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ゴマアザラシはもう結構!

作者: ふじの白雪
掲載日:2025/10/18

多摩川の河口に、一頭のゴマアザラシが現れた。

人々は彼を「タマちゃん」と呼び、笑顔で手を振った。

カメラを向け、グッズを作り、ニュース番組では連日その姿が流れた。


「引き取って水族館で保護すべきだ」という声も上がった。


だが、結局はこう決まった——


「自然のものは自然に」。

つまり、自由を尊重するということだ。


タマちゃんは、川の流れに身を任せながら考えた。

「自由って、なんて心地いいんだろう」


けれども、夜になると少し寂しくなった。

ファンも報道も、ブームが去ると潮のように引いていったからだ。


そんなある日、数名の水族館職員が川にやって来た。

看板には「リッゲン水族館」と書かれている。


彼らは笑顔でこう言った。

「保護ですよ、保護。あなたを安全な水槽で暮らさせてあげたいんです」

言葉は優しかったが、タマちゃんの鼻先には、いつの間にか網が構えられていた。


それを察したタマちゃんは、急いで川を下った。

多摩川から鶴見川へ、さらに帷子川へ。

逃避行の果てに出会ったのが、同じく放浪中のゴマアザラシ、シンちゃんだった。

二頭は意気投合し、仲良く泳ぐようになった。


ところが間もなく、別のニュースが飛び込んできた。

「自由水族館連合」が、新館長を迎え、話題の動物を集めて再起を図るというのだ。

関係者を通じて、タマちゃんに正式な招待状が届いた。


「新しいステージで、あなたの『人気』を活かして輝いてみませんか?」


シンちゃんは大喜びした。

「すごいじゃない、タマちゃん! いよいよ僕たちの時代だ!」

彼は先に自由水族館連合へ向かい、飼育員たちに愛想を振りまいた。


だが、世の流れは速い。


リッゲン水族館が、あろうことかゴウメイ水族館と合併したのだ。

名前は長くなったが、勢力は倍増。


関係者の間では、「あの連合なんて目じゃない」と囁かれた。


タマちゃんの胸がざわめいた。

「こっちのほうが組織の規模が安全で、人気もありそうだな……」

彼は、あっさりと心変わりした。


「個人の人気なんて、組織の『数』の前では脆い。選ぶべきは強いほうだ」と、かつて捕獲しようとした職員たちのことも、もう遠い昔のことに思えた。


シンちゃんは呆れた。

「自由水族館連合から『人気者』として声がかかってるのに?」

「だって、リッゲンとゴウメイが組めば無敵だよ。組織力(数の力)ってすごいだろ? そっちのほうが安心できる」

「……数が揃えば、あなたという『人気という不安定な個』はいらなくなるかもしれないよ」

「そんなこと、あるもんか」


タマちゃんは意気揚々と、リッゲン=ゴウメイ合併水族館の門をくぐった。

白いスーツの職員たちが出迎え、フラッシュが焚かれた。

 

得意満面のタマちゃんは、にこやかに言い返した。

「これもひとえに、私の人気あっての——」


だが、その言葉は途中で止まった。


目の前の看板に、巨大な文字が掲げられていたのだ。

『ゴマアザラシはもう結構!』


タマちゃんは目を疑った。


「えっ……どういうことですか? 私を『目玉のポスト』に迎えてくれたのでは?」


職員は、淡々と答えた。

「いやあ、申し訳ない。合併の結果、組織が合理化され、水槽ポストの数が減りましてね。それに、うちの既存のゴマアザラシの『数』で十分なので、これ以上新たなゴマアザラシを増やす必要がなくなったんですよ」


「では、私は——?」


「あなたのお気持ちはありがたい。でも、必要だったのは『タマちゃんという目立つ個体』ではなく、『合併による安定した数(組織規模)』のほうでしてね」


横にいたゴウメイ側の職員が、柔らかい笑みを浮かべた。

「それに、うちのゴマアザラシたちは『組織の平和と安全』のために、他の個体とは『距離』を置きたいそうで。ご理解とご協力、お願いしますね」


タマちゃんは、しばらく言葉を失った。


人気に溺れ、より大きな力(数)を選んだつもりが、結局「数の論理」で「余分な個体」として切り捨てられたのだ。


振り返ると、遠くの自由水族館連合から歓声が聞こえた。

イルカやアシカが跳ね、観客の笑い声が響く。

あそこは、タマちゃんの『人気』を求めていたはずだ。


もう、彼の居場所はどこにもなかった。

数日後、多摩川の河口。

タマちゃんは泥混じりの水をすすりながら、シンちゃんに言った。

「裏切られたよ……。数が全てだったなんて」

 

シンちゃんはため息をついた。

「だから言ったのに。『1番じゃなくてはいけない!んです』って」


二頭のアザラシは、灰色の川を並んで泳いだ。

冷たい風が吹き抜け、どこかで鉄橋の音が響く。

タマちゃんは空を見上げてつぶやいた。

「自由って、こんなに狭かったっけ」


シンちゃんが小さく笑う。

「でも、ここなら『押すなよ押すなよ』って言われずに済むでしょ。誰にも利用されない」


二頭の影は、ゆっくりと流れに溶けていった。

どこへ流れ着くのかも知らぬまま、

ただ、川の音だけが静かに響いていた。


『某国民◯◯◯』のタマちゃんに捧げる!物語。

そして

うちの次男が折角投票したのに…ガッカリだよ

◯木とぼやいてなさった。信用するからだよw

所詮アヤツは進◯郎の前のネタ枠だった男だから…

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