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米から生まれた米太郎

作者: ふじの白雪

昔々、おじいさんとおばあさんがいました。


おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に。


すると、川から「ドンブラコ、ドンブラコ」と流れてきたのは……

でっかい桃ではなく、なんと国産備蓄米! しかも、やけにテカテカしたセクシーなビニール袋に包まれています。


「まぁ、政府の備蓄倉庫から横流しかいな?! 賞味期限2025年9月まで延長って書いてあるよ!」

おばあさんは大喜びで、よっこらしょと備蓄米を担いで帰りました。


芝刈りから帰ってきたおじいさんが、そのセクシービニール袋を力任せに引き裂くと、

中から「寿司…寿司…寿司を食わせろ」と、桃太郎ならぬ米太郎がドーンと登場。


米太郎は毎日毎日、高級な寿司三昧。たちまち、おじいさんとおばあさんの家の家計は火の車になり、電気も止められそうに。


「このままではならぬ!」と、米太郎は家計を救う為、米高騰を繰り返す鬼を退治しに、鬼ヶ島へ。


―その前に寿司を食わなければ良いだけだろう…米太郎。


道を進むと、まず出会ったのはキジ。


米太郎が「鬼退治に付き合ってくれ!」と誘いますが、キジは上品に首を振ります。

「いや、無理です米太郎殿。鳥インフルエンザと餌代高騰のせいで、キジの仲間は軒並み高値になってしまいまして…。私も含め、希少な高級食材としての市場価値が爆上がり。下手に動くと商品価値が下がる!とてもお供にはなれません!」


次に現れたのは、サル。


米太郎が誘うと、サルは深く被っていたフードを顔を上げるなり、渋い顔で言いました。

「残念ながら、その誘いは乗れないっスね。SNSで『動物を戦争に連れて行くなんて可哀想!』っていう世論が許さないんですよ。特に知的なサルを資本主義の戦いに巻き込むのは動物虐待だと炎上する未来が見える。世間の目が怖くて動けません!」


最後に現れたのは、イヌ。


「ごめんなさい、米太郎さん!私はアメリカのポチ、つまり忠実な外交・安全保障上の同盟国の象徴なんです。勝手に鬼ヶ島に突入してはマズいんですよ。国際的なバランスを崩しちゃいますし、主から叱られます!」


こうしてキジ、サル、イヌの三匹すべてに断られた米太郎は、たった一人、鬼ヶ島へ向かうことになりました。


しかし道すがら、畑で作業をする鬼達が「減反政策反対!」と叫んでいました。


彼らは、自分たちの作った米が不当に買い叩かれ、あのセクシービニールに詰められて備蓄倉庫で眠っていることに怒っていたのです。


米高騰の原因は、鬼達ではなかった!


米太郎と怒れる鬼達は『燃える男の赤いトラクター』を歌いながら赤いトラクターに乗ってデモ行進。

彼らは農政の『伏魔殿』へとレッツラゴー!


そして、混乱する『伏魔殿』のトップは、わけがわからないままにこう叫びました。

「農業改革なくして農業回復なし!農業回復なくして農業改革なし!!」


「こんなアホがトップにいて、誰もこの輪っかから出ようとしないのか」

米太郎の目に映ったのは、解決策を探す努力ではなく、自分たちの保身と前例主義にしがみつく無数の愚か者たちの顔でした。


彼らは皆、一様に同じ『検討を加速し、前向きに議論を進めることで一致しました!』と書かれたプレスリリース用のプラカードを掲げ、小声で「で、結局、何について検討を加速するんだっけ?」と隣に尋ねあっていました。


米太郎は、怒りよりも深い、「この茶番はまだ続くのか」という絶望を感じました。


彼は、赤いトラクターに乗った怒れる鬼たちを振り返り、小さく手を振りました。

「ごめんよ、みんな。トラクターの保険、JAの共済のパンフレット、あとでLINEで送っておくよ。多分、火災はオプションだけど、どうにかなるさ」


彼は続けます。

「この国は、米は食わないくせに、米太郎という『問題解決の象徴』だけは欲しがるんだ。でも、俺はもう、彼らの都合のいい『英雄』にはなれない」


絶望した米太郎は、『伏魔殿』を後にして、おじいさんとおばあさんが待つ、田舎へと帰りました。


田舎では、おじいさんとおばあさんが米太郎の帰りを今か今かと待ちわびておりました。


米太郎が何も持って帰らなかった事を知ると、あばあさんは、怒り出しました。

「この役ただすの寿司食らい!なんの為にお前を育てたんだと思ってるんだ」


おばあさんのあまりにも酷い罵倒(本音)に米太郎は頭がクラクラ、くら寿司になって、助けを求めるようにおじいさんの方を見ましたが、おじいさんは冷たい顔で、

「故郷に錦を飾ることもできないような奴は、うちの子でもないべ。もう縁切りだ」

と米太郎を家から叩き出したのでした。


行き場を失った米太郎が、ふと

大量に不当放棄されているゴミの山を見ると、汚れたビニール袋も捨てられておりました。


それは、おばあさんに拾われた時のあのテカテカなセクシービニール袋でした。


彼は再び、テカテカ光るセクシーな備蓄米のビニール袋を取り出し、被る前にサッとスマホで自撮りしました。

「やっぱりこの『2025年9月まで延長』の文字、俺のサステナブルな絶望を象徴していて、エモいな」


その袋を自ら被り、両手を突っ込むと、自ら目の前の川に飛び込みました。


ドンブラコ、ドンブラコ。


米太郎は川から海へ流されていきました。

誰にも食べられることのない、大量の備蓄米の英雄は、静かに太平洋へと。


おしまい。


ではない…このあと『米から生まれた米太郎Ⅱ』へと続く。





ふじの白雪の呟き

こんな物をなろうに投下する私は

ワケワカメなやろうです。

でも備蓄米じゃなくて

「美味しい米食わせろ!」

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