第1話 オラオラお嬢、転生して古代の姫になる!
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本作は「ESN大賞9」参加作品です。
現代の極道のお嬢が奈良時代の光明子に転生し、チート《つぶやいたことが現実になる》で歴史をぶっ壊す物語。
権力、恋、仏教、陰謀、すべてをオラオラで乗り越えます!
歴史改変×成り上がり×オラオラ皇后伝――どうぞ最後までお楽しみください!
その日、世界がブチ壊れる音を聞いた。
「お嬢! 親父さんから電話で――がさ入れが決まったと!」
「はぁ!? なんで急に!?」
お嬢と呼ばれる《《あたし》》鬼塚サツキ、十五歳。
高校生にして極道一家の跡取り。
今は、お勤め中(刑務所)のじいちゃんの代わりに、組を仕切っている。
鉄の扉がガラッと開き、廊下の向こうからスーツ姿の若衆が駆け込んでくる。
机の上の携帯は震えっぱなし、金屏風の龍が灯の下でギラついている。
「サブの奴、ヘマこいたっす!」
ヘマ?! なんだと?! あたしは許さない。
「何のヘマだゴラァ!」
「……お嬢には言うなって親父さんが……」
「言えやオラァあああああ! で、がさ入れはいつ!」
ピンポン。
「警察だ! ここを開けろ!」
ドンドンドンドンドン!
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン――!
あたしは、ため息ひとつ。
「……ちょ、ちょっと待ってくださーい♡」
「はようせんかぁ! 早うここ開けろぉ!」
深呼吸。ふう……。
「お嬢、どうします? サブの奴、震えてます!」
「サブ、地下通路から逃げろ! トンネル越えて、あっちの島まで行け! 女装して電車乗れ!」
「ひゃ、ひゃい!」
髪をかき上げ、制服のボタンを留める。
襟のリボンを整え、笑顔をつくって玄関へ。
「はーい。警察の皆さま、いつもご苦労様ですぅ♡ 今日はどうされましたかぁ?」
「お嬢、遅い! 入らせてもらうぞ!」
どかどかどか――。
警官たちが段ボールを抱えて上がり込む。
「何ですか? うちは健全な会社ですよぉ? 税金も払ってます♡」
「ヤバいもん扱ってるだろが! サブが鉄砲ぶっぱなしたやろ!」
「そんなわけないでしょ? あの子、金魚に餌やるのもビビってんのよ?」
「匿ったらじいさんの刑期が伸びるぞ。塀の中から指示してたとか、なんとでも言えるからな!」
「まあまぁまぁ……警察官ともあろうお方が、脅しのようなことを♡
女子高生が聞いたら震えちゃいますよ?」
「お嬢、ただの女子高生じゃないだろが! 三代目を継ぐ姉御じゃろが!」
その瞬間――ガチャリ。
背後の扉が開いた。
「……サブ?」
地下通路から逃げたはずのサブが、そこに立っていた。
真っ青な顔で震えながら、両手に何かを握って――
ドンッ。
耳鳴り。世界がスローモーションになった。
床に倒れこむあたし。
誰かが叫んでいる。
「お嬢ーー! 救急車呼べぇぇ!」
「確保しろっ! 逃がすな!」
視界がぐにゃりと歪む。
音も光も、全部が遠のいていく。
――ああ、撃たれた。
まじか。
でも、心の奥でなぜか笑っていた。
(……あたし、やっぱツイてるね。)
光が差す。
白くて、どこまでも広い世界。
そこに、金の瞳を持つ女神が立っていた。
「あんたほど度胸のある十五歳はいないわね。
ひとりくらい、古代に送り込まないと、あの時代がもたないのよ。」
「へぇー。チートくれる系の転生? いいじゃん。」
「うん。思ったことが実現するってチートをあげる。」
「神様、話が早いねぇ!」
「だって、さっき願ったでしょ?
古代の姫になって、スパダリ皇子に溺愛されたいって。」
「……聞かれてたの!? キャ、はずっ!」
女神が微笑む。
「うん、バッチリ。ラノベ好きの魂って波動が強いのよ。」
「マジで!?」
「マジ。さあ行きなさい。名を――光明子と名乗りなさい。」
まばゆい光が溢れ、世界がひっくり返る。
……次に目を開けたとき、
あたしは絹の寝台にいた。
壁に唐花文、窓の外は朱雀門。
「……ここどこぉおおお!?」
侍女たちが悲鳴を上げる。
「姫さま!?」「どうなされたのですか!」
「ちょ、待って、姫って言った!?」
鏡に映ったあたしは、
漆黒の髪に金の簪。真珠のような肌――古代の姫仕様。
向こうから、低く甘い声。
「光明……今宵は月が綺麗だ。」
――誰!?
金糸の衣をまとった青年が立っていた。
彫刻みたいな横顔に、柔らかな微笑み。
「わたしの姫よ、指を。」
手を取られ、指を絡められ、囁かれる。
「この世で、お前だけだ。こんな気持ちになったのは。」
心臓がドクンと跳ねた。
スパダリすぎる……。
でも、頭の奥でヤクザ時代の血がうずく。
――ナメられたら終わり。
頬に触れた彼の手を制し、あたしはニヤッと笑う。
「なあ、スパダリ皇子。あたしに手ぇ出すなら、この国ごと惚れさせてみろや♡」
侍女が卒倒し、宦官が悲鳴を上げた。
けれど彼は、炎に恋したみたいに笑った。
「面白い。では、この国も、お前も、すべて照らそう」
光が、天平の空を染めた。
あたしは古代の姫に転生し、
時代を変える恋の炎を灯す。
「あたしがこの国を照らす――それが、あたし流の極道道だ!」
――天平恋詠、開幕。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!
現代の極道のお嬢が奈良時代の光明子として生まれ変わり、
歴史と恋と権力をオラオラで突き進む物語――いかがでしたか?
光明子の「怒り」は、時代を越えても通じる女の強さ。
どんな時代でも、あたしたちは“自分の信じる正義”で生きていける。
そんな想いを込めて書きました。
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「ESN大賞9」参加作品として挑戦中!
最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
次回――住まいの宮廷で、嫌な女と出会います。
どうぞお楽しみに!




