を覆します
https://ncode.syosetu.com/n7575kw/




