第12話 譲位の話、どうする? GOする?
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本作は「ESN大賞9」参加作品です。
現代の極道のお嬢が奈良時代の光明子に転生し、チート《つぶやいたことが現実になる》で歴史をぶっ壊す物語。
権力、恋、仏教、陰謀、すべてをオラオラで乗り越えます!
歴史改変×成り上がり×オラオラ皇后伝――どうぞ最後までお楽しみください!
元正天皇が首皇子とあたし・光明子を宮殿に呼んだ。
「首皇子。あなたは体も丈夫になったし、光明子と結婚して気持ちが安定している。阿倍内親王というかわいい娘もいることだし、そろそろ《《あなたに》》譲位したいわ」
「え?!」
首皇子が固まった。フリーズしてる。
「私が天皇に?!待って待ってよ、冗談でしょ。
まだ早いよ」
「いーえ、不比等が亡くなって、若い人と政をするのが、なんだかねえ、なんといったらいいかしら、つまり、荷が重くなったわ。
若い人たちには、若い天皇がふさわしい。そう、あなたみたいに」
「いやいやいやいや、まだまだまだまだ」
部屋の隅に控えている武智恵呂があたしをにらむ。
藤原四兄弟の1番目。不比等が亡くなって、不比等の位置に立っている。
その目が、「出番だろうがおまえ、わかっとんのか? 己の立場を。わからんのなら、ぶっとばすぞ、ごらあ」と言っているように見えるのは、育ちのせい?
ーー仕方ない。
あたしは、首皇子の手を握る。
「皇太子ってどなたでしたっけ?
もう10年も皇太子をなさっているお方はどなたでしたっけ?
《《あなた》》でしょ? 皇子さま」
首は上目遣いにあたしを見る。
「光明子ちゃん、君までそんなこというの?」
武智麻呂が歩み出る。
「父・不比等が亡くなって、上様(元正天皇)は、やはり気落ちされておりました。そろそろ、ゆっくりさせてあげてはいかがでしょうか」
首皇子は「うーん」と上を見る。
「政は、我ら藤原四兄弟がこれまで以上にお支えいたします。それに、皇子には、賢くも美しい光明子がいるではありませんか。先日も日本書紀を雑仕女に読んで聞かせておりました。
これは、一族の中でもずば抜けて賢い女性。皇子が即位されましても、おそばで共に歩んでくれましょう」
武智麻呂に足を踏まれた。あたしは応えた。
「はい、喜んで」
元正天皇が念を押す。
「よろしいですね、首皇子。譲位を決定しますよ?」
「うーーーーーーーん。うーーーーーーーん」
武智麻呂がいらいらしている。再び、足を思い切り踏まれた。
つぶやいた。
「首皇子が早く決断しますように」
彼はすぐに言った。
「いやだ」
武智麻呂がつぶやく。
「ん? なんとおっしゃったのかな? 最近耳が遠くて。……『承知した』とおっしゃったのに違いない。おい、お前たち入りなさい」
そこで、役人がぞろぞろと入ってきて、即位の日取りやらこれからの予定やらを前例に則って決めていく。
「年号はいかがいたしましょう」
「学者と新天皇さまとで相談していただこう」
「大嘗祭の日程は?」
「十月の良き日に」
「即位の詔は、しっかり下書きをしていただかなくては。
自らの正統性・天皇としての使命をしっかり示さなくちゃなりませんな」
と言う話が、どんどん進んでいく。
首皇子が叫ぶ。
「待った! だって、母・宮子は皇族じゃないんだ。それに病気に伏せている。正統性がないと指摘されかねない」
武智麻呂は大きな声で言い返す。
「その件はあなたさまが皇太子になられたときに解決しております」
「貴族たちがどんな反応をするのか、怖いんだ。だから、いやなんだ。 即位なんていやなんだ。お前の母さん、身分が低いとか病気中とか言われそう。いや、きっと言われる。あいつら、傷を見つけて塩を塗る」
元正天皇は声をかける。
「それで、即位を後に引き延ばして、皇太子のまま死にたいの?」
「そうだ。育ての母、三千代さまが信仰しているのは聖徳太子。太子は皇子のままだった。いいじゃないか! 皇太子のままでも」
皆がため息をついた。
あたしは、どうでもよかった。
皇子に囁いた。
「自分が望むのならいいんじゃない? 一生皇太子でも。
あー、嫌なこと、面倒なことを先延ばしにするタイプね。
いるよ、いるいる。そういう人」
あたしの言葉に皇子は複雑な表情をした。
武智麻呂が肩をぐるぐる回した。
「つまり、首皇子は貴族からの批判が怖い。そうですな。それなら、手があります。これまで一度も使っていない隠し球ですぞ」
皇子は興味をもったようだ。
「いやあ、これなら、貴族たちは絶対喜ぶ。喜んであなた様の即位を祝うことでしょう」
「ん? で、どんな手なの?」
「ふっふっふ」
「もしかして、危ないことじゃないよね。貴族を片っ端から殺していくとか。そんなの嫌だよ」
「まさか、至って平和な方法です」
我慢の限界だったのは、あたしだった。
「もったいぶらないで、早く教えろおおおおお。武智麻呂兄貴!!」
「光明子、落ち着け! 皇子聞いてください。
即位時に、貴族の位階を全員一斉に引き上げると発表するのです。また、勲位という位階を全国の官人・郡司に与えると発表するのです。上は我ら貴族、下は地方の郡司・郡官まで一斉に位を上げる!」
「おおおおおおおお!!!」
「我らもか?」
「そうだ。全ての官人にだ」
「誰かさんだけではなく、全員一斉になのですか?」
「そうだ!」
「奈良の都の皇族貴族も、地方の郡司官人も、日本中があなたさまの即位をお祝いします。即位の日を今か今かと待つでしょう」
武智麻呂はひげをひねって自信満々だ。
あたしは思った。
ーーやられた!
さすが謀の名人、我が兄・武智麻呂。
首皇子はすっかりご機嫌だ。
「だったらいいね。みんなが間違いなく祝ってくれるね。いいよ、即位するよ。光明子、支えてくれるって言ったよね。約束破ったら許さないよ」
こうやって、首皇子は即位を決めた。
あたしのダーリンは聖武天皇になる。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!
現代の極道のお嬢が奈良時代の光明子として生まれ変わり、
歴史と恋と権力をオラオラで突き進む物語――いかがでしたか?
光明子の「怒り」は、時代を越えても通じる女の強さ。
どんな時代でも、あたしたちは自分の信じる正義で生きていける。
そんな想いを込めて書きました。
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最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
次回もどうぞお楽しみに!




