異世界でチート拾われライフ!~元家族ざまぁ、今更媚びても遅いんだわ~
「あんた、今日から出て行ってちょうだい!」
いきなり母親にそう言われたのは、二十歳になったばかりの春のこと。意味が分からなくてポカンとしていると、隣で妹の美咲がニヤニヤしながら追い打ちをかける。
「お姉ちゃん、今まで世話してくれてありがとうね!もうお役御免ってことで!」
は?
何言ってんの、この妹。
小さい頃から私の物をねだりまくり、少しでも気に入らないことがあるとギャン泣き。
両親も美咲には甘くて、いつも我慢するはめになった。大学の学費だって、半分はバイトで稼いだ。
「理由くらい教えて」
言葉に、母親は冷たい視線を向けてきた。
「あんたみたいな地味で取り柄のない娘がいても、家の役に立たないのよ。美咲は可愛いし、賢いし、将来有望だもん。あんたの分の生活費は無駄なの」
信じられない。どれだけ家族のために尽くしてきたと思ってんだ。家事だってほとんど私一人でやってきたし、美咲のわがままにもずっと付き合ってきたのに。
「あんたが出て行けば、美咲にもっとお金をかけてあげられるしね!」
美咲は当然のように頷いている。マジで頭にくる。今まで我慢してきたものが、プツンと音を立てて切れた気が。
「ふざけんな」
捨て台詞を吐いて、家を飛び出した。もちろん、貯金なんてほとんどない。途方に暮れて公園のベンチに座り込んでいると、急に目の前が眩しい光に包まれた。
「え、何これ!?」
気がつくと、見慣れない場所に立っていた。空は見たこともない紫色で、木々はキラキラと光っている。魔物らしき奇妙な生き物も歩いているし、完全にファンタジーの世界。
「うわ……異世界転移ってやつ?」
漫画やアニメでしか見たことのない状況に、最初は戸惑ったけれど、すぐに開き直った。どうせ元の世界にいたってロクなことなかったし。
こっちで新生活を始めるのも悪くない。とりあえず、生きるためには情報が必要だ。近くを歩いていた鎧を着たイケメンに声をかけてみた。
「すみません、あの、ここはどこですか?」
警戒した様子のイケメンは、剣に手をかけながら答えた。
「ここはエルフの森の近く、人間族の領地だ。貴様、一体何者だ?」
言葉は通じるみたいだ。
ホッとしたのも束の間、相手は明らかに私を不審者扱いしている。
「私は……気が付いたらここにいたんです。記憶も曖昧で……はい」
嘘も方便だ。困った顔をしてみせると、イケメンは少しだけ警戒を解く。
「記憶喪失、か。まあいい。こんなところで油を売っていると危険だぞ。早く街へ行った方がいい」
そう言って、彼は簡単な地図と少しばかりのお金をくれた。親切な人もいるんだな。元の家族とは大違いだよ。地図を頼りに歩き続け、なんとか人間族の街にたどり着いた。
そこで宿を借り、日雇いの仕事を見つけて少しずつ生活を立て直す。異世界の言葉や文化に戸惑うことも多かったけれど、持ち前の適応能力と、元の世界で培ったサバイバルスキル(主にクレクレ妹対策)で、なんとかやっていけた。
そんなある日、街のギルドで冒険者の募集を見つける。報酬も良さそうだし、何より面白そうだ。思い切って冒険者になることに。
最初は弱いモンスターにすら苦戦したけれど、諦めずに剣術や魔法の訓練に励んだ。異世界にはレベルという概念があるらしく、モンスターを倒したり、クエストをこなしたりするうちに、能力はどんどん上がっていった。
数年後。ギルドでも指折りの凄腕冒険者になっていた。魔法の腕も剣術も一流。その強さから「流星の剣姫」なんて二つ名で呼ばれるまでに。
うーん、恥ずかしい。そんな噂は、いつの間にか元の世界にも届いていたらしい。どうやってだろう?
ある日、ギルドに親並みに見た顔が現れた。それは、元両親と妹の美咲。
「あんた……本当にあんたなの!?」
母親は、信じられないといった表情で見つめている。隣の美咲はというと、身につけている高価そうな装備や、周りの冒険者たちの尊敬の眼差しを見て、明らかにヨダレを垂らしている。汚い汚い。
「お姉ちゃん、すごいじゃない!こんな立派になって」
今更、そんなことを言われても何も響かない。あの時、追い出したのはあんたたちね。
「何の用ですか?」
冷たい言葉に、両親は顔を青ざめた。
「実はな……うちの会社が倒産寸前で……美咲の学費も払えなくなって……」
「それで、私に何かできるとでも?」
ここは異世界だ。問いに、美咲が目をキラキラさせながら近づいてきた。ギラギラかな。
「お姉ちゃん、お金持ちになったんでしょ?少しだけ分けてくれない?それに、そっちの世界で何か美味しいものとか、可愛いものとかあったら、お土産に買ってきてよ!」
こいつ、本当に変わってない。自分のことしか考えていないんだ。
「あんたたち、どれだけ苦労してここまで来たと思ってるの?あんたたちに追い出されて、異世界で一人ぼっちで生きてきた。今更、都合の良いことばかり言わないでくれる?」
美咲は不満そうな顔になった。
「そんな言い方しなくてもいいじゃない!家族なんだから助け合うのは当たり前でしょ!」
「家族?私を、ゴミみたいに捨てたあんたたちが、今更、何を言うの?」
冷笑した。あの時の絶望と怒りは、今でも鮮明に覚えている。
「お姉ちゃん……ひどいよ」
美咲が泣きそうな顔をするけれど、全く同情しない。自業自得過ぎる。
「あなたたちには、もう何もしてあげるつもりはありません。二度と私の前に現れないでください」
背を向けた。周りの冒険者たちが、毅然とした態度に感心したように頷いているのが分かった。
元家族は何か言いたそうだったけれど、強いオーラに気圧されたのか、何も言えずにすごすごと帰っていく。どこからか召喚されて、追い出されたのかもしれない。
ざまあみろ。あの時、追い出したことを後悔するがいい。もう、あんたたちの都合の良いお姉ちゃんじゃない。
この異世界で、自分の力で幸せを掴んでみせる。いつか必ず、この世界で大切な仲間たちと笑って暮らすんだから。元の家族のことなんて、もう二度と思い出すこともないだろう。
新たな人生は、まだまだ始まったばかりだから。
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